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縁の本棚  作者: 雪縁
162/306

本日の一冊 「夜にくちぶえふいたなら」

「夜にくちぶえふいたなら」【旺文社】

           たかどの ほうこ・作

           長野 ヒデ子・絵


 夜のくちぶえ。

 止められた経験はありませんか?

 そんなの迷信だ!と思われるかもしれません。

 けれども、あながちそうとは限りませんよ?

 うそだと思われたら、ぜひ、この物語を。

 

 明日の遠足がうれしくてたまらないミツオとノンコの兄弟。

 まくらもとにリュックサックを並べて、ミツオはうれしさのあまり、ふとんの中で、ピーピーくちぶえをふいてしまう。

「くちぶえはだめ、おにいちゃん。夜にくちぶえふいたらどろぼうがくるって、おばあちゃんがいってたじゃない」

 ノンコの忠告をよそに、くちぶえをふくのをやめないミツオ。

 するとそのとき。

 ベランダのガラス戸を何者かがコンコンとたたいた。 

 二人がおそるおそる、カーテンをあけた瞬間、あやしげな琥珀色の二つの光がピカッ。

 ミツオとノンコは気絶しそうなほどびっくりする……が、それはネコの目だった。


 毛のバサバサした、うすよごれたしまネコは、ちょっとつりあがった目を二人に向けて、ネコマサというものだと自己紹介する。今夜、一夜の宿をかしてほしいというのだ。

 ネコマサが背中に背負ったあきれるほどの大きなふろしきつづみの中には、かんづめや魚のくんせい、かつぶしなどが入っており、その中から、ネコマサは、夜食だといって、あんこと醤油とごまの味のくしだんごをとりだすと、二人にすすめ、食べながら、自分のこれまでの人生(猫生?)を語り始めるのだった。

 自分は三河屋でまねきねこをしてがんばってきたにもかかわらず、主人からつらくあたられ、意を決して飛び出してきたのだと。

 まねきねこ時代に自分がかせいだ分ぐらいは、持って出てもバチはあたるまいといただいてきたというのである。

「ああ、これまでのつらかったこと、つらかったこと」

 さめざめと泣くネコマサに、すっかり同情したミツオとノンコ。二人と一匹、枕をならべて眠りにつく。


 翌日。目がさめると、ネコマサの姿はどこにもない。

 枕もとにあった二人のリュックサックを見てみると……。なんと、お菓子がすべて消えている。

顔を見合わせ、思わず笑い出す二人。


 そのころ、ネコマサは二人にあてて書いた長い手紙をこう結んでいた。

『……どうしたわけか、あしがひとりでにミツオさんたちのいえに向かいました。もしかしてくちぶえでもふいたんじゃないでしょうか。よるにくちぶえはいけませんよ。どろぼうがきますからね。では、さいなら』

 ドロボーネコの、ユーモアあふれる楽しい物語だ。


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