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縁の本棚  作者: 雪縁
161/306

本日の一冊 「かあさんになったあーちゃん」

「かあさんになったあーちゃん」【偕成社】

            ねじめ 正一・作

            長野 ヒデ子・ 絵

 

 この絵本、よく読んだなあ……。

 私も好き。息子たちも大好き。

 とりわけ、下の息子は、

「あーちゃん、よんで」

 と、しょっちゅう、この絵本を持ってきたっけ。

 懐かしい感慨にふけりながら、本書を開いた。


 あーちゃんは五才の女の子。

 かあさんがおけしょうするのを見ていて、まねしたくてたまらない。

 かあさんがいないときをねらって、ないしょで、そおっと、そおっときょうだいの引き出しをあけてみる。

 おしろいをパタパタ、目の上をあおーくシュシュ。もっとあおくシュシュ。

 おつぎは、おけしょうえんぴつで、目のまわりをぐるっとかいて、かがみを見たら、三倍の目になってしまって、どきどきが大きくなって、おつぎは、おつぎは、くちべに ツツツーッで、おけしょうできあがり。


 さし絵をみて、思わず笑い出してしまうけど、かあさん気分のあーちゃんは、ますますノリノリ。

 声も、足も、手も、かあさん気分になって、

「ゆうごはんのしたくをしなくちゃ」

「おふとん パタパタしなくっちゃ」

「あら、いやだ。トイレの紙がなくなってたんだわ」

 かあさんの大きなエプロンをかけたあーちゃんは、完全にかあさん気分にむちゅうになってきて、二階からほんとうのかあさんに

「あーちゃん、なにしてるの?」

と、よばれても、あーちゃんはあーちゃんにもどれなくて、

「あらあら、あーちゃん、どこへいっちゃったのかしら?」

 かあさんのサンダルはいて、じてんしゃにのって、キコキコ、キコキコ、あーちゃんをさがしにいってしまった。


 気がついたら、さあ、たいへん。

 そこは、あーちゃんのぜんぜん知らないところ。

 あーちゃんはぶじに、おうちに帰れるだろうか。


 息子が、この絵本を好きだったのにはひとつの理由がある。

 当時、わたしたちが住んでいたアパートの下の階に、あーちゃんと呼ばれる女の子がいたのだ。

 くるくる天然パーマを二つに結び、笑顔がとてもかわいらしい子だった。

 朝が来ると、息子はわれ先にとベランダに走り、上から、あーちゃんコールをし始める。

 やがて、起きたばかりと思われるあーちゃんが、下から息子の名前を呼んでくれる。

 おそらく幼い彼は、絵本のあーちゃんと、本物のあーちゃんを重ね合わせていたのだろう。


 そのあーちゃん。今は、日本舞踊の名取りさんになって活躍しているのだとか。

 あーちゃんコールの日々は、彼女の記憶に残っているかな?と、絵本とともに懐かしく思った。


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