本日の一冊 「かあさんになったあーちゃん」
「かあさんになったあーちゃん」【偕成社】
ねじめ 正一・作
長野 ヒデ子・ 絵
この絵本、よく読んだなあ……。
私も好き。息子たちも大好き。
とりわけ、下の息子は、
「あーちゃん、よんで」
と、しょっちゅう、この絵本を持ってきたっけ。
懐かしい感慨にふけりながら、本書を開いた。
あーちゃんは五才の女の子。
かあさんがおけしょうするのを見ていて、まねしたくてたまらない。
かあさんがいないときをねらって、ないしょで、そおっと、そおっときょうだいの引き出しをあけてみる。
おしろいをパタパタ、目の上をあおーくシュシュ。もっとあおくシュシュ。
おつぎは、おけしょうえんぴつで、目のまわりをぐるっとかいて、かがみを見たら、三倍の目になってしまって、どきどきが大きくなって、おつぎは、おつぎは、くちべに ツツツーッで、おけしょうできあがり。
さし絵をみて、思わず笑い出してしまうけど、かあさん気分のあーちゃんは、ますますノリノリ。
声も、足も、手も、かあさん気分になって、
「ゆうごはんのしたくをしなくちゃ」
「おふとん パタパタしなくっちゃ」
「あら、いやだ。トイレの紙がなくなってたんだわ」
かあさんの大きなエプロンをかけたあーちゃんは、完全にかあさん気分にむちゅうになってきて、二階からほんとうのかあさんに
「あーちゃん、なにしてるの?」
と、よばれても、あーちゃんはあーちゃんにもどれなくて、
「あらあら、あーちゃん、どこへいっちゃったのかしら?」
かあさんのサンダルはいて、じてんしゃにのって、キコキコ、キコキコ、あーちゃんをさがしにいってしまった。
気がついたら、さあ、たいへん。
そこは、あーちゃんのぜんぜん知らないところ。
あーちゃんはぶじに、おうちに帰れるだろうか。
息子が、この絵本を好きだったのにはひとつの理由がある。
当時、わたしたちが住んでいたアパートの下の階に、あーちゃんと呼ばれる女の子がいたのだ。
くるくる天然パーマを二つに結び、笑顔がとてもかわいらしい子だった。
朝が来ると、息子はわれ先にとベランダに走り、上から、あーちゃんコールをし始める。
やがて、起きたばかりと思われるあーちゃんが、下から息子の名前を呼んでくれる。
おそらく幼い彼は、絵本のあーちゃんと、本物のあーちゃんを重ね合わせていたのだろう。
そのあーちゃん。今は、日本舞踊の名取りさんになって活躍しているのだとか。
あーちゃんコールの日々は、彼女の記憶に残っているかな?と、絵本とともに懐かしく思った。




