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縁の本棚  作者: 雪縁
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本日の一冊 「椿山課長の七日間」

「椿山課長の七日間」【朝日文庫】

           浅田 次郎作


「鉄道員」の作者、浅田次郎が描いた抱腹絶倒の物語。


 デパートマンの花形である婦人服課長となった椿山課長は、四十六才にして突然この世を去る。接待の席での過労死であった。

 間もなく現世と来世の中間にある、スピリッツ・アライバル・センターに行った椿山課長は、やり残したことが多すぎると現世に戻る再審査を要求する。

 かくして現世に戻ってきた椿山課長だが、死後七日間のみという条件で、すでに四日は過ぎていた。残されたのは三日間。しかも現世にいる間、「復讐の禁止」「正体の秘匿」「制限時間の厳守」この三つのどれひとつでも破ってしまうと、地獄ゆきになるという。

 さらに、現世に戻るためには、生前とは似ても似つかぬ仮の肉体を与えられる。和山椿というアラフォーの美女となった椿山課長は、自分がやり残したさまざまなことに区切りをつけに、自宅をはじめ、職場へと向かう。

 一方、椿山課長の他にも、やくざの組長武田勇と、少年根岸雄太も、姿を変えて現世に舞い戻った。それぞれどうしても果たしたいことがあるのだ。


 物語を読み進めていくうちに、思いがけない事実がわかったり、親子愛にジンときたり、とにかく目がはなせない面白さなのだが、何よりもこの霊界のシステム、そして小道具の面白さが際だっている。


 たとえば、現世で罪を犯してきても、講習後に反省ボタンを押せば、ソク極楽に行ける仕組み。また現世に逆送されるときに持たされるナイロン製のバッグには「よみがえりキッド」といって、霊界のセンターといつでも繋がる携帯電話を始め、必要な時にバッグをのぞけば、香典だろうが、生理用品だろうがなんでも入っているのには、思わず笑ってしまう。


「鉄道員」とはうってかわった物語の面白さに、心を奪われがちになるが、この物語の核となるものも家族との繋がりだ。

 椿山課長と父親、椿山課長とその息子、武田勇の組としての家族、根岸雄太と実の両親との繋がり、あらゆる繋がりの糸が、物語全体に張りめぐらされている。それぞれに孤独を感じながらも、家族の愛を求めてやまない椿山課長らの姿にうるうる来てしまう。


 思いきり笑って涙ぐむ。心を浄化させてくれるお薦めの本である。



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