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縁の本棚  作者: 雪縁
159/306

本日の一冊 「かいじゅうになった女の子」

「かいじゅうになった女の子」【偕成社文庫】

           末吉 暁子作


「じゃあ、次、これ、なんだ?」

「カネゴン」

「これは?」

「ジャミラ」

「これは?」

「バルタン星人」

 小学二年生のころだったと思う。

 ウルトラマンの怪獣事典とか、怪獣下敷きなどが流行っていて、私もかなりはまっていた。

 朝の自習時間、きまってとなりの席のIくん、前の席のKくんらと、怪獣の【勉強】にはげんでいた。

 当時の私たち、ウルトラマンよりはなぜか怪獣の方に興味があった。

 ただし、個人的に怪獣になりたいと思ったことは、まったくなかったけれど……。


 末吉暁子氏の「かいじゅうになった女の子」は、怪獣大好きな小学三年生のみちこが、テレビのかいじゅう番組に熱中している場面から始まる。

 床に腹ばいになり、両手にあごをのっけたまま、みちこと、妹のミミはテレビに夢中。

 みちこときたら、かいじゅうが雄叫びをあげるたびに、拍手がわりに両足をバタつかせる。

「あたしのかいじゅうちゃん、がんばれ!」

「がんばれ、かいじゅうちゃん!」

 ミミもすかさずまねっこする。いつもまねばかりされるのがうとましくて、みちこはつい、意地悪を言ってしまう。

「たまには、ほかのこと言ってごらん」

 すると、ミミはすかさず答える。

「がんばれ、カエルちゃん」

 チビのミミにとっては、かいじゅうもカエルもいっしょなのだ。


 次の番組、「まほうのマリちゃん」で、

「みちこ、かいじゅうになりたい!」

「ミミ、カエルになりたい!」

「かわれ、かわれ!」

 何気なく呪文ごっこをした二人。

 すると、どうだろう。二人はみるみる、かいじゅうとカエルに変身してしまった。


 変身した二人を見た、おとうさんとおかあさんのショックは言葉では言いあらわせない。

 とにかく、しばらく学校を休むよう、みちこは言いわたされる。

 けれども日曜日に、以前からの約束である子ども園だけにはどうしても連れていってほしい。

「そんなすがたで出るなんて、きちがいざただわ。たちまち人だかりがするわよ」

 心配するおかあさんの気持ちをよそに、人だかりの中で見つめられてこそ、かいじゅうになったかいがあるのにとみちこは思うのだ。

 二人の熱意で、変装に変装を重ね、みちこは子ども園へと出かけることになるのだが……。

 そこでは、とんでもないハプニングが待ち受けていた。


 現実には起こりえない物語の世界を、あたかも現実に起こりえたかのように、リアリティをもって描き出す。子どもの内面を、実にしっかりと、生き生きとつかんだ、優れた作品だと思う。


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