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縁の本棚  作者: 雪縁
152/306

本日の一冊 「ばけものづかい」

このたび、大雨の被害に遭われて亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方々へ心より御見舞申しあげます。

落語絵本「ばけものつかい」【クレヨンハウス】

            川端 誠さく・え


 とある落語家の噺。

「ものにはパッとふれてすぐ面白さがわかるものと、何度かせっしているうちに面白味がわかるものがあって、落語はあとのほうなんで……」

 それは絵本と同じだという川端誠氏。

 落語を聞いていて、絵本になりそうだというものがいくらでもあるので、いっちょやってみるかと生み出したのが、この落語絵本シリーズ。「じゅげむ」「まんじゅうこわい」「めぐろのさんま」など、たくさんの落語絵本がそろっている。

 いっぱしの落語家のように流暢に読むと、子どもたちは、まるで寄席にいるかのように、目を輝かせて聞き入ってくれるのだ。


 さて、この「ばけものづかい」

 こんなばけものやしきなんていやだと奉公人に去られてしまったごいんきょさん。そこへあらわれたのは一つ目小僧。 ごいんきょさん、すかさずこう言った。

「ハッ、ハッ、ハッー、こりゃあおもしろいなあ。 おいおい、こっちへきな、こっちへ。そんなところで舌を出してるヤツがあるか……。おまえのでてくるのをまってた」

 ごいんきょさんは、一つ目小僧に飯を炊かせ、おかずを作らせ、洗い物にふきそうじ、ふとんをしかせた後は、自分の肩たたきまでやらせてご満悦。


 次の夜、やってきたのはろくろっ首。するする伸びる首をあっちこっちに向けていると、

「こらこら、あそんでるばあいじゃない。はたらいてもらわないとな」

 せんたく、さいほう、着物をたたみ、ふとんをしいて、ろくろっくびは心得た調子でこう言った。

「かたでもたたきましょうか」

「いや、さっき、首の運動をしたからいいよ」

 なぜか女性には遠慮ぎみのごいんきょさん。


 次の夜は三つ目の大入道。

「いやあ、でかすぎるなあ。まあいい。きたんだからはたらいてもらうよ」

 庭の石のいれかえ、屋根のごみを掃除し、草をむしり、家の中に手をいれて押し入れをあけて器用にふとんをしき、両手を差し入れ、小指でかたたたき。

「よしよし。あしたは一つめ小僧だよ。たのむよ」


 次の夜。庭から声がした。

「あのう、毎日ここへ参っているものでございますが、実はおひまをいただきたくて」

「どういうわけだ。それは」

「わたくしも、ほうぼう化けて出ますが、あなたさまほど、ばけものづかいのあらいおかたは、ございませんので」

 ごいんきょさん、しょうじをあけてみると……。


 最後のページ。

 たびじたくをした一匹のたぬきが、こわごわと立っている。

 視覚的なオチをねらった落語絵本なのである。

 



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