本日の一冊 「リボンときつねとゴムまりと月」
「リボンときつねとゴムまりと月」【JULA】
ムラヤマ カズコ・文
村山 知義・絵
この作家の名前を、あるユーザーさんの投稿で見かけたとき、あれ? どこかで?……という気持ちがおさまらなかった。
図書館へ出向き、検索してみると、ああ、やはり……。
この一風かわったタイトルといい、かなりクラッシックな挿絵といい、興味を感じて、かつて一度手にとってみたものだった。
さっそく借りて帰り、今回本棚に並べることにした。
表題作「リボンときつねとゴムまりと月」を含めた十三篇の短いおはなしと、おはなしのイメージで創られた童謡が四編。
いずれも小さな子に向けて、やさしく語られるように書かれている。
「ライオンの大ぞん」
ひるねからさめたライオンの、じまんのあごひげがなくなってしまい、さあ、大変! ようやくタヌキの店にあることがわかり、ライオンは行ってみるのだが……。
「おなべとおさらとカーテン」
毎日毎日、同じ仕事のくりかえしにうんざりのおなべとおさらとカーテンは、家からにげ出すことにした。いざ、にげようとして、カーテンだけがあたまがてつのぼうにくっついてにげられない。そこで、おなべがカーテンによじのぼって、てつのぼうをはずすことにしたのだが……。
「ひつじさんとあひるさん」
ようふくやを営むひつじさんのところに、毎日用もないのに、あそびにやって来るあひるさん。
ひつじさんの仕事のじゃまばかりで、うるさいことこのうえない。ある日、かまってほしくていたずらをしたあひるさんに対して、ひつじさんは怒りが爆発してしまう……。
ほんの一部の紹介だが、これらの小さなおはなしに登場するのは、子どもと親しみのある動物や、月や風などの自然、家庭の中の、おさらやおなべやカーテンや、かさやめがねといった道具。たくみに擬人化され、子どもらしい失敗や、カンちがいなどもユーモラスにえがかれている。
たしかに古典的ではあるのだが、現代の子どもの姿と、作品の中の擬人化された子どもたちの姿が、時代はずれという感はほとんどない。
ときに、躾的な部分もあるが、それも実にさらりとした書き方である。
ご夫婦合作の童話集。
カズコ氏のカラリと明るい作風に、知義氏のリアルではっきりとした線の絵は、素人の私が見ても、とてもよく合っている。
それがカズコ氏没後五十年以上、知義氏没後二十年以上たって、初めて全三巻の童話集となったというから、驚きである。
まさに、深く結ばれたお二人の、縁の童話集だと思う。




