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縁の本棚  作者: 雪縁
150/306

本日の一冊 安房直子コレクション2より「青い花」

安房直子コレクション2より

「青い花」


 関東甲信地方では、ひと足早く梅雨明けとか。

 当地はまだまだのようだが、しっとり降り続く雨の中、あじさいの美しさを味わえると思えば、多少のなぐさめになる。まったくこの花ほど、雨に似合う花はないだろう。

本日、本棚に入れる記念すべき百五十冊目は、安房直子氏のコレクションから「青い花」。

短いので、今回に限り、ラストまであらすじをご紹介したいと思う。


 ある町の裏通りに小さいかさ屋があった。

 まだ若く、腕のいいこの店のかさ屋は、毎日せっせとかさの修理に明け暮れていた。

 ある時、いつになくたくさんのお金が残ったかさ屋は、大喜びで町へ向かう。

 まっ白なカーテンや、油絵の具や、ギター。

 かさ屋には欲しいものがたくさんあった。


 けれど、その途中、かさもささずにぽつんと立っている、水色の服を着た女の子を見かけて、思わずこんなことを言ってしまう。

「ねえ、小さいおじょうちゃん、ぼくが新しい雨かさを作ってあげよう」

 そして二人は、女の子のかさに張るきれを選びに出かける。女の子がえらんだのは、青いきれ。

かさ屋がほしいものをかうお金の三倍ものねだんだったが、かさ屋は喜んでそれを買った。きっといいかさが作れそうな気がして。

 そして思ったとおり、かさ屋が心をこめて作った女の子のかさは、海のようであり、雨上がりの空のようであり、青い屋根の色をした家のようにも感じるのだった。


 さて、その日からふしぎなことが起こり始める。

「青い雨がさ作ってくださいな」

「私も」

「わたしも」

 たくさんの少女たちからの注文が殺到して、かさ屋の店は大繁盛しはじめる。

 あまりの忙しさにかさの修繕はすべて断ってしまったかさ屋だったが、流行がレモン色のかさに移ると、サーッと波が引いたようにひとりの客もいなくなってしまった。


 そして、いつかの小さい女の子がやってくる。

 女の子は悲しげにかさ屋に向かって言うのだった。

「いつかの雨がさ、骨が折れたの。ずっと前にたのんであったのに……あたし、何度も来たの」


 翌朝、かさ屋は女の子との待ち合わせの場所に修繕したかさを持って出かける。

 女の子のすがたが見えたので、いちもくさんに走り出したけれど、そこには女の子のすがたはなく、青いまりのようなあじさいの花が、雨にぬれて咲いていた……という物語。


 あじさいの精が、かさ屋に伝えたかったことは何だったのだろう。

 静かな余韻をもって、語りかけてくる物語だ。



おかげさまで百五十冊目を本棚に並べることが出来ました。

いつも「縁の本棚」を読んでくださるみなさま、本当に感謝いたします。

まだまだ続けていくつもりですので、どうぞ、ひきつづき本棚にお立ち寄りくださいね。

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