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縁の本棚  作者: 雪縁
143/306

本日の一冊 「かぼちゃスープ」

「かぼちゃスープ」【アスラン書房】

            ヘレン・クーパー作

            せな あいこ訳


 あつあつのかぼちゃスープのひと皿を分け合う,ねことあひるとりすの表紙絵。

 くっきりと描かれた大きな顔が、なんとも印象的な絵本だ。


 一羽と二匹は大の仲よし。

 森の中のふるぼけた白い家に住み、庭はかぼちゃでいっぱい。

 彼らは毎日いっしょに、世界一おいしいかぼちゃスープを作る。

 かぼちゃを切り分けるのはねこ、かきまぜるのはりす、しおであじつけるのはあひるの役目だ。

 スープをいただいたあとは、ねこがバグパイプをふき、バンジョーをりすが弾き、あひるが歌う。 そしてひとつベッドで、いっしょに休む。ねこがぬいあげ、りすがもようをつけ、しあげにあひるが羽をつめたふとんだ。

 きちんと役割が決められた生活。

  彼らにとって、けんかなど無縁の幸せな日々だったのだが……。


「きょうは、ぼくがコック長。ぼくがスープをかきまぜる」

 ある朝、あひるがそう宣言したことから、大げんかが始まる。

「かえせ!」「やだ!」

 うばいあったスプーンがねこのあたまに命中し、ねこはわめくわ、さけぶわの大騒動。

 とうとうあひるは、怒って家を出て行ってしまった。

 残されたねことりす。

 最初は強がっていたものの、心配で心配で落ち着かない。スープの時間になったら、きっともどってくるとの読みもはずれ、味付けのしょっぱすぎるスープに、涙を落とす。

 少しぐらいなら代わればよかったと後悔しきりのねことりす。とうとうがまんできず、いっしょに暗い森の中を、あひるを探しに行くことに決めた。

 さて、あひるはいったいどこに? ちゃんともどってくるのだろうか?


 たいていの子どもたちは、大人がやることに興味を抱くものだ。

 それが危ないことであれ、やったらいけないといわれると、どんどんやりたくなってしまう。

 いつも塩で味付けばかりのあひるが、スープをかきまぜたくなる気持ちは、読み聞かせる子どもたちにすなおに伝わったらしい。

「かきまぜるくらいねえ」

 そう。かきまぜるくらいなら……とだれだって思ってしまうだろう。

 けれども、あひるがスプーンをにぎった挿絵、ひと目見たら、きっとだれもが、ぎょぎょぎょ!と言葉をなくしてしまうにちがいない。


 けんかしながらも、お互いがかけがえのない存在であることをちゃんと理解している一羽と二匹。

 温かなかぼちゃスープのように、心がほっこりする絵本だ。

 








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