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縁の本棚  作者: 雪縁
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本日の一冊 「おおきなテーブル」

  「おおきなテーブル」【ポプラ社】

          森山 京作

          広瀬 弦絵



 社宅ぐらしの我が家には、子ども部屋というものがなかった。というか、いちおう勉強机を置く部屋ぐらいはあったのだけれど、二人の子どもたちが使い始めたのは高校受験の前あたりから。あとはずっと居間にある、おおきなテーブルを使ってきた。

 このテーブルで、私たち家族は食事をし、お茶を飲み、本を読み、笑って話し、勉強をし、持ち帰った仕事をした。数十年の家族の歴史をすべて知りつくした、思い出あるテーブルなのである。

 このテーブルのすみっこには、小さな傷跡がある。

 原因は忘れてしまったが、小学生だった次男が、何かの腹いせに、ゲーム機をバンとテーブルに打ちつけたはずみにできたものである。

 ハズカシイから修理しようという家族の意見は放りっぱなしで、やはり今でもしみじみと、その傷跡を見つめて過ごしている。


 森山京作「おおきなテーブル」は、うさぎのおばあさんが主人公。子どもたちが成長して家を出ていき、ついには二人暮らしだったおじいさんうさぎもいなくなり、おばあさんうさぎが、おおきなテーブルでたったひとりきりで食事をする場面から始まる。


 おおきなテーブルをはさんで、家族で過ごしたあれやこれやを思い出しつつ、テーブルの裏側にかかれた子どもたちの落書きをなぞってみたり、思い出にふけっていると、とつぜん、末の息子が帰ってきて、来月はみんなであつまって、おかあさんの誕生会を開こうと言ってくれる。おばあさんうさぎは、とてもうれしくて、最後、こういう言葉でむすんでいる。


「そのときは、このうえをみんなのすきなものでいっぱいにしてやらなくちゃ。えーっと、えんどうまめのスープ、にんじんのグラッセ、キャベツとりんごのサラダ、たまねぎのグラタン、かぼちゃのパイ、トマトのジュース……。ああ、いそがしくなりそうだこと」

 よみがえったようにシャンとなるおばあさんウサギの様子が目にうかぶ。


 家族の心をひとつにまとめたおおきなテーブル。

 それは、おかあさんの心でもある。

 いつのときも、家の中心にデンとかまえて、うれしい子も、寂しい子も、怒っている子も、すべてすべて受け入れる、おおきな、おおきな、おかあさんの心だと思う。


 小さな子どもはもちろん、子育てまっただ中のおかあさん、子どもの巣立ちを経験されたおかあさん方にお薦めしたい一冊である。

(書店ではおそらく見つからないかも。図書館の書庫には必ずあるはずです)



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