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縁の本棚  作者: 雪縁
139/306

本日の一冊 「歯いしゃのチュー先生」

「歯いしゃのチュー先生」【評論社】

        ウイリアム・スタイグ 文と絵

        うつみ まお 訳


 小さいころは、歯医者と聞くだけで身震いしそうなくらいにこわかった。

 おそらく、一年生のとき、生まれて初めて受けた歯の治療で、機械で舌をちょっぴり削られてしまったからだと思う。

 以来、歯医者は私にとって恐怖の対象となり、病院の前を通るときは小走りで走り抜けるほどだった。

 大人になっても、歯医者にかかるのはユウウツでたまらなかったが、とある歯医者の先生に出会ってから、歯医者通いがぜんぜん苦ではなくなったのだ。

 K先生と出会ったのは、三度目の転勤の地。

とにかく、とにかく話上手。緊張しているこちらの気持ちを和ませ、笑わせ、それは丁寧に治療してくれる。スタッフの方々も明るく優しかった。先生を信頼できるかできないかで、こうも気持ちが変わるものかとあらためて驚いたものだ。


 チュー先生は、だれもがみとめる腕ききの歯医者さん。

 モグラやシマリスとか、先生と同じくらいの大きさの患者はいすにすわって診察。

 それよりも大きな患者は、床にすわってもらい、先生がはしごにのぼるか、さらに大きな患者は、先生が宙づりになって治療する特別室に案内する。

 チュー先生はとにかく手先が器用なので、ドリルをかける痛みもなにも感じさせないほど。

 人気のある先生だが、病院の看板にはこう書かれていた。

「ネコやその他、きけんな動物の治療はおことわり」

 ベルが鳴るたび、先生とおくさんはまどからのぞき、どんなにおとなしそうでもネコにはご遠慮ねがっていた。


 そんなある日のこと。

 痛みにたえかねて、一匹のきつねがやってくる。

 一度は断ったものの、あまりの痛みに泣きながら歯の治療を懇願するきつね。

 かわいそうに思ったチュー先生とおくさんは、きつねを治療室に通すが、恩知らずのきつねは、二匹を食べる夢を見て夢ごこちになる。そして、歯が治ったら、本当に二匹を食べてやろうとこっそりたくらむのだ。

 きつねのたくらみをすべておみとおしのチュー先生夫婦。

 けれどもやりかけた治療は成し遂げることがモットーである先生は、きつねの治療を終えた上で、身を守る方法を考え出す。さて。その方法とは?



 チュー先生と奥さんの息のあった行動と、目を白黒させて帰っていくきつねのすがたがとてもゆかいだ。

 身体はちいさいけれど、貫録十分。歯医者としての使命感をわすれないチュー先生のお姿を、ぜひ絵本でごらんください。



 


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