本日の一冊 「ざりがにのおうさま まっかちん」
「ざりがにのおうさま まっかちん」【福音館】
おおとも やすお作・絵
もし、次男を授からなければ、生涯、ザリガニを飼育することなどなかっただろうと思う。
彼が小学生のころ、我が家にはあらゆる生きものがうごめいていた。
かぶとむし、オオクワガタ、ノコギリクワガタ、スズムシ、イモリ、そしてザリガニ。
生きものが苦手な私は見ないふりをして生活していたが、次男はそれはそれはていねいに、一匹一匹世話をしていた。
ザリガニは、近所に住む年上の友だちと、釣りにいったのだが、みるからに元気な「まっかちん」であった。しかも、このまっかちん、元気すぎてたいそう困ったクセがあったのだ。そのことはあとでふれるとして、まず、絵本について。
はちのすほいくえんのねんちゅうぐみの六人はザリガニ釣りに出かける。
やって来たのはまっかちんぬま。
みんながたくさん釣り上げる中で、初心者ののぞみは一匹も釣り上げることができない。
休日におとうさんとザリガニつりの練習をするもののまったくだめ。落ちこむのぞみを、ねんちゅうぐみの六人ははげまし、ビニールプールに自分たちのとったザリガニを放して、釣りの特訓をする。
そしてなんとか釣れるようになったのぞみ、意気揚々とまっかちんぬまに。
けれどもやはり、なかなか釣り上げられないのぞみは、みんなの声援を受けながら、釣り針を思いきり投げこむ。すると……。
場面は切り替わり、まっかちんの世界へ。
けんかするもの、よこどりするもの。まっかちんの世界もなかなか大変そうだ。
そのうち雨が降り出す。雷に打たれながらもザリガニ釣りをやめようとしないのぞみを、担任のえっちゃん先生はじめ、みんなが応援。そして、ついにのぞみが釣り上げたものは……。
生きものの好きな子なら夢中になって読める絵本だ。挿絵が時おりマンガチックなのもかわいい。
さて、我が家のまっかちん。
元気よすぎて、水槽のふたをもちあげ、脱走すること一度や二度ではなかった。
朝起きて、水槽をのぞいて
「ひえ~! いない!」
だれかが叫ぼうものなら、すぐにザリガニ釣りならぬザリガニ探しなのであった。
一度目は、熱を出した次男のまくらもとに、赤い積み木やミニカーの玩具にまざって、ちょこんといた。二度目はキッチンのテーブルの下に。三度目は、朝起きたら、夫のふとんの中にいた。
夜中に、家族の寝静まったころをみはからって脱走し、移動するのだろうか。
「イケメンのそばに来たいんだな。このまっかちんは」
と、夫は笑っていたが、案外、人恋しいまっかちんだったのかもしれない。




