本日の一冊 「おちゃのじかんにきたとら」
「おちゃのじかんにきたとら」【童話館】
ジュディス・カー作
晴海 耕平 訳
「お茶好き」「ねこ好き」「とら年」の三拍子そろえば、どうしても選ばずにはいられない絵本がこれ。
「おちゃのじかんにきたとら」は、ほのぼのとした挿絵とストーリーが何とも魅力的だ。
あるところにソフィーという名前の小さな女の子がいた。おかあさんとおちゃのじかんにしようとしていたら、とつぜん、げんかんのベルがなる。
そこでソフィーがドアを開けると、なんとやってきたのは、大きくて毛むくじゃらのとら。
「ごめんください。ぼく、とてもおなかがすいているんです。おちゃのじかんにごいっしょさせていただけませんか」
と、すこぶる紳士的なふるまいをみせる。
おかあさんもソフィーもこわがるどころか、大喜びでとらを招き入れる。
ソフィーがおぼんの上のサンドイッチをすすめると、とらはひとつどころかせんぶ食べてしまう。
続いて、お皿の上のパンもぜんぶ。ビスケットもぜんぶ。ケーキもせんぶ。ミルクポットの牛乳も、ティーポットのおちゃもせんぶのみほして、さらに、つくりかけのゆうごはんも、れいぞうこのものも、戸だなの中のつつみやかんづめもぜんぶ。牛乳もオレンジジュースもビールも、そして水道の水までぜんぶ、ぜんぶのみほして、
「すてきなおちゃのじかんをありがとう。そろそろおいとまします」
と、礼儀正しく帰っていく。
さあ、何もかもなくなってしまい、困ってしまったおかあさん。
帰ってきたおとうさんは一体どういう反応を見せただろうか?
大きなトラをまるでネコのように可愛がりながら、そばにくっついて離れないソフィー。
おちゃもおかしも何もかも食べ尽くされてしまったのに、なおかつ、今度、とらが来たときのために、タイガーフードの缶詰を買い置きしておくおかあさんとソフィーの優しさ。
登場人物のだれもが優しさに満ちていて、読み聞かせながら、心地よい安心感に包まれたものだ。
おそらくこの絵本の影響だろう。
たまに息子たちが帰ってきて、買い置きのお菓子やジュース、冷凍庫の食料がなくなっていると、夫は「とらが来た」と笑っている。
わが家は「ごはんの時間にくるとら」だが、実は、夫も私も大歓迎の二頭のとらなのである。




