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縁の本棚  作者: 雪縁
129/306

本日の一冊 「あした 飛ぶ」

「あした 飛ぶ」【学研】

         束田 澄江作 

         しんや ゆう子絵


  

 アサギマダラという蝶をご存じだろうか。

 黒いふちに、うすい水色の模様。まるでステンドグラスを思わせるような美しい羽をもつ蝶である

  実はこの蝶、一見、ガラス細工のようでありながら底知れぬパワーを持っている。 

  春には南から北へ。秋には北から南に向かって日本列島を旅する、渡り鳥ならぬ渡り蝶なのだ。


  大分県国東半島をのぞむ海上にぽっかりと浮かぶ小さな島。姫島村。

  そこはアサギマダラの旅の中継地点だという。

  毎年五月中旬と秋の時季。その島にはアサギマダラが群れて飛び交う。

  その際に、アサギマダラを捕獲してマーキングする。

  捕まえた日付、場所、捕獲者の名前などを羽に書き入れて放すと、次にだれかが捕獲したときに

 いつ、どこから飛んできたかがわかる。

   実際にアサギマダラの情報を共有するメーリングリストがあるらしい。


 この物語の主人公は六年生の多岐川星乃。

 二年前に父親を亡くし、母親の故郷である姫島村にやってきたばかりだ。

偶然アサギマダラの捕獲に成功した星乃は、その羽に「リュウセイ」と書かれているのに気づく。

 その村で民宿「凪」を営む祖母は、アサギマダラについて詳しい。

 祖母の調査のおかげで、星乃の捕獲したアサギマダラが長野県から飛んできたこと、そしてマー

キングの主は星乃と同い年のリュウセイということがわかり、星乃とリュウセイの間で文通が始まっ た。   


 星乃と母の絆・祖母との絆・クラスメイトの志帆との絆・リュウセイとの絆・そして亡くなった後も繋がる父との絆。

 星乃と繋がるさまざまな人との絆を、作者はていねいに描いている。

 タイトルの「あした 飛ぶ」にあるように、あした飛ぶ力をくれる何かが、だれかが、自分のまわりにきっとあるはず。

「相手の心の扉を開けるには、自分自身の心の扉を開けておかなくちゃいけないんよ」

 物語の中で祖母が星乃を諭すことばだ。

 心の扉を開くこと。

 そうするだけで、飛ぶための勇気、見守ってもらえるぬくもりを貰えることができるのだ。


 本書は、昨年度の小川未明文学賞受賞作品。

 作者はわざわざ姫島村まで足を運んで仕上げたという。

 時に涙し、感動し、読後感のよいすばらしい作品である。



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