本日の一冊 「おおきなキャベツ」
「おおきなキャベツ」【金の星社】
岡 信子・作
中村 景児・絵
春に出回るキャベツは本当においしそうだ。
何層にもよく撒いて、たっぷりとした重量感。まるで、太陽と大地のエネルギーをいっぱいに取り入れているかのように感じる。
キャベツ畑にモンシロチョウがひらひらと飛び交う風景もとても好きだ。
さて、この絵本。
キャベツ畑にずらりとならんだまん中のひとつがみるみるうちに大きくなった。
ひんやり冷たく、すべすべの葉っぱのキャベツの上で、すべったり、かくれたり。
子どもたちは大喜びであそぶ、あそぶ。
ところが、あるときとつぜん、キャベツの葉っぱがくるくるくるんとまるまってしまった。
たいへん!
子どもたちが巻き込まれてしまった。
かたくまるまったキャベツをどうやって開かせよう……?
おすもうさんがひゃくにん。
プロレスラーがひゃくにん。
消防士がひゃくにん。
おまわりさんがひゃくにん。
えんやらやあ!
キャベツの葉っぱはびくともしない。
つづいてあらわれたのは、
ブルトーザーがひゃくだい
ショベルカーがひゃくだい。
クレーンしゃもひゃくだい。
ガ ガ ガとはっぱをはがそうとするが、キャベツはかたく、かたくとじたまま。
子どもたちのおとうさんとおかあさんたちが、いっしょうけんめい考えて、子どもたちを救い出した方法とはいったいなんだろう?
ところで「身近な野菜のなるほど観察録(稲垣栄作 三上修画)【ちくま文庫】」によれば、日本は戦後著しくキャベツ畑の面積を増やした。
それは日本の急激な人口増加の一因でもあり、絶滅してしまったコウノトリに代わってキャベツ畑が赤ちゃんを授けてくれたのではないかと作者は書いている。というのも、スコットランドに次のような風習があるからだ。
ハロウィンの夜。恋人たちがキャベツ畑に集まり、キャベツを引き抜いて恋の行方を占う。その結果、赤ちゃんがキャベツ畑で産まれるという言い伝えがあるのだそうだ。ハロウィンの夜に、畑で何があったのかは引き抜かれたキャベツのみぞ知るといったところなのだろう。
当時のキャベツはまだ葉をまく性質をもっていなかったらしい。ところがラブラブの恋人たちを見ていられなかったのか、その後の品種改良ではあたかも目を覆うように葉を次々に撒き出し、その結果として今日見られるような玉のようなキャベツが誕生したというのだ。
キャベツは結構、子どもとかかわりが深い野菜なのかもしれない。




