本日の一冊 「子どもの本とごちそうの話」
「子どもの本とごちそうの話」【径書房】
赤木 かん子作
今でもそうだが、むかしから本の中に食べ物のことが書かれていると、むしょうに嬉しくなってしまう。
自分にとって、その筆頭となる子どもの本は、「若草物語」をはじめ、「小公女」「アルプスの少女」「家なき娘」など、挙げだしたらきりがない。
例えば「若草物語」
エイミーがこっそり学校に持っていった塩づけのライムだの、ジョーがローリーにあげたブラマンジュ。貧しいフンメル家に差し上げたクリスマスの朝ご飯と手を温めるパイなど、どういうものかはっきりとわからなくても、自分なりにいろいろと想像して心の中で舌なめずりしていた。
「小公女」では、ヒロインのセーラが辛い一日を終えて屋根裏部屋にもどった時の魔法の場面。
食卓に用意されたお皿のおおいをとると、なみなみと入った熱くておいしいスープや、サンドイッチや、トースト、マフィンなどの描写にため息をついたものだ。
「アルプスの少女」では、ハイジがペーターのおばあさんにあげるためにためた、やわらかな白パン。
「家なき娘」では、ペリーヌが工夫を重ねた空き缶の中のゆでたまご。
赤木かんこ氏は、井上靖の作品では「しろばんば」を面白くないと除外しているが、私自身は、「しろばんば」こそ、出てくる食べ物ひとつひとつに、もっとも興味を覚えた。
例えば、洪作少年の朝のおめざや、おぬいばあさんのつくるライスカレー。奔放な親戚の娘たちとの買い食いの場面など、何度も繰り返して読んだものだ。
作者の赤木かんこ氏は「子どもの本の探偵」であり、彼女の捜査にかかれば、古今東西の児童書をすべてひもとくことが可能であるらしい。
さきほど挙げた数冊は、この本の中のほんのさわりの部分。
「子どもの本とごちそう」については、まだまだたくさんの本が紹介されており、いくつかのレシピまでもついている。
四十年前の本なので、図書館でしかお目にかかれないと思うが、装丁はマンガチックで、とても可愛い。
興味ある方はぜひ、ご一読をお薦めしたい本なのである。




