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縁の本棚  作者: 雪縁
123/306

本日の一冊 安房直子コレクション3より「すずめのおくりもの」

安房直子コレクション3

《ねこじゃらしの野原》より

「すずめのおくりもの」


 ちっちゃな栗色の頭、くりんとした、つぶらな瞳。

 すずめを見かけると、思わずほほえみかけたくなる。

 以前は、電線に止まっているすずめたちをよく見かけたものだが、ここに来てからは一羽も目に

とまらない。カラスに追い払われてしまったのだろうか……。

 安房直子氏の作品に、かわいいすずめたちが登場する楽しい物語がある。

 題して「すずめのおくりもの」

 これは、とうふやさんが主人公の六つの短い物語をまとめた「ねこじゃらしの野原」の第一話である。


 あるところにとても働き者の、とうふやさんがいた。

 朝は暗いうちからとうふを作り、昼はあげやがんもどきを作り、夕方はラッパをふきふき、自転車でとうふを売ってまわる。

 毎日毎日、いっしょうけんめいに働いて、月に一度だけ、毎月十日をお休みの日と決めていた。

 ゆっくりできるはずの四月十日。

 その朝、とうふやさんは、たくさんのかん高い声で起こされる。

 店の戸口を開けてみると、そこにいたのはずらりと並んだすずめたち。

 とうふを一丁作ってほしいと、湯のみ茶わん一ぱいほどの大豆をとうふやさんに差し出す。

 本日、四月十日にすずめ小学校に入学する子すずめたちのお祝いのごちそうを作ってやりたいのだという。

 入学祝いにとうふだって? 赤飯のまちがいだろう? いぶかしげなとうふやさんに対して、すずめたちはいっせいに首をふる。

 そこで、とうふやさんはいったん豆を水にひたし、すずめたちにあとで来るよう促すが、せっかちなすずめたちはなかなか落ち着かない。

 いよいよ作業開始。

 すりつぶされた豆が、鍋の中でとろとろ煮え、にがりが入って、静かにかたまっていく様子をすずめたちはうっとりとながめる。

 そして、やっとできあがったとうふを前に、すずめたちはもう一度、とうふやさんにある注文をするのだ。

 すずめたちの注文とは? 

 そして、おくりものとはなんなのだろう?


 とうふやさんが、ちいさなちいさなとうふやあぶらげをていねいに作っていく描写には思わず引き込まれてしまう。

 春は子すずめたちが、親元から巣立つ時期。

 すずめの小学校もありえるかも……?


 そんなことを思いながら、ふと風にゆれている電線を見上げた。

 ああ。今日だけでも、電線にすずめたちが集まってさけんでくれたらいいなあ。

「ゆきえにしさん、おめでとう」って……。

 だって、今日は雪縁のお誕生日なんだから。



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