本日の一冊 「へびのクリクター」
「へびのクリクター」【文化出版局】
トミー・ウンゲラー作
中野 完二訳
暖かくなると、時おりお目にかかるニョロニョロ。
わたしは足の多い虫が苦手だが、足のないこのお方もこわくてならない。
できるだけ遭遇しないように気をつけてはいるつもりだが、田舎は、春うららな陽気に誘われてお散歩好きなへびが多いのだ。
田舎暮らしの従姉は、へびなどへいきのへいざ。マムシでさえも焼酎につけこんで飲む、勇ましい姉御である。
彼女のダンナさんはといえば、大のへび嫌い。
さすがに声はあげないが、心の中では、うわああと叫びたいほどきらいなんだそうな……。
台所にマムシの入った焼酎ビンを見つけたときの彼の心中を察すると気の毒極まりない。
フランスの、とある小さな街に住むルイーズ・ホト夫人の誕生日に、は虫類学者の息子が贈ってきたもの。それはなんとへび!“
ボア・コンストリクターという毒のない大蛇を、夫人はクリクターと名付けて可愛がる。
やがて、学校の先生をしている夫人は、クリクターを学校に連れていく。
そこでクリクターにアルファベットを教えると、彼はSになったり、Mになったりからだで覚えてしまう。
また、子どもたちのためにすべり台になったり、なわとびのひもになったり、電線にひっかかったものをとってあげたり、クリクターはとにかく親切なへびなのだ。
そんなクリクターにある夜、事件が! この事件のあと、クリクターに起きるできごととは……?
ユーモラスなウンゲラーの世界。子どもたちにはお薦めだ。
ところで、従姉はへびをこわがらないくせにミミズが大の苦手である。
「だってさ、へびには目があるじゃない。ミミズはそれがないんよ。こわいじゃないのっ!」
え~っ?
ミミズは、あんなに小さいじゃない?
顔もなにもあったものじゃないでしょ?
人の好みってものは、なかなかむずかしい。




