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縁の本棚  作者: 雪縁
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本日の一冊 安房直子コレクション3より「花びらづくし」

安房直子コレクション3より

「花びらづくし」


 当地では、ここ数日、桜が満開の時季を迎えている。

 ちょうど実家に帰省していたおりに、山の方に目をやると、裾野のあちこちにピンクのパラソルが傘を広げていた。

  濃いのうすいの、大小とりまぜ、その数の多いことに改めて驚かされた。

 この時季に、一度は読みかえしたくなるのが、安房作品の「花びらづくし」。

 物語は茶店の若いおかみさんの一人称で語られていく。


 山で暮らす人間にしか招待状を出さないという「さくら屋」

 桜林の中にひっそりと在る不思議な店で、一年に一度、ちょうど桜の散り際に見ることのできる、まぼろしの店でもある。

 お店を出すのは桜林に住む桜の精たち。

「さくらや」と染め抜いたのれんをかけた、たくさんの屋台を出すのだ。

  どんなものを売っているのかといえば……。

  桜の花びらをつないだ首かざりと腕輪。

  花びらを染め抜いたハンカチ、花びらもようのハガキや封筒。花びらゼリー、さくらアイスクリーム、さくらワイン等々。

  お金は百円ほどを全部五円玉でお願いしますという条件つきである。

  花びらづくしのさまざまなものに、訪れた女性たちはだれもがうっとりとなるのだった。


  茶店の若いおかみさんも、今年初めてさくら屋からの招待状を受けた。

  山暮らし五年目にしての、さくら屋からのご招待である。

 おかみさんは、あまりの嬉しさに気もそぞろでその日を待ちわび、喜々として出かけていく。

  自分の好きなものを買って、息子のおみやげを買って、まだまだ屋台を見て回っていると、桜の花びらをぎっしりと詰めた枕が目に止まった。

  そこですかさず枕を買って、おかみさんはあることを思いつくのだ。

  ところが……。

  桜ふぶきの森の中で、おかみさんの身に、思いもよらない、おそろしいできごとがふりかかってきたのだった。


「花びらづくし」の美しさと怖さ。

 一年中で、桜の咲きほこる今の季節に、ぜひ味わっていただきたい物語である。

 


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― 新着の感想 ―
桜ってその美しさと儚さから根元に死体が埋まっている、とかちょっとホラーなインスピレーションも作家に与えてきた木ですよね。途中まではワクワクして、天の鹿もそうでしたが自分がここにお呼ばれしたら自分だった…
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