本日の一冊 「おかえし」
「おかえし」【福音館】
村山 桂子・さく
織茂 恭子・え
田舎で暮らしていると、隣近所から、いろんなものをいただくことが多い。
摘みたてのイチゴ、生しいたけ、もち米、ほりたてのじゃがいも、さつまいも、タケノコ。
タコやナマコなどというときも。どれもこれも新鮮でありがたいかぎり。
しかし、同時に考えてしまう。
「なにか、おかえししなければ……」
と。
この絵本に出てくるきつねのおくさんとたぬきのおくさん。それぞれに同い年くらいの子どもがいる。
お引っ越ししてきたばかりのきつねのおくさんは、ごあいさつがてら、かごいっぱいのイチゴを持って、おとなりのたぬきのおくさんのもとへ。
喜んだたぬきのおくさんは、ほりたてのタケノコをおかえしに、きつねのおくさんのもとへ。
と、まあここまではふつう。
しばらくして、きつねのおくさんは、素敵な花びんにきれいな花を活けて、たぬきのおくさんへ。
喜んだたぬきのおくさん、今度は絵と壺をきつねのおくさんへ。
こうして、どんどんおかえしのやりとりがふくらんで、ついには……。
読み聞かせ活動がひと区切りついたころに、この絵本に出会い、しまったあ!こんな面白い絵本があったんだと残念でたまらなかった。
気持ちがいいのは、きつねのおくさんもたぬきのおくさんも、どんなおかえしをいただいても、常に笑顔で喜んでいる表情。
おかえしとは、本来、気持ちと気持ちの交流だから、迷惑がったり、うとましく思ったりしてはいけないのだと思う。
それにしても、どんどんエスカレートしていくふたりのおかえし。
えっ? そんなものまで! 読者は笑いが止まらない。
子どもはもちろん、主婦(主夫)の方々にも読んでいただきたいお薦めの一冊だ。




