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縁の本棚  作者: 雪縁
110/306

本日の一冊 「だって だっての おばあさん」

「だって だっての おばあさん」【フレーベル館】

           さの ようこ さく・え


 同じ八十代の老人でも、実父と義母とは年齢のとらえ方がまるで違う。

 実父「まだ八十五歳」 義母「もう八十五歳」

 前者、年を顧みず、やりたいこといっぱいで無理をしがち。

 後者、年をとってしまったので、やりたいこと、やってみたいこと、すべてあきらめがち。

 見守る側としては、どちらも心配だ。


 この絵本に出てくるおばあさんは九十八歳。

 元気な五歳のねことふたりぐらし。

 さかなとりの好きなねこは、いつもおばあさんを誘うのだが、おばあさんはきまって、

「だってわたしは九十八だもの。九十八のおばあさんがさかなつりをしたらにあわないわ」

 のんびりとおひるねをして、豆の皮をむく。

「だってわたしはおばあちゃんだもの」

 これがくちぐせなのだった。


 そんなおばあさんの九十九歳のお誕生日に、はりきってローソクを買いにいったねこは、急いだあまりにローソクを川に落としてしまい、わあわあ泣きながら帰ってきた。

 わずかに残った五本のろうそくを、お手製のケーキにかざって、おばあさんとねこはお祝いする。

 ローソクを数えると、お誕生日の気分になるというおばあさんは、ねこに宣言する。

「ことし、わたし、五歳になったのよ」


 そしてそのとおり、五歳のおばあさんは、ねこといっしょになって、魚をとったり、ジャンプをしたり、川に入ったり。どんどん身軽になって、その都度新しい発見に心をおどらせるのだ。


 脳科学者として知られる茂木健一郎氏の著書に、脳には自分がこうなりたいというイメージに近づいていく仕組みがあると書かれていた。

 実年齢というのは、ひとつの呪縛みたいな面もある。

 だってだってのおばあさんみたいに、九十九歳が五歳まで若返りできなくてもいいのだけれど、それぞれが望む、実年齢マイナス●歳イメージで生きていきたいものだ。


 冒頭で話した二人。

 実父は身体の無理をセーブしながらこれまでどおり。

 義母は、なにかひとつでもやりたいことを実行できますように。

 そして、私は鏡に映る自分に向かって、

「だって、わたしはまだ●歳ですもの」

 日々、そう呼びかけようと思っている。

 

 


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