本日の一冊 あまんきみこ童話集1より「きつねみちは天のみち」
あまん きみこ童話集1より
「きつねみちは天のみち」【ポプラ社】
あまん きみこ作
息子たちが小学生のころ。
夏休み前に、たしか「青空文庫」という名前のカタログが配布されていた。
薄い薄い冊子だけれど、中身は、名作あり、短編小説あり、ノンフィクションありと、かなりバラエティに富んでいて、毎年必ず購入していた。
そこでめぐりあったこの物語。
にぎやかなかけあいのフレーズが、いまだに忘れられない。
友だちの家に行くとちゅうで、へんてこなにわか雨にであったともこは、元気な声を耳にする。
「きつねみち」
「どっこい!」
「てんのみち」
「やんこら!」
「がんばれ」
「それな」
雨のすきまの向こうからやってくるのは、たくさんのきつねたち。
みんなで青い新品のすべり台を運んでいるのだ。
ともこの前を通り過ぎようとしたとき、小さなきつねが、きいきい声でどなりはじめた。
「そこのきょうだい」
「どっこい」
「ここをもちな」
「やんこら」
「さっさとはたらけ」
「やんこら」
そこで、ともこもきつねたちに交じって、かけごえをかけながら、すべり台を運ぶのを手伝う。
林の中を通り抜け、広い野原に出て、着いたところは、水色の建物。きつねの小学校だった。
待ちかまえていた子ぎつねたちが大歓声。
思わず、みんなでパチパチと拍手喝采だ。
そのとき。
とつぜん、あたりがしいんと静まる。
きつねたちの目は、いっせいにともこへ。
不思議な雨のすきまにいたら、みんなに出会ったと説明するともこに、きつねの先生はそれはありがたい天のみちなのだと教えてくれる。
きつねたちは、手伝ってくれたともこを歓迎してくれ、ともこはひとしきり、すべりだいやおにごっこで、みんなと遊ぶ。そして、ひとりかけごえをかけながら家路に着くのだった。
青空文庫はこの一話で終わるのだが、実はこの物語、ともこ、けんじ、あきこの三人の友だちの、同じ日の同じ時間にであったにわか雨によるファンタジーがオムニバス形式で著されている。
ともこは、天のみちできつねたちと。
けんじは、雲の上で子羊と。
あきこは、海の底でボラと。
それぞれがであった出来事を、明日話してあげようと思うところで、物語は閉じる。
なかなか工夫された、あまん きみこワールドなのである。




