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縁の本棚  作者: 雪縁
107/306

本日の一冊 「キスまでの距離」

「キスまでの距離」【集英社】

          村山 由佳


 物語を創ることは好きだけれど、なぜか恋愛ものは苦手である。創るだけでなく、読むことすら気恥ずかしくて抵抗がある。

 そんな私だが、三十代のあるとき、ゆいいつ夢中になって読んだ恋愛小説がある。

 村山由佳の「おいしいコーヒーシリーズ」だ。

 本書はその第一巻。

 物語の主人公である、高校生の勝利ショーリと、かれんの出会いから恋におちるまでが描かれている。


 勝利ショーリとかれんはいとこ同士。とはいえ、かれんの生い立ちには複雑な事情がある。

 早くに母親を亡くし、父親に育てられた勝利は、父親の長期出張に際して、いとこたちとの同居を命じられる。

 そのいとこが、五歳年上のかれんと弟の丈なのだ。

 最初うっとうしいと思っていた勝利だが、久しぶりに会ったかれんの美しい変貌ぶりに驚く。

 年上でありながら、純粋無垢なかれんにどんどん惹かれていく勝利。

 最初は年下の弟として接しているうちに、男性としての勝利に惹かれはじめるかれん。

 二人の気持ちが、ゆっくりと恋に向かって変化していくさまを、読者はドキドキしながら見守っていける。


 お互いの気持ちを確認しあいながらも、不安の消えない二人。

 若さゆえの暴走など、いっさいなく、悩みながらも堅実に温かく、一歩一歩愛情を育んでいく姿勢がまぶしい。


 このシリーズには、本書のあと、「僕らの夏」「彼女の朝」「雪の降る音」「緑の午後」「遠い背中」「坂の途中」「優しい秘密」「聞きたい言葉」「夢のあとさき」と続いていくが、どこまで読んだのかは忘れてしまった。

 ただ、初めて手にした本書だけは、何度読み返しても心が洗われる。

 それくらい、人を好きになるピュアな気持ちがあふれている物語なのだと思う。


 後日談として……。

 あるとき、本棚に入れていたこのシリーズが、すべてなくなっていた。

 不思議に思って、長男(当時中学生)の部屋をのぞいたら、ちゃっかりと机の上に積まれてあった。

 読んでみたら、次々に読みたくなってしまったとのこと。

 彼もまた、このシリーズに魅せられたひとりらしい。

 




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