本日の一冊 「ねぎぼうず」より「梅林」「さくら」
みずかみ かずよ詩集
「ねぎぼうず」【岩崎書店】
みずかみ かずよ作
季節の舞台はゆっくりとまわり、今や早春のころ。
梅の花が満開の時季を迎えている。
みずかみ かずよさんという詩人は、もうこの世にはおられないが、北九州の同人誌「小さい旗」で
ご主人の水上平吉さんと活躍されていた。
童話の同人誌同志のおつきあいで、こちらからもできあがった冊子を送り、向こうからもいただいたものだ。
かずよさんの作品で、今の時季にふさわしい一編をご紹介したい。
梅 林
えだいっぱいの
つぼみたちが
ぱっぱっ
ぱっぱっ
にぎりしめていた
ひかりをはなったから
うめのきは
あかるい
ぼんぼり
くっくっ
くっくっ
かぜにかおりの
はしゃぐ
こえがするから
うめのきは
いちにち
おまつり
さきほど天気予報で、今年の桜の開花は二十三日頃といっていた。
少し早いけれど、さくらの開花を心待ちにしながらもう一編。
さ く ら
うすい
うすい
におい紙の花びら
さくらの木の下は
まあたらしい
障子をはったおざしきだ
ござをしいてすわったら
うきうきして
ももいろにそまったひざこぞうが
くすぐったいよ
手をあげると
指のさきから
清らかなひかりがしみこんで
手のひらも
花びらになった




