第4話 力
聞きなれた声で起こされる。それは心地よく、安心するようだった。
自分はいつからか、心を閉ざしていた。感情はあまり見せず、人と話すことも苦手になった。
いつからそうなったのかは覚えていない。記憶が半分欠けているように感じる。
少年は思う、自分は誰かに造られたもので、ニセモノなのではないかと。 それは深刻に考えるのではなく、ただ単純にそう思った。
そして今日も少年は 戦う。 この世界を壊滅の一歩手前にまで追いやった外敵から、そして自分自身と。
第2章 夢の世界
少年は目を覚ます。人一人が入るぐらいの大きさの楕円形のカプセルの中から目を覚ます。
するとカプセルが開き、少年は体操座りの体制から立ち上がりカプセルの中から出る。
すると白衣の服装で、ひげのある30代前半らしき男性が少年に向かい
「お目覚めか、ヤシロ ケイ」
白衣姿の男性が話しかけてくる。
「よぉ、待ってたぜ 目覚めるのをよ。調子はどうだ」
「とくには...」
「そうか、なら今からこの施設を説明する。まぁ俺が説明するんじゃなくって、もうじき担当がくるから少し待っててくれ」
そう言われたので近くに椅子と机があるので、椅子に座って待つことにした。
その間 考える。 どうして自分はこんなところにいるのかを。
あのカプセルに入っていたことも、自分は何故こんなにも人と関わるのが嫌なのかも分からなかった。
たったひとつ分かることがあった。人を亡くす悲しさ。自分の無力さ。守れなかった後悔。それは誰なのかわからないが、それだけは理解していた。
それ故に少年は ナニカから他人を守ることが自分の指名なんじゃないかと思う。その時、部屋の扉がスライドして開く。
扉の前には女性が立っており、そこからこちらに向かってくる。それに合わせて少年は立ち上がる。
「こんにちは、ヤシロ ケイ くん 体調は大丈夫そうね。それじゃあまずは簡単にこの世界から話すわね」
「この世界は、本来の世界とは異なる世界なの。」
少年は理解しようとしたが大雑把で理解できなかった。そのまま無表情でいるので女性は更に話を進める。
「理解できないのは仕方ないわ、ここは創られた世界なの。誰かっていうとね、本来の私たちなの。言ってしまえば私たちはニセモノなの」
話が進むにつれ、ますます話に追いつけない少年だったが、女性はこう続けた。
「今、目覚めてから 記憶がほとんどないことに気が付かなかったかしら。自分は何者で、どうしてここにいて、あのカプセルの中から出てきたのか」
「それはね、本来の世界でもう一人のキミが絶望のあまり、死んでしまったからよ。それも何十、何百とね、繰り返し、何回も...」
「今、本来の世界は同じ期間を繰り返しているの、8月31日から12月10日をね、ずっと永遠に。今まで繰り返してきた回数なんてわからないぐらいに」
「そして、その期間の間に不慮の事故や、病気で死んでしまった人たちが、何回も繰り返していくうちに無意識に別の個体を生み出してきたの」
「それが私たち、ニセモノの私たちよ。そして、こんな世界に変えてしまった現況を私たちが駆除するの。」
「そうすれば、元の世界が救われて、本来の世界で守りたかったものも戻ってくるの、まだ確信までいけてないのだけどね」
少年はずっと半信半疑で話を聞いていたが、最後の言葉で理解した気がした。
俺たちを生み出してしまうまでに追い込んだやつらを殺して、世界を救う。単純な答えだけが出てきた。
「ごめんなさいね、私説明が下手で上手く理解できなかったかもしれないけど、この駆除に協力してくれないかしら」
そう聞いた少年は、何も言わずに首を縦に振った。
「そう、ありがとう。 じゃあこっちに付いてきて、最後の説明をするわ。」
女性についていく、今まで居た部屋を出てしばらく廊下をあるくとある部屋に入った。
そこには武器庫と言えるような部屋だった。
「まず、私たちの体について説明するわね。私たちは存在が出来上がった時に、本来の世界にはないマナという物質を扱えるようになっているの。」
「マナは体内に存在していて、マナの量によって基本能力が上がってくるし、扱える武器も変わるの。」
「とりあえず、そこの機械に手をかざしてみて、そうすればあなたの中にあるマナの量がわかるわ。」
少年は機械に手をかざすと、目の前に数値が出てきて、恐らく計測しているのであろう。
1000...2000...5000...10000
どんどん増えていき、最終的には5万でとまった。
すると見ていた女性は驚きの表情を隠せず顔に出ていた。
一瞬の間があったが女性は驚いた表情のまま
「あなた、神がかり的なマナの量よ。もしかしたら、あれを扱えるかもしれないわ。」
そういうと案内され、厳重に守られた扉の先に案内される。そこには一本の剣があった
照明が一切ないこの空間で光源となって光輝いていた。
「これは、私たちが来る前から創られていた、意思を持った武器 名は天照よ。」
「今までこの武器を手にした者は、内側から焼かれ、消滅してしまったのよ。」
「だけど、あなたのマナの量ならこれを扱えるかもしれない、その決断はあなたに任せるわ。」
少年は、一つの迷いもなく その剣に手を伸ばし、掴む。
すると真っ白な空間にとばされる、目の前には 150センチほどの少女が立っていた。
「また、きたのか。どうせ焼かれ死んでしまうのじゃ、諦めて帰るのだな」
そういうと背をむけて先のない光の中に消えていく。少年は逃がすまいと
「待て、俺は他のやつとは違う」
そういうと少女は振り向き
「本当じゃな?」
少し声のトーンが低くなる。そしてその質問に対してケイは
「あぁ」
と、迷いのない返事をした。
「わらわはもう、誰も傷つけたくないのでな... これが最後になるじゃろ。」
そういうと真っ白な空間から元のいた場所に意識を戻される。
すると一瞬にして光に包まれ、内側から焼かれる。
「あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"」
痛さのあまり悲鳴を上げてしまう。痛さのあまり、気を失いそうになるが持ちこたえる。
すると先ほどの女性が
「マナを流しこんで!そうすれば自分のマナと緩和して、アマテラスの強大に溢れ出るマナを抑えられる!」
全身のマナを剣に流し込む、最後の1滴まで残さず送り込む、すると光は段々と収まり熱さも消えた。
すると剣を中心に激しい爆発音と共に風が起こる。
そして、それが収まると 静寂だけが残った。すると女性が
「やったわね。自分のものになったわよ!」
少年はマナを大量に使ったせいでその場で倒れこみ意識がなくなる。
そして
「おぬし中々すごいの、気に入ったぞ!我が主、これからよろしくの」
そう聞こえ、完全に意識が途絶える。
第4話 END