第2話 向かう先に
少年は目が覚める。夢を見ていたようだった、だけどそれがどんな夢だったのかは覚えていない。少年は泣いていた。きっと夢のせいだ、そう思った。
「はぁ 起きたら泣いてるとか、どうしたんだ俺」
独り言を呟く。
起床時間 7:15分
昨日と同じ時刻に起きた。そして昨日の記憶があることに安堵していた。
「さて、そろそろ着替えないとな」
制服に着替え、朝食を食べ、鞄を持ち
「行ってくる」
昨日よりは暑くはなかった、雲が多少かかっていて日差しを遮ってくれていた。
通学路を歩いていると聞きなれた声が圭の名を呼ぶ。
「圭くん!おはよー」
少し遠いところから元気な声でそう叫びながら走って寄ってくる璃乃がいた。
目の前に来たところで
「おぅ、おはよ」
「今日はいつもより遅いんじゃないか?」
「ちょっと寝坊しちゃってね」
璃乃はあまり寝坊をしないと聞くので理由が気になった。
「徹夜でもしたのか?あまり良くないんじゃないか?」
「うん、今日が楽しみで寝れなかったんだ。えへへ」
なんとも可愛い仕草と発言をするのでドキっとする圭に璃乃が
「じゃあいこっか」
と言い 先に歩く。それを追いかけるように圭も歩き出し璃乃の横にいく。
途中男子の目線が集まっているように思えたが圭と璃乃は気にしていないフリをしていた。
正確には、フリをしていたのは璃乃であった。心臓はバクバクなっていて今にでも飛び出しそうなほどだった。それに加え嬉しい気持ちもあった。
学校に着くとお互い教室が別のため挨拶をして、自分たちの教室へと向かった。
璃乃は教室に着き自分の席につくと、まだ心臓が高鳴っているのを感じた。頰も熱くなっていた。そして耐えきれなくなり、机に伏せてうずくまった。
圭が教室に着き、鞄を机に掛けると後ろから勇雅が話しかけてきた。
「なぁ、朝のニュースみたか?通り魔が出たらしいぜ?、しかも隣の街だって話だ。」
「へぇ、物騒だな。帰り道気を付けないとな」
圭は関係のない話だろうと思い、軽く流した。しかし、所々で噂になっていた。
(帰り道こわいよね、気を付けないと...)(色々と管理されている中で通り魔なんかできるんだから、かなり危険かもな)(死んだのって何人ぐらいなんだ?)
という風に 恐怖を感じていたり、興味を示す人も少なからずいた。恐らく襲われるのは俺たちが下校するころだろうと考え、瀬那や璃乃を守らないとなという話を勇雅と話した。
昼休み いつもの4人で教室に集まり、昼食をとっていると瀬那が明日の放課後ショッピングセンターに行かない? と提案してきた。もちろんみんな賛成した。
なんでも、新しくクレープ屋がオープンするそうで、前々から目をつけていたらしい。
「なんだかこういうのって楽しいね、私中学の時はみんな優しくしてくれたんだけど、壁みたいなのあったから」
「瀬那はかわいいもんね~、むしろ私達が遠慮なさすぎるのかも(笑)」
「そのぐらいがいいんだよ。本当の友達って感じがするし」
「そうだな、俺もこの4人で集まれてよかったと思うぜ」
そうして4人は昼食を済ませ璃乃は自分のクラスへ帰り、3人はまだ話していた。
「そういえば、今日の璃乃は落ち着かない感じだったわね。」
「確かにそわそわしていたと思うな」
「明日が楽しみでうずうずしてたんじゃないか?笑」
「本当にあの子は純粋というか、なんというか」
「それがいいんじゃないか、よく言えば裏表がないんだよ」
「そうね、それに明日楽しみなのも璃乃だけじゃないし」
そして昼休みがおわり、その後の授業も終了し、4人で雑談をしながら帰る。璃乃と再び二人になり璃乃が呟く。
「こんな楽しい時間がずっと続けばいいのにね...」
「あと、1年とちょっとか...長いようで短いからなぁ」
「バラバラになってもずっと友達だよね?」
「もちろんだ」
それじゃ、と別れの挨拶を交わし 家に入る。自分の部屋に入り部屋着に着替える。璃乃の言葉を思い返してみる。
楽しい時間がずっと続く...自分もそうであってほしいと願う圭。しかしやはり時間は過ぎていく。無残に、残酷に。
夕飯を済ませ風呂に入り、自分の部屋でスマホをいじっていた。すると勇雅から通話がかかってきたので
暇つぶしに会話することにした。気づくと1時を過ぎていた。明日に響くと思い、寝ることにした。
少年は夢をみる、そこには崩壊した街に赤い月。みたことのない景色で少し幻想的でもあった。そこで一人の少年を見つける。
自分と同じ歳ぐらいで、自分に似ている気がした。その少年は泣いているように見えた。ひび割れた道路でたった一人泣いていた。
声をかけようとするが声が出ない。近づこうとするが体が動かない。すると泣いていた少年はこちらを見て呟く
(一体どうしたらいいというんだ)
少年は目が覚める。今日も泣いていた。すると頬に違和感を感じたため触れてみると、激痛が走った。触れた手を見てみると血がついている。
すぐに目が覚め、自分の身に一体何が起こったのかを確認してみる。頬の傷以外に怪我をしている箇所はなく、いつも通りであった。
いくら寝相が悪かったとはいえここまでの傷を作るなんて不自然であり、動揺せざるをえなかった。
しかし、ずっとこのままではいけないのでとりあえず身支度をし、朝食をとり、頬の傷に絆創膏を張って家を出る。
今日は4人の中の誰とも会わずに学校に着く。教室に入ると勇雅と瀬那が話していた。圭が入ってきたことに気が付くと不思議そうな顔でこちらに向かってくる。
「その絆創膏どうしたんだ?怪我でもしたのか?」
「あぁ、朝起きたら 傷になっててな」
「あんたってかなり寝相悪い方なの?」
「いや、そんなにだと思うけど...」
実際今まででベッドから落ちていたり、寝違えたりしたことは一度もなかった。それなので尚不思議なのであった。
勇雅と瀬那は今日は特別だったんだろうと思い、別の話題に変えた。
「ね、放課後そのままいく?」
「そうだな、一度帰るのも面倒だし、そのままいくか」
「あー、早く食べたいなぁ。」
「あんまり食べ過ぎんなよ?太るんだから(笑)」
「だ、大丈夫よ!ちょっとぐらい...」
「おいおい、圭 女子にそういう話は厳禁だぜ?」
「そうだそうだー」
「心配してやっただけだっつの」
「余計なお世話です~」
「はいはい」
内心 今日の放課後は楽しみであった。なので早く授業早く終わらないかと、いつもとは違う意味で催促していた。
そして放課後、4人で集まりショッピングセンターに向かった。
「思ったより人居るなぁ。はぐれないようにしないと」
「高校生にもなってショッピングセンターで迷子にならないでよね」
「4人でクレープ屋さんにいくんだし、きっと大丈夫だよ」
クレープ屋を見つけると、行列ができていた。やはり新しいものには皆興味をそそられるらしい。
「結構並んでるねー」
「そうだな、ちょっと俺トイレ行ってくるわ。適当に買っておいてくれ、後で金払うからさ。」
「おぉ、いってら~」
クレープ屋から少し離れたところにトイレがあり、すぐにすませ、3人の元へ戻ろうとしたとき
ドオォォォンッ!!!
外で大きな爆破音が聞こえた。嫌な予感がして3人のもとに急いで戻ろうとすると足場がというよりショッピングセンター全体が大きな爆発音と共に大きく揺れた。
それに続いて目の前の店が爆発した。爆撃で少し飛ばされてしまった。それとともに足場が崩れる。1階の床に叩きつけられるように落下する。そのとき意識が途絶える。
目を覚ますと砂埃と煙が充満しており、色んなものが崩れ、火災が発生していた。周りの状況をもっと確認するため立とうとすると足が瓦礫と床に挟まれていて身動きできなかった。
それに加え、左腕の骨も折れているようだった。そこでまた視界がぼやけ、意識がなくなる。
少年は夢をみた。真っ白で何もない空間で 悲しそうな顔をした少女がこちらを見つめていた。 誰かはわからない、だけどなんとなく落ち着くような気がした。
(君はどこにいても災難なことに巻き込まれてしまうんだね。同情するよ... もっと早く 助け....たい....けど....ね)
最後が途切れ途切れでよくわからなかったが、少年は自分のために泣いているのだとわかった。しかし、どうして自分のために泣いているのだろう。彼女に何かしてあげたのだろうか。
そう思った。
第2話 END