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夢別世界  作者: れう
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第1話 覚める

少年は、真っ白で何もない空間で一人遠くを見るように生気のない目でまっすぐ前だけを見ていた。


「俺は一体なにをしていたのだろう。守りたいモノがあって、努力して、がむしゃらにソレだけを考えていた。」


「考えられなかった。それが俺の生きがいであり、夢であったから。」


「けど、俺はこんなところで何をしているんだ。ここには守りたいモノがない、居たってなにも始まらないし、なにもできない」


「はやく、戻らないと、いかないと守りたいモノが消えてしまいそうで落ち着かない。」


「はやく・・・・はやくいかないと・・・」


少年は何十、何百と繰り返しそのことだけを考え喋りはせず、ただ、前だけを見ていた。。。



                                   第1章 そこにあるもの


第一話 覚める


ふと、目が覚める。そこには見慣れた天井、机やテレビ、時計、今寝ていたベッドがある。見慣れたものばかりがある。


しかし、違和感を感じる、むしろ違和感しかない。少年は寝起きの働かない脳で、違和感が何なのかを探ってみるが、わからなかった。


今の時刻は 7時15分 自分はとりあえず何をしようか考える。考えようとした時。


「圭!!早く降りてきなさい!学校遅刻するよ!」


その大きな言葉で目が覚める。


「あぁ...今日から学校だったっけか...」


2021年 9月1日


夏休みというぐうたら生活、言わば天国ライフは昨日で終了したのだと現実を受けとめた 八尋 圭 は制服に着替え朝食を食べる


「今日からまた学校始まるんだからしっかりしなさいね」


「わかってるよ。」


だるそうに、まるでこれからの学校生活になんの期待もしていないような声で返事をする。


「まったくもう...」


朝食を済ませ、鞄を持ち


「じゃあ行ってくるから」


そう一言 言い残し 家を出る。


9月でもまだ、日が差して暑い中、登校する。


「晴れすぎだろ....」


空は雲一つなく、快晴であった。昨日の天気と比べてみる。しかし、また違和感。


昨日の天気が思い出せない。 自分はそんなに記憶力は劣っていないし、天気ぐらい覚えているはず。と、思うのだが、思い出せない。


まぁ、でも天気ぐらいどうだっていいかと、くだらない事で悩んでたらこの先大変だな、とそのことは深く考えなかった。


学校に着く。恐らく登校時間には間に合っている。


7:50分 学校着


自分の教室に入り、自分の席に着く。賑やかに周りの人たちは友達であろう人達と個々の会話をしていた。


そんな教室を退屈そうに肘をつきながら眺める。


すると一番前の席に座っていた女子生徒が自分がいることを確認して立ち上がると、こちらに向かってくる。


「おはよ!圭」


今、目の前にいるのは去年、俺たちが高校1年のときにクラスが同じで、友人の紹介で親しくなった 桜田 瀬那 である。


「圭はいつも退屈そうね。何か引かれるものとかないの?」


「そんなのねぇよ、第一今は世界中のありとあらゆる場所がコンピューターで管理されていて、何十年か前にはド田舎なんていわれていた場所が、

 

 今では都会と何の変りもないぐらいに発展していて色々できるし、スポーツに至っては疲れるから嫌だ。」


「圭ってほんとだらしないわね.......そ、それはそうと昨日のこと覚えてる?...」


瀬那は頬を赤く染めながら聞いてくる。しかし圭はそれに気づかず、むしろ昨日のことを思い出すのに必死であった。


昨日...登校していた時にも違和感があった。 瀬那は圭が覚えていることを当然の様に聞いてくるが、自分はわからずにいるのでバレないように合わせようとしたが、やはり疑問であった。


「昨日...?」


つい口にだしてしまった。が瀬那はあまり気にしてなく、違うことに精一杯のようだった。


「ほ、ほら 昨日一緒に花火大会にいったじゃない、4人みんなで...」


「皆で花火が一番綺麗に見れるって無理して高いところに上って、そこで花火みたじゃない...? そ、そのときにね、私が言ったこと覚えてる..?」


花火大会...やはり圭は思い出せない、自分は一体昨日何をしていて、何があったのかを知らない。思い出せない。


しかし、ストレートに覚えてないなどというと 悪い気がするし、変に思われるかもしれないので


「わ、悪い、多分花火に夢中で聞いてなかったかもしれない。」


今の圭にはこれが精いっぱいの返事だった。むしろ上手く返せたんじゃないかと思った。


「そ、そう それじゃあ仕方ないわね...」


キーンコーンカーンコーン


チャイムがなる。STの時間だろう。みんながそれぞれ自分の席に戻っていく。


「それじゃあ、また後でね。」


「お、おう」


そういうと何かを呟きながら席に戻っていった。


(うぅぅ...もう少し勇気出せばよかったぁ... 今度はもう少し静かな所で言おうかな)





「明日からまた授業が始まるが、夏休み気分をすぐにでも払って授業に集中するように、それじゃ予定の時間に体育館に集まるように、みんな寝るなよ」


そういうと先生は教室から出ていく。みんなはぞろぞろと集合場所にむかったり教室で会話したりしている。すると後ろから


「よぉ圭、体育館まで一緒にいこうぜ、ていうか相変わらず眠そうだな..(笑)」


今話しかけてきたのは中学からの付き合いで 西嶋 勇雅 という。


「まぁな、でもまぁ今日は授業ないからまだ気分は楽だな。」


「そうだな、それには同感だ。さ、行こうぜ」


体育館での始業式がおわり、立ったままで睡魔に襲われるという極限の戦いが終わり、教室に戻り、帰宅の用意をする。


「圭、ゲーセンでも寄ってくか?」


やることもないのでいつもなら行くのだが、今日は違った。気がかりなことが1日で沢山あった。


「悪い、今日はちょっと野暮用があってそのまま帰るわ」


「ん、そうか じゃあ仕方ないなぁ。じゃあ俺も大人しく帰るかな」


「あ、私も一緒に帰る!、いいでしょ?」


「まぁ、構わんが、それなら璃乃も誘うか。偶然にも途中までほとんど帰り道一緒だからな」


そういうと別のクラスにいる 貴音 璃乃 を誘いにいく。彼女とは瀬那の親友であるため自然と仲良くなった。


気が付けばこの4人グループが当たり前になっていた。


「璃乃~、一緒に帰ろ!」


「あ、瀬那ちゃん!うん、ちょっと待ってね」


璃乃はクラスの友達であろう人達に別れの挨拶をし、こちらに向かってくる。


とても嬉しそうにこちらに駆け寄ってきて、


「今日はどこかに寄っていくの?」


「いや、今日は4人で普通に帰宅だなぁ」


「そっか、寄り道しないで帰るのって久しぶりだね」


そういえば、いつも寄り道していて真っすぐ帰るなんてことはなかったなと圭は思いながら気づく。


昨日のこと以外ははっきり覚えているのだ。しかし昨日の出来事がまるで何の変哲もない壁に拳銃で風穴を開けたようにぽっかりなくなっていた。そう考えていると。


「圭くん、大丈夫?どうかしたの?」


「圭が考え事なんて珍しいな~」


「うるさいな、俺だって考え事の一つや二つあるさ」


そんな他愛もない会話をしながら4人はそれぞれ家へと帰っていく。


「じゃあな~」


「またね~(またな~)」




「二人とも!またね!」


「うん、瀬那ちゃんまた明日!」




瀬那と二人になる。正直二人きりの時は何を話していいのかわからなかった。璃乃とは4人の時はそこそこ話すのだが、二人きりで話すのはお互いまだ慣れていないのである。


しかし、家の距離と方向のせいもあって家に着くまでほとんど二人きりなのだ。ずっとこのままじゃアレだと思い圭は話題を出す。と同時に璃乃が


「圭くんって意中の人とかっているの?」


そんなことを聞かれるとは思われなかった圭は一瞬戸惑ったが


「いや、いないな。」


と、淡々と返す。


「そっか・・・(なら私にも・・・)」


と、うまく聞き取れなかった圭は


「?今何か言ったか?」


すると璃乃は口に出ていたことに気づいていなかったのか


「え、うぅん!? なんでもないの」


少し焦り気味に返す。


「しかし、なんでいきなり?」


「特に意味はないんだ。ごめんね急に変なこと聞いて」


「いや、まぁ、構わないけど」


そうこうしていると自分の家に着く


「じゃあ、璃乃 また明日な」


「うん、また明日」



と、別れを告げ 家に入る。


まだ、誰も帰ってはいなく人の気配はない。圭は自分の部屋に入り制服を脱ぎ、部屋着に着替えベッドに横になる。


今日1日で自分には何かが起こったと実感する。しかし、何が起こったのかは思い出せず、モヤモヤした気持ちだけが残っている。


昨日は花火大会に行ったらしい。確かに夏休みの中盤で4人で花火大会にいこうと約束したのは覚えている。


一昨日、どこに集合だとか忘れないでね、などといった連絡が来たことは覚えていた。


ただ、昨日のことだけが思い出せなかった。いくら思い出そうとしても白い靄で隠されたように遮られる。


ふと、携帯が振動したことに気づく。


(明日から楽しみね、授業寝ちゃ駄目なんだからね?。また勇に紙投げられるんだから(笑))


と、SINEがきた。余計なお世話だと返信を打とうとしたのだが急に眠気に襲われて、気づけば圭は眠っていた。




少年は眠りの中で思い出す。何をすべきなのかを、今までのことを、守るべきものを。


暗い空間の中で少年は静かに真っすぐ前だけを見つめその燃えるような眼差しを絶やすことなく想う。


「守り抜くんだ」と



少年は目が覚める。そこには見慣れた天井、机やテレビ、時計、今寝ていたベッドがある。見慣れたものばかりがある。しかし、まだ脳が働かないのか自分は何をすべきか分からない


ふと、窓に目をやるすると 窓からは赤い月の光が差し込んできていた。真っ赤で、透き通るような赤。


少年は思い出す。むしろ忘れてはいけない事まで忘れそうだったが、しっかり思い出した。そして少年はまた行く。生きがいのため、ソレを守るため...



「排除してやるよ。クソ野郎共が」



第一話 END

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