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生態漢字  ~漢字に抗う異世界のやつら~  作者: そらからり
6章 The Next World at the End
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80話 皆の名前を教えて?

簡単な自己紹介だけ

 9人のうち左側に集まっていた4人に俺が加わって5人組となった。この5人でこれから先、協力して戦い抜かなければならないらしい。

 俺以外のメンバーは男が2人に、女性が2人。

 そしてその女性の1人が……


「あら?あのときの……」


「確か……ガーベラだったか?」


 奴隷商のザザのもとでアネモネ、ジニアと一緒に紹介された女性。

 特に金銭に困っているわけでなく、金持ちのおっさんにわざと買われて娼婦まがいのことをしているというちょっと変わった趣味の人。

 娼婦という仕事柄、そんなに危険じゃないと思うんだが、恨まれたりでもしたのか?


 こちらも覚えていたが、向こうも覚えていたらしい。

 何人もいるであろう客のうちの一人。しかも買いもしなかった俺を覚えているなんてさすがはプロということか。


「久しぶりね。あの二人は元気かしら?」


「久しぶり……で正しいのか?アネモネもすっかり傷が癒えて、ジニアも意識は回復した。すっかり元気だ」


「あら良かった。まあ、私たちはこんなところにいるのだけどね」


 そう言ってガーベラはくすくすと笑う。

 見る者に性を想起させるような笑みを浮かべて。


「ガーベラは何でこんなところに?」


「何でって、それは死んだからなのだけど?」


「いや、それは俺もだけど……あまり実感はないが。死因ってやつだ。言いたくないならそれでもいいが」


 個人的なことなら、病気や何か思い詰めての自殺なら俺に口出しできることではない。

 もしそうならすぐに謝ろう。


「いいわよ、そんなに遠慮しなくても。そうね、私が死んだ理由……それは、男千人斬りを始めたことから話さなくてはいけないわね」


 ……うん?今、なんと?


「ある貴族が私に自慢してきたのよ。女を百人以上抱いてきたって。私もこの漢字の能力と床上手のスキルを所有しているからには負けられないと思ってね。連続千人斬りに挑戦してみたのよ。始めは気持ちよさ、快感、充実感があったわ。二日目からは軽い疲労感が混ざったわね。そして三日三晩の闘いの末……私は体力が尽きてここにいるわ」


 つまり……いや、何も言わない。これに関して俺は特に言わない。

 もうちょっと命大事にしろよとか言いたけど、冒険者を端から見たら同じなんだろう。


「でもまだまだやり残したことはたくさんあるのよ。だから、生き返らなくちゃね」


 俺の無言をどう受け取ったかは分からないが、それで納得したとでも思ったのだろう。

 ガーベラはそう締めくくった。


「ウホン」


 つい話し込んでしまったが、まだ俺のチームメンバーは他に三人もいる。


「あー、終わったかね?ならば余らも自らの紹介をしたいのだが」


 二人いる男のうち、いかにも戦士、という風な男が俺に詰め寄ってきた。

 筋肉に包まれた大柄な身体で迫られると威圧感があるな。

 無骨な鎧を着ているため戦士と思ってしまったが、余と言うからにはもしかしたら偉い人間なのだろうか。


「余は名をブレゴリオという。貴様は我々の名を聞いてから最後に言うがよい。余が現世から落とされた理由か。うむ、それは連れの者の料理が個性的過ぎたゆえだな!」


 ブレゴリオは勝手に話を進めていく。

 料理が個性的過ぎて死ぬってなに?不味すぎたの?毒でも入ってたのか?


「余の連れも心配しておるだろう。だから早く生き返ってやらんとな」


 そう言ってブレゴリオはガッハッハと笑う。何というか、裏表のなさそうな人物だ。

 悪く言えば大雑把、よく言えば豪快な人間という印象を持つ。


「……もういい?……次は私の番」


 そのブレゴリオを押しのけて次に話しかけてきたのはもう一人の女性。

 中世的な美しさ、落ち着いた雰囲気でどこか作り物めいているのに自然さがある女性は長い髪をかき上げて言いう。


「……私はこういう種族。……運悪く漢字の討伐中に子供をかばって死んでしまったけど、私はまだ死ねない。……死ぬわけにはいかない」


 髪の下から現れたのは長く尖った耳。

 おお、ようやくエルフに出会えた!

 ケモミミと同じくらい異世界に行ったら見たかった存在!

 拝みたいくらいだ。耳を触りたいくらいだ。


 言葉が遅いのは考えてから発しているからのようだ。


「……私はカナリア。……よろしく」


 悪い人ではなさそうだが、距離感が掴みにくい。

 社交的な性格でないなら積極的に話しかけないほうがいいのか?


「ほら、最後は貴様だぞ?」


 ブレゴリオに押され、残った男が前へ出る。

 特に印象の薄い、痩せても太ってもおらず、背も高くも低くもない。

 少し濁った眼が気になるくらいだ。


「う、うるさい!俺に指図するな!……俺はティミドだ。……勝手にやっててくれ」


 それだけ言うとティミドは引っ込んでしまった。


「それだけか?全く、しょうのない男だのう。こちらは終わったこと。貴様の名は何と申す?」


「俺はレンガだ。仲間がまだ闘っているかもしれない。俺も早く生き返らなければならないんだ。力を貸してくれ!」


 俺の言葉に皆、強く頷き、任せろと言わんばかりに拳と突き出した。

 なお、ティミドは除いて。あいつだけは未だそっぽを向いていたがブレゴリオに頭を叩かれ嫌そうに拳を挙げる結果になった……。



あと数話でバトルを開始したい

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