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75話 避けられない闘い

双子には少し休んでいてもらいましょう

 サンとルナは未だ勝つてない強敵と闘っていた。

 それは決して抗えないものであり、サンがサンであり、ルナがルナである限り勝つことはできない。

 

 修行が足りんぞ。


 心の中では師匠であるハドの声が聞こえてくるようだ。


「ごめんなさい兄ちゃん、師匠」


「私達は追いつけないかもしれません……」


 諦めかけ、うなだれた二人の目の前には肉、甘味、ジュースが並べられていた。


「さあさ、サンちゃんルナちゃん、たくさんお食べ」


「まだまだあるからな。ゆっくり食べるんだぞ」


 二人が闘うは己の欲望、食欲である。

 生来の獣人としての食欲、闘う人間としての食欲、育ち盛りであるための食欲が重なる二人にとっては目の前に広げられたご馳走から目を離すことはできなかった。



 二人が転移された老夫婦の家、そこで出された肉料理を食べてしまったのが間違いであった。

 すぐさまレンガたちを探しに行けばこのようなことにならずにすんだのに。




 最初の肉料理を食べ終え、さて行こうかと二人は立ち上がった。


「あの、そろそろ……」


「今婆さんが追加の料理をつくっておるからの。もう少し待ってておくれ」


「お爺ちゃん、私達……」


「それまではこの爺が相手してやるからの」


 無意識に二人にこの場から去ってほしくないと思ったのか老夫婦のうち夫が二人の言葉を遮るようにこの後の予定を話す。

 悪意から来たものでもなく、二人のことを心配しての結果でもあるため断れず、二人は仕方なく折れる。



 

 サンとルナは心の底から楽しんで遊んだことは数少ない。

 幼少時代から家の中に押し込められ自由は少なかった。

 レンガの妹になってからも強くなるためにハドの下で修行をし、旅に出た。


 誰かにここまで甘やかされたのは初めてかもしれない。

 

 夫が遊ぶために持ってきたのはボードゲームに近いもの。なるべく頭を使わず、運が介在し、最後まで勝敗が分からないものということで選んだのは双六であった。


 賽子を振り、順番を決め、それぞれ進み始める。

 そしてこの双六であるが、マス目に書いてあることはちょっとした罰ゲームが書かれていた。

 決してやるほうも見ている側も不快にはならず、笑い楽しむためにつくられた罰ゲームが。


 双六はスタートからゴールまで、誰かが辿り着くまで終わらない。その量にもよるが、今行っている双六は罰ゲームに時間を割かれるためおよそ一時間半ほどかかる。

 サンが変顔をし、ルナが即興ダンスを踊り、夫がサンとルナを背に乗せ馬になり、一人がゴールに辿り着いた頃、料理が運ばれてきた。



「「す、すごい!!」」


 一時間半ほどで完成した料理にしては量も質も思っていたのとは違っていた。


 

 出だしとなる前菜はサラダである。刃物ではなく手で千切られていることにより変色は避けられている。緑、赤、黄の野菜が使われ目で見る分にも鮮やかで楽しい。かけられているのは妻が独自にアレンジしたドレッシング。サッパリとしているが、その上に細かなチーズを乗せることにより食べ応えもある。


 飲み物はやはりジュースがいいだろう。庭に植えてある木に実った果物から作られたジュースは酸味があるが、甘ったるいよりは飲みやすい。


 次に出て来たのはスープ。魚の骨、貝類、蟹や海老といった海の幸をこれでもかと入れて出汁を取ったスープ。具はないが、薄めの塩を入れることにより、海の味を美味しく味わうことができる。


 メインその1の魚料理。見た目から猫の獣人であれば魚が好物であることが分かる。ここはシンプルに魚を焼くという手段を選択した。炭を炊き、金網の上で焼くことによりその身に旨さを閉じこめる。もちろん、皮が破けるなどということはしない。時期が良く、脂の乗った臭味のない魚を用意できたのも幸いであった。これもスープ同様に味付けは塩のみ。魚本来の味を楽しめるはずだ。


 メインその2の肉料理は鳥、豚、牛の煮込み料理である。それぞれで一度煮こぼすことにより肉独特の臭味を消し、肉に合った時間で煮込む。そこに芋を入れ、味付けは濃いめ。ここまでが塩であり、物足りなさを補うためである。甘辛い味付けにし、パンを添える。パンも焼きたてであり、肉料理の汁に浸すことを考え、固めに焼いてある。


 最後にデザートであるが、ここで妻は悩んだ。老夫婦は普段はそこまで甘味を食べない。そこで目に入ったのはジュースに使った果物の残り。端のほうの小さなものは絞れなかったため残してあったが、これは使えそうだ。ゼラチン、砂糖、牛乳を混ぜ火にかける。そこに小さく切った果物を入れ、火から離し冷やし固めることによりゼリーが完成した。



 よくやった!と夫は妻を激励した。 

 若干、どころかいつもとは別物と言えるほど手の込んだ料理ではあるが、この二人が喜んでくれるならこの際そんなことはどうでもいい。

 二人が満足し、笑顔になり、ここに少しでも長くいてほしい。それが老夫婦の今の願いであった。



「「い、頂きます」」


 がっつくような真似をするのは失礼であろう、丁寧に味わって食べることが食事をつくってくれた者への礼である。そうレンガが教えてくれたことがあった。

 急いで食べなければいけないが、サンとルナは一つ一つの食材を噛み締めて味わう。これが普段食べている料理であればまだ良かった。だが、今目の前に広がっている料理はどれも美味しいのだ。

 このままゆっくり食べてもいいかな……そう思ってしまうほどに。


「まあまあ!品の良いこと!」


「ほう……」


 老夫婦は感心するように二人を見つめる。

 食べるのを見られ、恥ずかしさによりさらに食事の速度は落ちる。



 サンとルナの激闘はここから三時間の末に予想もしない形で終わることとなった。

飯系って難しいですね

なに書けばいいか分からないです……

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