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73話 重い腰

最近、腰が痛いんですが運動不足ですかね

 ヴェルツルの手駒は限定的な場面でしか使えないが様々な能力を持つ十二支、それぞれが一騎当千でありそれぞれの分野に特化した五亡星、そして、人よりも遙かに強大な力を持つドラゴンよりも格上の『竜』である。

 これだけの戦力で負けるはずがなかった。

 仮に倒させるとしても十二支くらいであろう。あれらは漢字であるゆえに攻略法が存在する。

 

 『子』であればカウンターを決めればよい。

 『丑』であれば避けないのだから力を込めて一撃で決めればよい。

 『寅』は能力的には恐ろしいものはないのでタネさえ知っていれば倒せる。

 『卯』は一人で闘える者であれば倒せるであろう。

 『辰』は実は、倒さずとも真っ向から闘いその力を示せば攻略となる。

 『己』は脱皮できないように手足を縛ればよい。

 『午』は罵倒せずに敬意を持って闘えばよい。

 『戌』は……十二支の中でもかなり強いが、『竜』で無理やり押さえつければよいか。


 ヴェルツルの中では十二支は策を弄せば倒せると思っていたので、そこまで痛手ではなかった……さすがに全滅してしまうのは大きな痛手ではあるが。

 『隷属』を通して、十二支の多くが倒されたことが分かる。というか、『隷属』の繋がりか絶たれていた。



「……他の者はどうしているんだ」


 十二支であれば『隷属』ですぐにでも呼び寄せられるが、この場にいる残りの『未』、『申』、『亥』しか残ってはいなかった。

 五亡星は『隷属』した奴隷ではないため、現在どこにいるか分からない。

 先ほど飛び出していったウァルマーもまだ戻らない。

 よもや倒されてしまったのではないか。ヴェルツルの頭にそう考えが過ぎるが、すぐさま思い直す。いや、ウァルマーの強さは他の五亡星よりも飛び抜けている。十二支を集めたのもウァルマーであるし、五亡星とウァルマーがいなければ好き勝手に動き回っていたかもしれない。『竜』もウァルマーが見つけ、ウァルマーが動きを抑えてくれていたからこそ『隷属』化できた。

 あれもこれもそれも全てがウァルマーがいなければなし得なかったことだ。

 ウァルマーの力を過大評価はしない。過小評価もしない。ヴェルツルの知るウァルマーがすでに予想よりと強く、強いことが予想内であるからだ。


 だから戻ってこないのは苦戦しているのであろう。ウァルマーはその能力上、攻撃力に足らないことがある。防御に秀でた相手であれば時間がかかるのである。


 だから今この場の戦力で相手をせねばなるまい。

 『未』、『申』、『亥』を見る。十二支の中でも対人特価した者ばかりである。もはやこいつらに託すしかない。




 最後まで他人に頼りきりであり、その他人の力を自分のものと勘違いしているヴェルツルはそう考えを締めくくった。



「最後の一撃じゃ。これて貴様もこの国も終わらせてやる」


 ハドはヴェルツル目掛け拳を振るう。


「流龍拳流 龍流星群」


 星が降るがごとく、その秘められた一撃のエネルギーは『龍』の力が込められ、『流』で制御された技であり奥義であった。

 当たれば人であれは微塵に、地に放てば割れるであろうその一撃はヴェルツルを殺し尽くすには充分すぎるものであった。


「王よ、ここは私にお任せを」


 だが、その一撃を阻むものがいた。

 身に纏うのはとても戦士とは呼べない脂肪の固まり。背はそれほど高くないはずなのにその横幅で巨大に見える。サイズが合う鎧がないのか、ほぼ布を纏っている状態である。

 そしてその男はあろうことか、ハドの全身全霊全力をその身で受けて一瞬、身体を揺らしただけで何事もなかったかのように立っていた。


「お、おお。よくやった『未』よ」


 ハドの一撃を恐れ、身構えていたヴェルツルも『未』が防いだことにより我に帰る。


「いえ、私の身体の前にあのような一撃、防ぐことなど造作もありません」


 弛んだ腹を叩き、『未』は言う。

 口だけは格好良いことを言っているが、外見と仕草が残念な男であった。


 そして、この一撃を防がれたことによりハドに限界が訪れる。


「ぐうっ……まずい。『龍帝現身』が解けるともはや動くことすらままなりそうにないの」


 『竜』を圧倒する力は身に余る力を手に入れると言うことだ。体力の消耗は計り知れない。

 先程の一撃を放ったことが止めであろう。ハドは能力が解けその場に倒れ込んでしまう。

 こうなるとこの場にヴェルツルを討つことができる者は一人だけになる。


「ハド爺、『竜』を倒してくれてありがとう。後は俺に任せてくれ。フォル、ハド爺を安全な場所まで運んでおいてくれ」


「チチィ」


 およそ百のフォルがハドを運んでいく。



 ヴェルツルと十二支三人の前に立つのはレンガただ一人。


「チィッ!」


 ……いや、その肩にはフォルがいた。





【レンガ視点】


 さて恐らくだが、ヴェルツルは闘いには参戦しないだろう。

 それならば残り三人を相手にするわけだが……さすがに三人はきついな。


「ヂイ」


 肩のフォルが威嚇するように鳴く。どうやら闘う気満々のようであるが、まさか一人は任せてくれと?


「チィー」


 フォルは頷く。


 あの『未』とやらは衝撃を吸収もしくは無効化しているようだ。他に何もしないのはしなかったのか出来なかったのか。出来なかったのならば勝ち目はある。

 残りは槍も持つ男と無手の男。

 ……どちらも強そうだが、どちらを任せようか。


「ヂィッ!」


 フォルは俺が悩んでいる間に槍を持つ男の元へと走って行ってしまった。


「……頼んだぞ。こっちを片づけたらすぐに駆けつけるからな」


 とは言えこちらは1対2の闘い。互いの実力が互角であれば人数の多い向こうが有利。加えて能力は未知数。


「新技を試すときが来たようだな」


 新技と言うよりも新たな能力であるがな。


 少なくとも数の不利くらいは消してやる!

今まで主人公は突っ立って闘いを見ていましたが、下手に動くとハドさんたちの闘いに巻き込まれるから動けなかったんです。許してください。

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