8話 二人の適性
やばいな、ついつい保存を忘れて消してしまう
街に戻ると時刻は昼を少し過ぎたくらいの時刻だった。
二人はまだ俺を警戒しているようでしがみつき合っている。
「……さて、どうしようか」
俺の呟きに二人はビクッと身体を震わせる。
「ああ、すまない。二人を脅かそうとしたわけじゃないんだ。……そうだな、まずは服からか」
二人はぼろ布同然の服を着ていた。このままでは目立つし、すこし匂う。女の子だから気にするだろう。何か二人の気に入るような服を買ってやろう。
「まずは自己紹介からするか。俺の名前はレンガだ。二人の名前を教えてくれるか?」
「……サン」
「……ルナです」
二人は小さい声でだが返事をする。
金髪の女の子がサン、黒髪の女の子がルナだ。二人とも小さくて可愛い。
「まあこんな道端で話すのもなんだし、どこか食事をしに店に入りたいんだが……その前に二人の服を買っていこうと考えている。今の服は汚いから捨ててしまうが、構わないか?」
「うん、大丈夫」
「……私たちは奴隷ですので服など何でもいいのですが」
まだルナは俺に対して固いようだが、服屋に向かう道すがら話しているとサンとは会話が続くようになった。
さて、服屋に着いたのはいいが、ここからどうしよう。俺には女の子の、それも子供の服など分からない。しかもここは異世界だ。
好きに選ばせてみるか。
「二人とも聞いてくれ。俺は二人がどういう服が好きか分からない。だから好きなように選んでくれ。お金は気にしないで、数着選ぶように」
「……いいの?」
「私たちは奴隷ですよ。それなのに、服を、それも数着もだなんて」
うーん……何て言ったらいいんだろう。ここはその場しのぎになるけどとりあえず買うことに目的を与えたほうがいいか。
「俺のそばにいるんだから二人にはそれなりの格好をしてもらいたい。そんな理由じゃ駄目か?」
「う、うん……わかったよ」
「……そのような理由でしたら選ばせてもらいます」
そこは女の子というか、一時間ほどかけて二人は服を選んだ。
俺は少し離れて様子を見ていた。サンはともかくルナはどうも俺がそばにいると緊張してしまうみたいだしな。
「これとこれと、これで」
「私もこの三つをお願いします」
サンとルナは街を歩いている子供たちと比べても遜色ないようで、それでいてなるべく安い服を選んだようだ。
……どうも俺に遠慮しがちだ。まあ奴隷という身分だから仕方ないといえば仕方ないのだが。
「そうだな……これはこれに変更して、これもそっちのだな」
二人が選んだ服は安いだけあって着心地が悪そうだ。なるべく同じようなデザインで佐才が良いやつに変えてやる。
「その……いいの?」
「私たちは別にそれでも良かったのですけど……」
「いいんだ。金は心配するなと言っただろ?ああ、それとこれも買ってやるか」
店の入り口にあった二つのフード付きのパーカーを手に取る。色違いなので二人にはちょうどいいだろう。
「この服は二人のこれからの必需品。それとこのパーカーは俺からのこれからのよろしくの挨拶をこめたプレゼントだ」
「えと、その……ありがとう!」
「あ、ありがとうございます」
二人は戸惑いながらも礼を言ってくる。
よし、これで色んな場所を巡れるな。
「俺は今から昼飯を食べるんだが、二人はもう食べたのか?」
「いえ…奴隷は朝夕と一日二食の食事ですので」
成長期の子供に満足に飯を与えていないのか、あの店は!
「でも、他の奴隷の店よりはマシだって他の奴隷のお姉さんたちが言ってたよ!」
俺の表情を見て焦ったのか、サンが慌てる。
「じゃあこれからは腹一杯たべるといい。二人は何がたべたい?」
「いいんですか?私たちは奴隷なんですよ?」
「いいんだ。それに俺は二人を奴隷だなんて思ってはいない。家族だと思っているくらいだ」
二人は家族に見捨てられて奴隷になった。せめて俺くらいは二人を見捨てないでいよう。今日から両親の代わりに二人を育てていく。
「家族…じゃあ兄ちゃんってよんでいい?」
「私はお兄さんって呼んでいいですか?」
親でなく、兄か。いいね、実は俺、妹がほしかったんだーなんて二人には言えないな。
「ああ、俺は今日からサンとルナの兄だ。めいいっぱい甘えていいぞ」
「兄ちゃん!」
「お兄さん!」
二人は嬉しそうに俺の両腕に抱き着いた。
「よし、じゃあどこに食べに行こうか。何が食べたい?」
二人が肉を食べたいというので肉料理らしき店に入った。
「はぐはぐ。おいしいね兄ちゃん!」
「これもおいしいです」
二人は今までの分を取り戻すかのような勢いで食べ始めた。それぞれ三人分くらいはすでに食べている。遠慮せずに食べていいことだ。打ち解けはじめたかな。ちなみに俺は一人前で満腹になった。確かに味はいいのだが、けっこう濃い。二人は気に入ったようなのでちょくちょく通うようにしよう。
幸い、ケモミミは珍しいようで他の客はチラチラとこちらを見ているが、そのなかに嫌悪感などはない。やはり二人の故郷が特別なようだ。
二人の食べるスピードが落ち着いたところで俺はこれからのことのついて切り出した。
「さて、これからのことなんだが、二人には俺の冒険の、つまりは戦闘の手助けをしてもらいたいと思っている」
二人は食事の手を止め、こちらを向いた。
「兄ちゃん、その、ルナは闘いには…」
「いいのサン、お兄さん私は大丈夫です。お兄さんとなら怖いけど私も…」
「いや、ルナ大丈夫だ。別に無理に敵に斬りかかってもらおうとかじゃない。例えば、俺たち仲間が傷ついたときルナが手当をしてくれればいい。それだって俺たちにはとても大きな助けなんだ」
「兄ちゃん…」
「お兄さん…」
二人は嬉しそうな顔でこちらを見ている。
「それに、どう闘うのかは漢字と魔法の適性を見てからだ。もしかしたら魔法で闘うのかもしれないぞ?」
「え?でも適性の確認ってけっこうお金がかかるんじゃないの?」
「大丈夫だ。それくらいなら金は持ってるからな」
まだ残りは100万エンほど残っている。三人の適性を見て、二人の装備を買えばギリギリくらいか?あ、俺の武器をまだ買ってないな。これは金欠になりそうだ。ギルドで簡単なクエストを見つけておこう。
食事を済ませた俺たちは漢字を保管してある大聖堂へと向かった。
「いらっしゃいませ。漢字の適性の確認ですね。何名様でしょうか?」
「俺たちの三人だ」
「かしこまりました。それでは30万エンとなります。お先にお支払いください」
適性がなかった客が金を払わないと言ったということがあったそうだ。確かに何も成果がなくて高い金を払いたくはないもんな。
支払いを終えると俺たちは別々の部屋に案内された。
「兄ちゃ~ん」
「お兄さ~ん」
二人は寂しそうな顔でこちらを見ている。いやいや、少し離れるだけだって。
俺は一面真っ暗な部屋に案内された。中央に椅子があったので座り、10分程待っていると、突然壁らしき場所から漢字が現れては消え始めた。時々俺のほうに近づいてくる漢字もあったが、すべて途中で消えていった。
10分程するとドアが開き俺は部屋の外にでた。
「お疲れ様です。そのご様子では適性のある漢字がなかったようですね。お力になれず申し訳ございません」
「いや、いい。それより二人はどうしてる?」
俺はすでに漢字を二つ所有してるしな。
「お二人なら先に終えて、別のお部屋でお待ちしております。どうぞこちらへ」
職員に案内された部屋は高価な調度品があり豪華な内装だった。二人は嬉しそうな顔でソファに座っている。二人は俺に気づくとトテテテと走ってきて俺に飛び込んできた。俺は二人を受け止めるとそのままソファに座らせた。
「おめでとうございます!お二人は保漢者となられたようです。」
「私は『矛』なんだってー」
「私は『盾』のようです」
俺は二人に良かったなと言いながら頭をなでてやった。ついでに耳をさわってやるととてもうれしそうだ。やだなにこれ、とってもかわいいんですけど。
「それでは『矛』と『盾』について説明させていただきます。『矛』は槍系統の武器の習熟度が速くなります。『盾』は一定以下の攻撃を無効化できます。どちらの漢字も前任者たちが力を引き出せなかったため、記録は少ないです。しかし、お二人はその年齢で漢字に選ばれています。真の力を引き出せることを期待しております!」
元気があるサンには戦闘用の漢字で、戦闘には積極的でないルナには防御用の漢字か。これなら良いコンビ―ションを見せてくれそうだ。
次に向かったのは魔導士協会だ。
「いらっしゃいませ。本日は何用で?」
「俺たち三人の魔法適性を見てもらいたい」
「かしこまりました。では、15万エンをお支払いください」
この辺は大聖堂と同じだな。
「確かに。ではこの板の丸い箇所に手を置いてください。適性のある属性に光が灯ります」
まずは俺からだ。俺が指定された箇所に手を置くと水色と赤色の光が点いた。
「水と火、雷の適性ですね。3つ適性があるのはあまりないですよ。魔法の才能がありそうですね」
次にサンだ。サンの場合は暗い色が点いた。
「これは珍しい、闇属性ですね」
最後にルナである。ルナはとても明るい光が点いた。
「これまた珍しい。光属性です」
闇は攻撃力増加など戦闘に役立ち、光は回復などができるそうだ。どちらも珍しいそうで、多くは水・火・雷・木・土の5属性らしい。
「今日は二人とも大収穫だな。よくやったぞ」
俺がほめると二人ともとてもうれしそうである。
魔導士協会をでると辺りは暗くなり始めていた。
「よし、じゃあそろそろ帰るぞ。俺の泊まってる宿まできてくれ」
明日もいろいろと忙しくなりそうだ。俺たちは宿につくと部屋を三人用に変えてもらい、夕飯を食べた後、少し雑談をし就寝したのだった。
二時間かけて書いたのを一瞬で消えて焦ったw
30分で取り戻したけど、ちょいちょい忘れてる つらぁい