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72話 呼び起こされる老龍

はい

すいません

めっちゃ遅れました

 『龍』は間違いなくすべての漢字の中でも最上位に位置する漢字の一つである。

 一つ目の『龍帝』という能力。

 『龍』を召還するというそれだけの能力であるが、『龍』そのものが破格の強さ。召還できる生物系の漢字の中でも闘える者は少ないであろう。今でこそ『竜』に押されているが、それは攻略前の『竜』であるからであって、『龍』も攻略前の強さであれば圧倒的な強さを誇れたであろう。

 二つ目の『龍帝現身』という能力。

 『龍』そのものの強さを己に宿す能力。『龍』そのものになるわけではない。人の姿を保ったまま『龍』の力を得るのである。『龍』の力を持ち人の技を使う。技に秀でているがゆえに筋力という意味で力不足であるハドには相性の良い能力であった。



 『龍』そのものを呼び出し、『龍』の力を得るという規格外の二つの能力を持つ『龍』という漢字。

 強力であるがゆえに、当然ではあるが代償はある。

 まずは『龍』の能力を使うことによる代償。体力を大きく削られ、次の使用まで長い期間を要する。老体となったハドには二つの能力を同時に使うのは五分が限度である。

 次に『龍』を所有したことによる代償。『龍』そのものが強力かつ畏怖されるべき漢字であるがゆえに他の漢字が寄りつかなくなるのだ。せっかく攻略出来たとしても、『龍』を恐がり、大聖堂や他の者を保漢者を選んでしまう。そしてハドが頼まれ屋をしている理由がここにある。攻略が楽になるだけでなく、理由は分からないがハドは漢字に選ばれないから他の者にチャンスがある。悲しいことではあるが頼まれ屋が繁盛していた理由だ。


 ハドは『龍』を所有してからはひたすら己の身体、技術、そして今ある『指』、『流』、『龍』を磨いた。

 独自の武術である流々拳流に『龍』を組み込み、さらに強力なそれへと昇華させた。


 人は決して強い存在ではない。ドラゴンよりも身体は脆く、爪は欠けやすく、牙などはない。知恵と数の力で様々な異形を倒してきた。

 では人そのものが強い存在となったらどうなるか。それがハドという人間である。



 『龍』の力を得たハドがまず行ったことは光の『竜』を叩くところからであった。まずは敵の回復手段を潰す。ハドにとって、戦においても定石である。

 ハドの背に『龍』の翼が生える。飛行能力を得たため、空中からの一方的な攻撃に危惧することはなくなった。



 だが、光以外の『竜』たちはそこに立ちふさがる。光の『竜』にも光線という攻撃手段がある。



 まず木と土の『竜』がハドの身体を抑えようと木と土を上から下から右から左から押し寄せる。

 ハドはこれを得意の受け流しにより木を受け流し土にぶつけ、土を受け流し木にぶつける。まるでハドではなく最初から木と土がぶつかることは必然であったかのような動きであった。


「流々拳流 一星二星」


 ハドは木と土の『竜』にそれぞれ掌打を放つ。二匹の『竜』は弾かれ城に埋もれる。


 次いで水の『竜』が氷を放つ。そしてその氷に闇の『竜』が黒い靄を纏わせる。これは力を吸収する闇の塊。触れれば力を失う呪われた氷である。

 ハドはこの氷を見るや大きく息を吸い込む。

 胸を膨らませ、限界を超え、氷が近づいたときに息を吐く。吐かれたのは息だけではない。『龍』の力を得たハドは『龍』の能力を扱えるということだ。ハドの口からは炎が吐き出され氷を溶かしつくす。


「流々拳流 三星四星」


 氷と闇の竜もそれぞれ弾き飛ばされる。


 最後に光の『竜』の前に出てきたのは火と雷の『竜』。二匹は炎を吐き、雷を走らせる。

 ハドはそれを受け流すことも炎で防ぐこともせず、ただ避ける。

 受け流すことはその対象に触れるということ。対象そのものに触れることによりダメージを負うならば受け流すことに意味はない。こちらも炎を吐くという手段も相手の攻撃に雷が含まれているため威力は相手の方が上であろう。

 だからひたすら避けるしかない。だが、炎は広範囲に渡り、雷は威力よりも早さをに重点を置かれ、避けづらい。

 ハドが避ける先まで炎と雷が迫ったとき、巨体がその二激を受け止めた。


「そろそろ我にも闘わせろ。貴様に丸投げでは『龍』の名に傷が付く」


 傷が癒えたのであろう『龍』が再び参戦を再開した。


「ならばその二匹を押さえておいてくれ。その間に儂はあの光のを叩く」


「任せろ。二匹程度なら造作もない」


 『龍』は火と雷の『竜』に向け炎を吐く。

 『龍』の力の元の持ち主ゆえか、使い慣れているためか、肺活量の差ゆえか、先ほどのハドよりも、火の『竜』の吐いた炎よりも規模も熱量も上であった。

 二匹はこの炎に対したまらず逃げ回ってしまう。

 ハドはその隙に光の『竜』へと迫る。


 光の『竜』は回復と攻撃の両方を行えるが、どちらかが優れているわけではない。『龍』の身体を貫いた光線も範囲を狭め、威力を上げた結果、貫けたのである。もし『龍』が十全であったならば容易く避けられていたであろう。

 そして、『龍』が避けられる攻撃からはハドは避けられる。


「流々拳流 五星」


 光の『竜』を弾き飛ばし、その勢いのまま火と雷の『竜』へと向かう。


「流々拳流 六星七星」


 火と雷へ掌打を放ち、奥義の準備を整えた。



 流々拳流という武術に『龍』の力を加えた新たな技。だが、それは他の技と比べても同じレベルとは呼べない、もはや奥義である。


 最初に弾き飛ばされた木や土、水、闇の『竜』が起き上がり攻撃を再開しようとする。


「流龍拳流 天星天龍」


 どれでも良かった。ただ一番近いという理由で闇の『竜』にその奥義を放っただけだ。

 自信の持つ『龍』の力の全てをぶつけるという奥義。それが闇の『竜』に当たった瞬間には火、水、土、木、雷、光、闇の『竜』の身体は消滅していた。

 『龍』の力を直接ぶつけられた闇の『竜』は消滅してもおかしくはないであろう。だが、消滅したのは『竜』全て。等しく消滅していた。

 流龍拳流 天星天龍とは一から七までの星を繋ぐ攻撃である。一から七までのどれかに当てた攻撃を全てに等しく流す技。

 分散などという安いものではない。同等の攻撃をそのまま全てに流す。奥義と呼ぶに相応しい技である。


「かたじけない」


「我らが王の主よ」


「心からの感謝を」


「我らも共にいさせてくれまいか」


「我らは七にして一」


「老体の身でも扱いやすいであろう」


「どうか、王と共に」


 『竜』は攻略された。

 そして仮初めにすぎなかった、偽物であったヴェルツルという主から解き放たれ、新たなる主を選ぶ。


「おめでとうございます!あなたは『竜』を所有しました!」


 ハドの脳内へと神の声が響き渡る。

 それは『竜』の攻略と新たな力を得たという証。


「こいつは久しぶりじゃ。儂もまだ強くなれるということかの」




 『竜』の攻略を予期していなかった人物。それは己の力を慢心、勝つこと以外が見えていなかった者。


「ば、馬鹿な馬鹿な馬鹿な!一切の躊躇いもなく、加減もなく、躊躇いもなくした『竜』が!攻略されただと!?」


 ヴェルツルの奥の手と言える漢字が攻略される。それは今後の戦においても致命的であった。ここで勝ったとしても得られるものがない。大損害だ。


「……先ほどの攻撃でほとんどの力を使い果たしてしまったわい。残りの一撃、それで貴様を終わらせてやる」


 残りの体力を振り絞り、ハドはヴェルツルへと駆けた。

よし、残るはあれらだけ!

ちゃっちゃとこの章も終わらせて後は新章に進むのと、修正だ!

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