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66話 音が届かずとも、骨が砕けようとも! 後編

さあ、明日は大学の再試だ!

何で書いてるんだろ……

 アカツメは音楽家の両親のもとに産まれた。父は作曲家、母は歌い手であった。

 この両親に育てられたアカツメは当然のごとく音楽の道へ進むと思っていたし、周りからも高名な音楽家となることを期待されていた。アカツメが期待されるのも仕方ない。『音』という漢字に選ばれたからだ。その上『音』に選ばれたのも納得がいくほどの音楽に関する才能もあった。歌を歌えば周りを魅了し、楽器ならば大抵のものを演奏できるようになり、作詞作曲も幼いながらも父が唸るほどのものを作り上げた。音楽に関するものなら何でも大成するだろう、そう両親は思っていた。

 しかし、両親は突然の病で同時期に亡くなってしまった。音楽を愛し、音楽を広めてくれという言葉をアカツメに残して。

 アカツメは両親の最後の言葉通り音楽の道を辿った。やがて周りには多くの人々が集まってきた。


「アカツメさんの音楽は何だか安心するんですよね」


 そう言っていたのはフェリシーだっただろうか。

 フェリシーはいつも隣で自分の歌を、演奏を聴いてくれた。アカツメの両親亡き今、彼女がアカツメの音楽を一番に愛している人間であろう。


 アカツメはあえて国の外での活動は行わなかった。稀に街の外からあるいは国外から噂を聞いてやってくる者には喜んで演奏をした。だが、国の外には決して出ようとはしなかった。

 産まれたこの国を愛しているがゆえにこの国で生き、両親と同じようにこの国に骨を埋めたいと思っていた。小さい国ではあるが人々の笑顔が溢れ、自分の音楽を自分同様に愛してくれるこの街に。


 アカツメが20歳になったその日、ベム国に異変が起きた。

 その日は何やらフェリシーが大切なことを伝えたいと言われていた。

 察しは付いていたが、確信はできていなかったアカツメはもし想像通りなら受け入れようと思っていた。フェリシーは妹のようではあったが、いつからか異性としても見ている自分がいた。自分から言わなかったのはこの関係を崩したくなかったからという臆病な気持ちがあったからだ。

 口笛を吹いて手を叩き歌う。隣ではフェリシーが共に歌いはしゃいでいる。

 音楽で大成したいという気持ちもあったが、そんなささやかな幸せも求めていた。


 そして誕生日当日、五人の人間がベムへとやってきた。

 そして瞬く間にベム国の王を、中枢の人間を殺した。生き残った人間もなぜか新たな王に従うかのように敬う態度を取り始めた。フェリシーを始め日常的にアカツメのそばにいた人間はなぜか王の言葉には耳を傾けなかったが、それでもそんな人間はほんの一部である。

 だがそれはアカツメの音楽を聴いている人間が王に従わないということを示唆しているとアカツメは確信した。

 そこからは仲間を探した。ゲレオールに出会い、信頼できる仲間が増え、やがて大きな革命軍となった。国の人数を考えればまだ少ないが、それでも五人程度なら倒せるはずの人数がアカツメの下に集まった。

 

 だが、その五人――五芒星もただ国を乗っ取って何もしていないわけではなかった。

 いつの間にかさらに十二支というそれぞれが特殊な能力を持つ漢字を従え、他国に頻繁に戦争を仕掛けていた。

 戦争を仕掛けるタイミングは上手く、十分に休みを与えられ状態を整え、相手が油断している隙に攻め入った。

 戦場では5人と十二の漢字が暴れ、時折王が召喚するドラゴンは敵国の兵士を燃やし、凍らし、感電させ、土に埋め、切り刻み、その咢で噛み食らった。

 いくら人数を集めようとも質が違った。アカツメも仲間を集める途中で闘う技術を身に着けた。だがそれでも五芒星を一人か二人、相手にするので精一杯だろう。残りを革命軍の仲間が抑えられるだろうか。

 そんな絶望めいた日々の中、またも戦争が行われると噂になった。

 攻め入る国は隣の国のスルドという国であった。その国には三騎士という三人の強い者がおり、戦争は苛烈になるだろう、誰もがそう予感していた。

 このままただ見ているわけにはいかない。せめて五芒星の一人でも倒し、次につなげなくては。そう思い革命を行おうとした矢先であった。

 アカツメが最も出入りする隠れ家に女性が突如現れた。

 アネモネと名乗るその女性は仲間がベム国で闘っている可能性が高いと言い、さらにはその仲間はあの十二支を何人か倒しているとも言う。

 一か八かの作戦が、成功の兆しへと変わってきた。

 

 この国を変え、あの日聞くことができなかったフェリシーの伝えたい気持ちを聞く、そのためにアカツメは即座に革命を決断した。






「……こうして三人で闘うのもあまりなかったな。いつも通り、俺とゲレオールが前に出る。フェリシーは後ろで援護をしてくれ」


「おう!」


「はい!」


 ゲレオールが鋸を、フェリシーが杖を構える。


「おおっ!」


 ゲレオールが鋸でウリノームの振るう骨を捌く。力技ではあるが、その勢いでウリノームはよろける。


「もらった!」


 ウリノームの身体へと鋸が斬りつける。

 当然、骨でつくられた外骨格がその鋸を阻む。だが、ゲレオールは鋸を引き、骨を削り斬る。


「今だ、やれ!」


「はい!ファイアーボム」


 ゲレオールは深追いすることはせず、すぐさま横へ飛ぶ。

 そこへフェリシーの火魔法が飛んでくる。

 魔法はウリノームへと当たると爆発する。


「……やったか?」


 少なくとも外骨格の内側で魔法は爆発したはずだ。まともに当たれば焼け、爆発の威力で吹っ飛んでいる。

 だが、それでも五芒星の一角はそう簡単に倒れない。


「良い攻撃だ。だが、俺の骨が外に出てるのだけといつ言った?」


 外骨格から覗くその内部にはさらに二重、三重の骨が身体を覆っているのが見えた。


「さて、そこでただ見ているリーダーは闘わねえのか?お前の仲間が死んじまうぞ?」


 アカツメはゲレオールとフェリシーの攻撃を見てウリノームへの突破口を探っていた。

 ただ見ているだけではない。骨剣を捌きながらであった。

 そして一つの策を思いついた。


「二人とも、合図をしたら叫んでくれ!」


「……あれか!」


「分かりました!」


 すぐさまアカツメの行動を察知して、ゲレオールとフェリシーは頷く。


「……?何をしようとしているか知らんが、俺の守りの骨を一つしか壊せていないやつが俺を倒せるわけがないだろ」


 そう言ってウリノームは骨剣を振るう。すでに削られた外骨格も修復されている。


「……今だ!ア―――――!」


「ぐらぁぁぁあ!」


「アアアアァァァァ‼」


 アカツメの剣が骨剣を受け止めると同時に三人は叫ぶ。

 

 その叫びは大きな音となり、アカツメの剣へと集中する。

 アカツメの剣へと集まった音は骨剣を伝わり、ウリノームへと辿り着く。


「ぐわっ⁉」


 手から音が伝わりウリノームはその衝撃で思わず骨剣を落とす。


「ここだ!」


 アカツメはウリノームの頭を掴むと再び声を発し、音をウリノームの頭に送る。


 音の衝撃は骨を通してウリノームの内部へと伝わり、脳を揺らす。


「か……か、か……」


 全身を骨で覆っているが、耳があるだろう箇所から血を流しウリノームは倒れた。


「一応保険はかけておいたがどうやら無駄に終わったか……」


 アカツメは念のため骨剣を遠くへと蹴飛ばす。


「フェリシー、ゲレオールありがとう、助かった」


 アカツメが二人にお礼を言ったその時、地面から骨が突き出した。


「なっ⁉」


「馬鹿野郎!」

 

 アカツメが骨に貫かれるその瞬間、アカツメは突き飛ばされた。


「ゲレオールさん⁉」


 アカツメを突き飛ばしたゲレオールはその腹部を地面から突き出た骨に貫かれていた。


「出し惜しみはしねえと言ったな。あれは本当だ。これは理性を捨てなければ使えない、本気ではなく狂気の力だ」


 いつの間にか立ち上がっていたウリノームの全身からは骨が全方向へと飛び出し、伸びていた。

 骨は目的もなくただ辺りを破壊していた。


「……じゃあな。俺が目を覚める頃にはお前らは死んでるだろうがな」


 そう言ってウリノームは意識を手放した。

 能力をただ暴走させる『狂骨遊戯』の奥の手とも言うべき能力であろうか。骨を自在に操るのではなく、暴走させることでさらに骨を強固にし暴れさせる。


「……フェリシー、ゲレオールをどこか遠くへ。こいつは俺が……いや俺たちが相手をする」


「は、はい!……え?でも、アカツメさん一人じゃ……?」


 俺たち、の意味が分からなかったのだろう。ゲレオールを引きずり運びながらもフェリシーは混乱する。


「いや、さっきアネモネさんに頼んでおいた。再び仲間を集結させるように」


 そう言ってアカツメは声を張り上げる。


「ここに、いるのは、敵だ!国を、愛し、国を、守りたいならば、声を張れ!俺に、音を、届けてくれ!敵を、倒すのは、俺たちだ‼」


 その声は街中へと広まる。

 まだ革命軍へと入っていない者、倒れ伏している者、闘うことはできない年齢の者へと。

 だがそれでも国を守るため人々は声を上げる。国を守るために。


「「「「「「「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉ‼‼‼‼‼」」」」」」」」」」


 その声はアカツメへと確かに届いた。


「『協奏』」


 『奏』という漢字。

それはアカツメが信頼する仲間がいてこそ使える漢字。

 仲間の声を集め、一つに束ね、より大きな声とする能力。

 あまり闘いには向いていないと思っていた。声を大きくしても圧倒的な実力差には響かないとどこかで諦めていたから。

 だが、今は違う。仲間の声が一つになり強大な敵へと届く。


 アカツメは伸びてくる骨の一つへと触れる。


「『全音』」

 

 骨を伝わり、国民の声はウリノームの骨を完全に破壊し、本体を曝け出した。


「これで終わりだ!」


 ウリノームの身体に拳を入れ、直接ウリノームの心臓を、脳を振動で揺らし、骨を砕く。

 

 骨に守られていたウリノームその中身を出され、中の骨を砕かれ死亡した。


「……俺も疲れた。後は任せたよ、アネモネさんの仲間たち」


 仲間すべての声を一度にその身体に受け入れたアカツメはその衝撃で倒れる。

 

 一人で強靭な力を振るう骨使いと仲間すべての声で闘う音使いの闘いはここに終わった。





【神の語り】

「アカツメはまだ『音』と『奏』をそれぞれ一つずつしか能力を出していないが、二つ目の能力は持っているのか?」


「ええ、もちろん持っていますよ。この闘いも使っていればもっと楽に勝てたと思います」


「ならばなぜ使わなかったんだ?敵を侮っていたわけでもあるまい」


「それは、強力な能力ゆえに使う場所を選ぶからですね。彼は街を守りたいから街を壊すその能力は使えなかったんですよ。まあいずれ使う機会も来るでしょう」


「ふむ……では次は謎の侵入者だったか?そいつらの闘いだな」


「はい!では侵入者vsウァルマーの闘いですね!」


バレンタインとか日本の悪しき習慣ですよね

まったく、誰得なんだ!

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