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59話 崩れぬ悪意

お、ブクマ増えてる

嬉しいです


「おそらく他のみなも城を目指しているとは思うのだが……」


 イチイが転移された場所は他の仲間たちよりも一番城に遠い場所であった。それもそのはずでイチイは街の土地勘がなかったため分からなかったが、実は門のすぐそばへの転移だったため周りをよく見れば門のそばだと気づけたはずであった。

だが、イチイは後ろを振り返らず、ただ前だけを見ていた。おそらくあの城が五芒星のいる場所。ならば他の仲間もここを目指すだろうと。


 ベム国はそれほど大きくない。五芒星と十二支の武力だけで近年のし上がってきた国なのだから。しかもここはベム国のほんの一部の街である。だがそれでもあまり足の速いほうでないイチイでは5時間ほどはかかってしまう距離だ。


 すでに二時間は走っている。だが、一向に近づいている様子はない。街の様子に変化はなく、同じ家、建物が並んでいてそれも距離感を狂わす原因になっているのかもしれない。


「む?」


 走っているうちに街並みが変わってきた。街並みというよりも街の様子が、かもしれない。

 右手に見えている家の数軒が崩壊しているのだ。だが、人影はなくそこには誰もいない。

レンガたち一行は気づいていなかったが、実は街の人のほとんどはレンガたちが街に入った気配を感じ外れのほうまで避難していたのだ。無理やり戦争に駆り出され、戦地で逃げ回ったことで身に着いた彼らの唯一のスキルのようなものだ。


「老朽化で崩れたわけではなさそうだが……どうしたものか。私たちは決してここの住民の敵ではない。もし十二支や五芒星の仕業だとしたら放ってはおけまい」


 敵国の人間であっても敵対していないならそれは敵ではない。騎士として、一人の人間としてイチイは敵以外の全てを救う道を選んだ。助けを求めるものは敵ではない。弱者も強者も困っているなら等しく救うべきなのだ。



 イチイは念のため自分に『凝固』を使う。何があろうとも不意を突かれようとも一撃くらいは防げる。そして一撃を防げさえすればイチイには相手を倒す術がいくつもある。


「これは……何かをぶつけられて壊れたものではないな」


 崩れているというのに地面に破片さえ落ちていないのだ。無事な部分とまるでそこから先を何かに削り取られたかのように。


 と、後ろから殺気を感じ、イチイは『凝固』を最大限に使いながら振り向く。

 

「……ぐっ!」


 振り向く途中に鞭が飛んできたのが見えたためイチイは剣で受け止めるが、受けた瞬間違和感を感じ剣にも『凝固』を使う。


「中々硬えじゃねえか。ヒャハハ、壊しがいがありそうだ」


 鞭を引き戻した先には男が立っていた。服を緩く来ており今にも脱げそうなほどのもはやただ巻いているだけのような着こなしをする男はまだ若い金髪の男であった。


「ただ硬いだけじゃねえよな?俺の能力は防御力なんざ無視して壊すからよ。それが『崩』の『崩化』だからよ」


「この家は壊されたのではなく、崩されたということか」


 分子を崩し分解しすべての防御力を無視して攻撃できる『崩』の漢字。どんな人間でも生物でも鉱石でもこれを防ぐことはできないだろう。だがイチイの能力の『凝固』は防御力をただ上げるのではなく、身体を固めているのだ。身体を、分子を固めているため『崩化』で攻撃されても『凝固』と相殺されるのみ。


「私はスルドの三騎士の一人、イチイだ。貴様はベムの者だろう?名を名乗れ」


「スルドの三騎士だって?ヒャッハッハ!俺もついこないだまでスルドのあちこちにいたんだぜ。まあ居づらくなったとこにベムに勧誘されてこっちに来たんだけどな」


「スルドの者か。なぜベムに来た。貴様も故郷を無くすかもしれないのだぞ」


「スルドが無くなる?いいなそれ。俺はよお、スルドに指名手配されちまってんだ。あんな国無くなっちまったほうが俺にとっては好都合だぜ。ああ、言い忘れてたな。俺の名前はインフォルトだ。三騎士ならもちろんこの名前に聞き覚えあるよな?」


 インフォルト、それはスルドのあちこちで大量殺人を起こした犯人の名前のはずであった。だが、指名手配になってもインフォルトを追っていた冒険者、国の衛兵は誰もが帰ってこなかった。遺体さえ残らなかったため危険度が上がりやがて高ランクの冒険者に仕事が回ったがそのときにはどこかへと逃げてしまっていた。


「俺はこの国では五芒星ってのらしいぜ。指名手配犯が今やこの国の幹部だ。人を殺して楽しんで偉くなれるとはいい国だ」


「……そのような思考の持ち主とはな。ただで済むと思うなよ?貴様は国に連れて帰り償うべき罪を償ってもらう」


「優しいねえ、こんな俺を捕まえるだけだなんて。俺はもちろん殺しを楽しまさせてもらうぜえ!」









【城内にて】

「調子はどうだ?『亥』よ」


「そうっすね、相手方のほとんどが闘い始めたと思いますよ。俺の能力で」


「『亥』よ、貴様の能力はこういう戦意を煽るのには向いているが王に対して少し不敬な態度ではないか?もう少し敬った話し方をしたらどうだ」


 現在、王間にいるのは五芒星の頂点である王、五芒星の一人ウァルマー、十二支の『亥』である。他にも城内には十二支が幾人か潜んでいる。また、王には切り札ともいえる漢字を所有していた。

十二支が幾人かやられたようだが今回の戦も勝利に間違いなし。弱らせた敵を自分の物にできればさらなる戦力拡大を見込めるはずだ。


「ふはは、笑いが止まらぬな。生き残った者はさらに強くなり、敗者となったやつらはすべて俺の物となる。これが戦争、だから止められぬ」


 王は今後の計画をたてさらに笑う。それを見てウァルマーは微笑み、『亥』は何ともしがたい表情をつくる。王間にはしばらく笑い声だけが響いていた。


これでとりあえず闘いの準備は終わったかな?

あとは三つかたずけてボス戦にしようか

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