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58話 『酉』

あ、『酉』は出オチ以下の存在ですので

「――というわけなのですが」


 アネモネはこれまでの経緯――ベム国に来た理由をアカツメら反乱軍に説明した。レンガたち仲間と来たが門のところで謎の老人の能力でここに飛ばされてしまったところまで。


「(おかしいわね、何で『伝達』を使えないのかしら。みんなとも連絡を取れるし、この人たちに事情を説明するのも楽だったんだけど……)」


「何を戸惑っているんだ?」


 アカツメに不意を突かれる質問をされた。アネモネとて元は貴族令嬢だ。多少は表情を隠せるし、他人に動揺を見せないようにすることは学んだ。最も仲間の前では隠し切れないことも多いのだが。


「いえ、ちょっと私の能力が使えなくて仲間と連絡が取れないだけですわ……」


 アネモネは連絡が取れないだけ、というがこの敵陣の中で仲間を連絡を取れる状況は普通では考えられない。闘える能力ではないが、あまり見ない能力であり貴重な能力であろう。

アカツメはそれを、特に隠すこともなくこうして知らぬ人間に話すアネモネを、それを普通としているだろう彼女の仲間をどこか異様に思う。

 だがそれに触れないことも反乱軍のリーダーたる資質の一つだろう。アカツメは他の、もっと有用なベム国に対する情報の交換を行う。


「能力が使えない、か。十二支は知っているな?そいつらの一人に敵の能力を無効化するやつがいるらしい。ちょっと待っててくれ」


 アカツメはそのままじっと黙ったまま耳を澄ませる。ほかの反乱軍の仲間も何をしているのかわかっているようで身じろぎ一つしない。


「……」


 アネモネも、私も黙っていたほうが良さそうねと同じく口を開かず待ち続ける。


「…………そこだ!」


 アカツメは人気の少ない路地裏のさらに奥を指さす。すかさず反乱軍の者数名がそこへ走って行き、1分後、悲鳴とともに光が空へと飛んで行った。


「リーダー、『酉』を撃破しやしたぜ!」


「やっと倒せました!こいつは強くはないですが厄介なやつでしたからね!」


 十二支の『酉』を倒したことを二人の男女が報告してくる。男はアカツメを同程度の年齢で馬鹿でかい鋸を両手に持ち、女はまだ10代半ばで杖を持っている。おそらく魔法使いであろう。

 男はゲレオールと言い、反乱軍の副リーダーを務めている。アカツメと共に反乱軍をつくった仲である。

 女はフェリシーと言い、アカツメが幼いころより面倒を見てきた妹のような存在である。

 アカツメを除けば反乱軍の実働隊のトップの実力を持つ二人は互いに仲が悪いがアカツメに心酔しているという点で共感できるものがあるのか、一人より二人で闘わせた方が強い。


「よくやってくれた。十二支はそれぞれ特殊な能力を持っていることが多い。倒せるときには倒せておかないと」


「ずいぶんと耳が良いんですのね。私には何も聞こえませんでしたわよ」


 何も聞こえないというのは敵の気配だ。あちこちからカサコソと物音はしていたがアネモネにはそれがどこから何の音が聞こえているのかすらわからなかった。ましてここに、相手にとっても敵陣であるこの場所に敵が潜んでいたことなど想像だにしてなかった。


「俺は『音』を所有しているから、周りの音は良く聞こえるんだ。悪いが君の心音も聞かせてもらったよ。嘘はついていないようだから信用させてもらうよ」


 アカツメの所有する漢字である『音』――その『音源』の能力はすべての音階の音を出し、どんな音でも聞きわける。だが、普段からその能力を仕様するわけにはいかない。脳や耳への負担が激しく、ここぞというときにしか使えないのである。


「例えばこんなふうにも使えるんだ……どうかしら、私の声は?」


 アカツメの声がアネモネと全く同じものとなる。


「……こういうときどんなリアクションをとればいいのか分からなくなってしまいますわね」


自分の声というものは口から発せられた音と骨を伝わった音が合わさって自分の耳に入る。アカツメが単にアネモネの声を出してもアネモネは違和感のある声が聞こえるだけだが、アカツメはそれを考慮してアネモネに頭蓋骨で伝わるであろうはずの音も足した声を出した。もちろんアネモネ以外にはアネモネと同じ声に聞こえないが、まわりはみなその種を知っているものばかりだ。またやってるよ、と受け入れている。


「なんだ、あんまし驚いてくれなかったか。ゲレオールなんか驚きすぎて飛び上がっちまったのにな」


「そうだったんですか⁉ゲレオールって普段は厳つい顔してるのに……怖がりなんだ。フフフッ」


 すかさずフェリシーが煽るが、それはいつものこと。リーダーは公平でなければならない。


「まあフェリシーなんかしばらく俺に近づいてくれなかったもんな」


「ちょ、ちょっと‼それは言わないでくださいって言ったじゃないですか⁉しかもそれ私が5歳のときですよ」


 まさかじぶんの秘密までも暴露されるとは思ってもみなかったフェリシーは慌てるが時はすでに遅い。後ろにはニマニマとしたゲレオールが待ち構えていた。


「まあまあリーダー。それ以上やるとまたフェリシーが近づかなくなってしまいますよ。なんてったって……だめだ、俺も笑っちまう、イヒヒヒ」


 ゲレオールは腹を抱えて笑う。先ほど自分が飛び上がって驚いたと暴露されたのを忘れているかのように。実はフェリシーのことを話題に挙げて自分の話題を無くそうとしているだけなのだが。


「まあ、こんなメンバーでよければ俺たちが力を貸そう。というか、俺たちが数日後にはこの国にクーデターを起こすのは知っていたんだよな?」


「ええ、知っていますわよ。あなた方に頼るのが良い、と倒した十二支の方々が言ってましたから」


「そうか十二支が……やはりあいつらも操られていると考えたほうがいいのか。……と、それよりもクーデターの件だがな、実はもう準備は整っているんだ」


「本当ですの⁉」


「ああ、そして君達の戦力を無駄にするわけにはいかない。むしろこちらから共同戦線を申し込ませてもらいたいくらいだ。ここで俺たちもベム国を叩かせてもらう」


 アカツメは十二支を幾人も倒したアネモネたちのパーティーを高く評価していた。今ベムに闘いを挑まず、この者たちが負けてしまい、また敵が回復したころに闘いを挑むような馬鹿な真似はできない。


「みんな、すぐにでも行くぞ!今こそ戦争のない平和な国を取り戻そう!」


 この場にいる反乱軍の者たちが立ち上がる。反乱軍にいる人間はベム国の国民1000ほどに対しその十分の一である。だが、五芒星の洗脳を免れたみなが強靭な精神力を持つ猛者である。老いていようが若すぎようが魔法や弓を使い闘う。老若男女バラバラな彼らだが意思は統一されていた。




 全員が立ち上がり、いざ城を目指そうとしたとき“そいつ”はやってきた。


「リーダー大変です!入り口にて……」


 今反乱軍がいるのは通路を巧妙に隠し密室に近くしているような場所である。入り口には何人か見張りを置き、いつでも迎撃または逃げ出せるようになっていた。そのような場所が街にはいくつかあった。

 入り口で何か物音が聞こえ見張りが異常を知らせてきたと同時にその見張りは身体を何か白い棒で串刺しにされた。運よく急所を外したらしく、急いで治療をすれば命は助かりそうな傷である。


「お、ここにいたのか。お前、アカツメだろ?探したぞ」


 入り口を隠すように置いてあった廃材が一瞬でどかされ大男が現れる。


「いかにも、俺がアカツメだが、そちらさんはベム国の人間だよな?」


「そうだ。俺は五芒星の一角のウリノームだ」


「それで?俺に何か用かい?まあ分かってはいるけどね。見張りの彼にしてくれた礼も含めただで帰れるとは思うなよ?」


「そいつは冗談が過ぎるな。なにせここに来るまでいくつ外れを引かされたことか。ほれ、この通り。ひーふーみー……4つってとこか」


 ウリノームは四つの丸い物体を投げ捨てる。それはそれぞれの反乱軍の隠れ家を任せた者たちの頭部であった。


「……こいつらを殺したのはお前か?」


 それを目にし、アカツメの表情が変わる。今までは緊張感を無くし、できるだけ平静を保っていた彼であったが、仲間の死体をもてあそばれてスイッチが入ったらしい。


「お前の居場所を聞こうとして抵抗されちまったもんだからしょうがねえだろ。もとよりボスの能力が効かないやつらは生きていても意味がねえのにな、ボスは面白いから生かしておけって言ってたんだぜ。それじゃ退屈だって俺が言ったら少しだけ殺す許しを得たんだ」


 反乱軍の存在を知っているということは予測できていた。だがなぜ放っておかれているのかまでは予測できなかった。ましていつまでも放っておかれるはずはないと分かっていたはずなのに。


「……外へ出ろ。お前も俺を殺せとか言われてここに来たんだろ?なら相手してやるよ!」


「ああ、お前を殺すのは俺の仕事だ。だが勘違いしているようだな」


 ウリノームは両手の指を広げそれらを反乱軍に向ける。


「俺が命じられたのは抵抗するやつを殺せ、だ。お前らの存在そのものがこの国に逆らってるんだよなあ」


 ウリノームの指からまたも白い小石ほどの大きさの物体が発射される。白い物体――それは骨であった。ウリノームは『骨』を所有する保漢者、骨を操り闘う者である。


「……だから、俺が闘うって言ってんだろうが!」


 骨は反乱軍の者たちに当たる寸前、何かに当たったわけでもないのに空中で砕け散った。

 そしてウリノームは何かに弾き飛ばされるかのように隠れ家の外へと吹っ飛んでいった。


「とりあえずてめえを殺したあとに色々考えるか」


 仲間の死について考えていなかったわけではない。ただ、それを想像するのと実際に経験するのとでは全然違っていただけである。


「てめえが五芒星なら丁度いい。俺の力がてめえらに通じるか試させてもらう」




 『音』の衝撃を操る音使いアカツメと『骨』を飛ばし操る骨使いウリノームの闘いが始まった。



ちょっと眠いんで『酉』の能力はざっとだけ。今度改めてちゃんと書いときますんで。

『酉』の能力は能力の無効化です。どんな敵にでも通じますが一人のみ。戦闘能力はないに等しい代わりに高い隠密行動をとれます

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