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57話 三人寄ればきっと強い

こっちではお久しぶりです

 俺とハド爺は城を目指しひたすら走る。走る。走る。……1時間ほど走っただろうか、少し息が乱れてきた。横を見るとハド爺も少し苦しそうだ。城までは近くなってきているがこのままだと城に着いたときには体力がかなり減ってしまう。ハド爺と目で合図をするとハド爺も頷く。

 俺とハド爺はそのままスピードを落とし、歩き始める。


「半分以上は来たよな?」


「あと少しじゃ。ここからは慎重に行かんとの」


 どこに敵が潜んでいるのかわからない。すぐにでも城に辿り着き仲間を待ちたいが急いだあまり敵に見つかって足止めされては本末転倒だ。


「……それにしても誰もいないの」


「そうだな、住人はどこにいったんだ?」


 走っているときから思っていたが、人一人として見ない。普段から家の中から出てこないのか?いや、それでも露天商がないのもおかしいか。


「まあそれも五芒星とやらが何かしておるのかもしれん。ともあれ、走りやすくて良かったわい」


「それもそうだな。下手に人が多いよりはいいか」


 ただ少なすぎるのもなあ……誰か兵士なり敵に近いやつらが来たら目立っちゃうんだよな。


 そのまま城へとさらに近づき、目視で城門が見えてきた。城門には三人の兵士が居り、なにやら話し込んでいる。

 俺たちが近づくと気づいたようで、


「やや、何やつ!」


「名を名乗れ!」


「五芒星様方に用事か?」


 城門にいた三人の兵士が矢継ぎ早に訪ねてくる。この三人、背丈も同じくらいで声も似ているから遠めだと見分けがつかないな。兄弟なのか疑うほどに似ている。


「ハド爺、どうする?このまま名前を言うか、それとも適当な名前を言って城に入って行くか」


「理想はどこからか忍び込むことなんじゃがの……適当な名前を言っておくか」


 だが、もう見つかってしまっている。どうにかやり過ごして城の裏手からでも入れないものかな。だが、相談する時間が少し長かったようだ。兵士が怪しそうにこちらを見ている。


「何をコソコソしゃべっておる!」


「怪しいやつめ!」


「ひっ捕らえるとしよう!」


 三人がこちらにやってくる。


「しょうがないのう。じゃが普通の兵士なら儂らの敵ではない。少し眠っておいてもらおうかの」


「そうするか。体力は温存したかったんだけどな」


 俺は剣を鞘に入れたまま、ハド爺は拳を構える。漢字であるならともかく、普通の人間はあまり積極的に殺したくはない。


「ハド爺、二人を任せてもいいか?剣で殺さないというのは少し難しい」


「そうじゃの。儂のほうが敵を気絶させやすいしの」


 フォルを使おうかと思ったが、とことん節約したい。それに五芒星と闘うことになったときのために手の内は隠しておきたい。





「いくぞ!俺の『鍵』の能力、鍵を開ける『開錠』!」


「大量のイワシを呼び出す『鰯』の能力、『鰯群』!」


「攻撃なら俺に任せろ!『痺』が誇る『痺手』!俺の手に触れれば最後、お前たちは痺れて動きが鈍る」


 三人の兵士たちはそれぞれ漢字の能力を使ってくる。三人とも保漢者だったのか。だが、何というか……しょぼい。

鍵を開けたところで俺たちがどうしたということもない。この地上でイワシを呼び出されたところでほら、地面でピチピチ跳ねてるだけじゃないか。そして少しマシそうな『痺』の能力……動きが鈍るだけか。しかも手に触れなければ発動しないとか、それ言わなきゃ良かったんじゃないのか?

何にせよ自分から能力の説明をするなんてこいつら闘いなれていないというか常識に欠けていそうだな。


「……もう良いかの?」


 ハド爺も呆れている。


「甘く見ているようだぜ。お前の『開錠』の能力、見せてやれ!」


「おう!『開錠』!」


 一応身構えるが、何も起きない。……が、何も起きた様子はない。ともあれ、こいつらに近づかなくてはな。俺は剣を鞘に納め三人に近づく。ハド爺も同様に構えを解いている。

 ええと、門から入って五芒星に会うために俺たちはここにいて、その前にこの兵士たちに挨拶をして……駄目だ、頭が上手く働かない。


「よし、どうやらあいつらにも効いているようだぞ、お前の能力が」


「心の鍵さえ開ける『開錠』。これで無防備にならなかったやつはいないぜ!」


「そして俺が空から『鰯群』」


 いてっ。空からイワシが降ってきた。どうやら敵の能力のようだ。はやくあいつらのとこにいかないと。


「『鰯群』で弱らせたとこを頼むぜ」


「おう、『痺手』で止めだ!」


 あの手に握手すればきっとこいつらもわかってくれるぞ。そして門の中に入らせてもらおう。


「さあさあさあ!近づいてきたぜ」


「結局、こいつら何者だったんだ?よくわからないまま『開錠』を使っちまったけど」


「なら名前を聞けばいいだろ?お前の能力なら何でも思いのままじゃねえか」


「そうそう、それでこいつ好きなやつに能力かけて告ったんだけど、結果は他の好きなやつがいるってわかっただけ。笑っちまうよな」


「うるせえよ!無防備になったところで好きになってもらえるわけじゃないんだよ。その代り、おいしく頂いたけどな」


「おいおい、何で呼んでくれなかったんだよ」


 あと数歩であいつらの元へ辿り着く。あと3歩、2歩……。


「さあ、二人とも俺の右手と左手にそれぞれ触り……ぶべらっ!」


 突如飛んできた瓦礫に三人はまとめて当たり吹っ飛ばされていった。


「……俺は何をしてたんだ!」


「あれだけ気をつけろと言った儂までもがこんなザマとはの……」


 吹っ飛ばされた三人は気絶している。心を無防備にさせる『開錠』か、その能力が解けてもとに戻ったようだが……誰がこの瓦礫を?





「チッ!これも防がれたか。だが、これならどうだあ」


「チンピラ、あんまし家を壊すなよ。人が住んでたらどうするんだ」


 馬鹿でかい斧を右手に、家の壁の一部らしき瓦礫を左手に持った男が、。そして隣には仲間を守る大きな盾を持つ男――チンピラとシダであった。


「お前ら、どうしてここに⁉」


「ああ?お、レンガじゃねえか。お前こそどうしてこんなとこに」


「チンピラ……お前この国に来た理由を忘れたのか。まあいい、レンガ、どうも困ってるみたいだな。勝手に助けさせてもらうぜ」


 ……俺がベム国に向かったことを聞いてすぐ?シダの『行』ならすぐか。けど、正直かなり嬉しい。


「まあその話は後だ。今はあのやべえのを相手にしなきゃならねえからな」


 瓦礫が飛んできた方向、そこから一人の男が歩いてきた。背丈は少し小柄だ。だが、感じるプレッシャーは半端ない。あの鬼族族長を相手にしたときほどだ。


「あいつは五芒星とかいうやつの一人らしいんだが、お前の敵なんだってな」


 ……ついに五芒星か。これまでの十二支も十分強敵だったがそれ以上なんだろう。ぶっちゃけ戦争のほとんどがこいつらがいたからこそ勝ったとか。




「二人増えているな。爺さんもいるがその気配、強敵に違いない。まずは俺から名乗ろう。俺は五芒星の一角を司るジェドだ。俺の武器はこの拳。『拳』と『殴』で極限まで鍛えられたこの拳ですべてを殴り伏せてきた。貴様らもその資格に値すると判断したが?」


「俺はレンガだ。五芒星だというなら話が早そうだ。お前らに呼ばれて俺たちはここに来た」


「儂はハド、ここにおるレンガを守るため、鍛えるため、そしてお主のような強敵と闘うためにここに参上した!」


 俺とハド爺は自分の名、ここに来た理由を述べる。

 それに対しジェドは答える。自慢の拳を構えて。


「俺はただ闘えと命じられてここにいる。ただ、強敵が来るかもしれないからと。そこのハドと言ったか、お前とも闘いたい。だが、先にこいつらを相手にしなければならない」


 ジェドはチンピラとシダを指して言う。


「貴様らも十分強敵だ。だが、四人全員と闘うのは俺も楽しめない。そして他の五芒星たちに恨まれそうだ。だから、レンガとハドは行って構わない。貴様らは他の五芒星に譲るとしよう。ここには五芒星の頂点にしてこの国の王が待っている」


 最も、俺もどこに他の五芒星がいるのか知らないんだけどな――最後にジェドはそう言い、俺とハド爺から目を離す。己の敵はチンピラとシダのみとでも言うように。


「というわけだ。レンガ、先に行ってろ。こいつの相手は俺たちだ。お前はこの城に用事があったんだろ?」


 仲間がどこにいるかわからない今、この城の門で待っていたほうが良いのは明らかだ。しかし、ここにいつまでもいて他の五芒星が集まってくるかもしれない。ならその前に王と話をつけたい。

 というか、さっきから思っていたがアネモネの『伝』はどうしたんだ?こういうときこそ使ってほしいんだが忘れるようなやつでもないだろうし……。


「悪い、先に行かせてもらうぞ。チンピラ、シダ。死ぬな……いや、勝てよ!」


「「おう!」」


 俺とハド爺なら五芒星でも十分相手ができるだろう。そして王もきっと……。


ここ最近は番外編書いてました。よければ読んでみてください。まだ修正してないんで読みづらいとは思うのでどこが読みづらいとかどんどん言ってください

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