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56話 『午』

あれですね。この小説、面白いんだけど文章力が残念くらいの評価が欲しいです。

文章力は自分でも残念なのはわかってるのでせめて、ね?

 下水道、それは入り組んだ迷路のようなものだ。カルミアは最初、過去に暮らしていた下水道と同じようなものだろうと、すぐに抜け出せるだろうと高を括っていたが、それは大きな間違いであった。行けども行けども同じ景色、同じ道を通っているのか新しい道なのかわからない。

思えば昔いた下水道は入り口である場所の近くに拠点を構えていた。そこからあまり深いところまでは行かなかったため下水道の歩き方など知る由もなかった。臭い、暗さは慣れているが、そこまでである。というか、臭いはそこまでひどくはないし明かりはわずかだがどこからか入ってきている。


「まあ適当に歩いていればそのうち出られるわよね」


 考えても無駄だと思いカルミアは何も考えずに歩くことに決めた。




 一時間歩くが景色は未だ変わらず下水道のままだ。


「ふんふふ~ん」


 カルミアは何も考えずに鼻歌を歌いながら歩く。下水道には様々なものが流れているが、ゴミらしきものは浮いていない。排水処理能力が高いのか、ゴミがあまり出されない国なのかわからない。だが、カルミアが一時間、歩いているうちに気分を害してしまうようなことはなかった。

 実際、カルミアがこれまで通ってきた分かれ道はどれも出口に繋がっていた。だが、なんとなく歩いていたカルミアはことごとく出口に繋がる道とは逆方向へと進んでしまい、結果彼女はさらに奥へと進んでしまう。そしてこの街での奥とは五芒星の住む城の真下を指す。五芒星の城の真下、そこが普通の場所であるはずがない。


 

 カルミアが曲がり角を曲がった時、前方にあった光が消え真っ暗になる。


「……?何よこれ」


 何があったのだろう、と上を見る。そこには顔があった。地味な縦長の顔で片目は潰れている。背はカルミアが小柄なことを考えても高めで2mを優に超えているだろう。


「お前は敵か?敵だとしても何でこんなところに……」


 この男が誰かは分らないが、ベム国の者だとすれば敵であると言ってもいいだろう。


「俺は十二支の七人目、『午』だ。敵ならめんどくさいが闘うか?」


 『午』は左足を引きずりながらこちらに向かってくる。よく見れば右腕もだらんとぶら下がって動いていない。怪我をしているのだろうか。これならば勝てる、そう思いカルミアは『午』に返答をする。


「ええ、そうよ!」


 『午』はため息をつきながらやれやれと首を振る。


「闘うはめになったか。本当にめんどくさい」


 『午』は背負っていた木の棒を手に持つ。それは先端に鎖がついており鎖の先には棘のついた鉄球がついていた。一般的にモーニングスターと呼ばれる投擲武器である。これなら足を引きずろうが片腕が動かなかろうが使える。


「いくぞ」


 『午』は左手で棒を振りかぶり、その勢いで鉄球を投げる。鉄球は『午』の力と遠心力ですさまじい勢いで飛んでくる。

だが、『午』が投擲する鉄球はカルミアに届かなかった。カルミアが何かをしたわけではない。高く投げすぎて天井にめり込んでしまったのだ。天井から鉄球を抜こうと『午』は鎖を引っ張るが力が強すぎてしまったのか、


「しまっ⁉」


 引っ張られた鉄球は危うく『午』に当たりそうになる。寸前で避けることができたが、満足に片足が動かない状態で次も避けられるかわからない。

 そしてその様子を見てカルミアは勝利を確信する。


(何だ、そんなに強くないのね)


 カルミアがこれまで十二支で闘ったのは『午』を除けば『卯』のみ。『子』は自分では闘っていないためどのくらい強いのかわからなかった。


「次はこっちから行くわね!『血液操作』」


 カルミアは自分の腕に傷をつけ、そこから血を流れさせる。 

カルミアの『血』の能力は『血増』と『血液操作』である。『血増』は自分の血液を増やし回復速度を上げる能力であり、『血液操作』は自分の血液を思うままに操る能力である。

カルミアは腕から流れる血が一定以上になったとき、その血で槍を作り上げた。『血液操作』で固めた血は鉄ほどの硬度になる。武器としては十分である。残った血はその場に浮かせておく。

傷は『血増』で治してしまうため痕すら残らない。


「飛んでけー!」


 血でできた槍を操作し、『午』へと飛ばす。『午』は避ける素振りをするが、足が思うよに動かず引きずっていた足に槍が当たる。


「ぐぅっ」


 これで増々『午』の動きは鈍るだろう。さらには先ほどの鉄球から敵の攻撃はこちらに届くかわからない。このまま決着は着くだろう。


「悪いわね。私はすっごく強いのよ。でもあんたがいくら弱くても弱い者いじめにならないようにしてあげるから安心してね!」

 

 カルミアにとっては侮辱ではなく、その言葉は親切心から出たものだった。だがその言葉を聞き『午』はピクリと動く。


「今、俺を馬鹿にしたか?」


 『午』は鉄球を再びカルミアに投げつける。今度は命中こそしなかったが天井には当たらずカルミアのすぐそばまで飛んできた。危ない危ないまぐれもあるんだから油断しないようにしないと、とカルミアは思いながら敵に対しては強がる。


「ふ、ふん!あんたの鉄球なんて100回投げても私には当たらないわよ!なにせあんた鉄球投げるの下手くそなんだから!」


 そこで『午』からビキリと音がした。


「また……また俺を馬鹿にしたなぁぁぁ‼」


 『午』は鎖を引っ張り返ってきた鉄球を右手で受け止める。そしてそのまま右手で鉄球を投げてきた。ちゃんと足の踏み込みを使った投げである。


「ちょっ、やばい!『血液操作』」


 槍を作るのに残っていたありったけの血で盾をつくる。血でつくられた盾は間に合い、鉄球を受け止めるがその衝撃で壊されてしまう。


(『血液操作』の弱点って一度固めた血はもう違うものに作れないってことなのよね……)


 カルミアがさらに攻撃するならば再び傷をつけ槍なり剣なりの武器をつくらなければならない。だが、その時間が今のカルミアにあるだろうか。


「ぐらぁぁぁぁ!」


 『午』はもはや人語を話さずただ鉄球を投げては引き戻すを繰り返している。カルミアは今度は受け止めるようなことはせずひたすら鉄球を避ける。完全には鉄球を避けられずカルミアの身体には傷ができていく。

だが、それがカルミアには攻撃の一手となった。もしこれがただの丸い鉄球ならばカルミアの身体には打撲ができていただろう。だがこの鉄球は棘がついている。それがカルミアの身体に傷をつけた。そして傷がつけばそこから血を出せる。


「ちょっと痛いけど、やるしかないわね」


 カルミアは『血液操作』で身体から流れる血の速さを操作し、短時間で大量の血を流れさせる。だが身体の小さいカルミアにはそれはかなりの負担だ。ギリギリのところで『血増』で補うが、貧血に近い状態となる。


「だけどこれで十分ね」


 大量の血で作りあげた大量の武器と盾、それがカルミアの周囲に浮いていた。カルミアは懐から出した水筒を取り出す。その水筒には日ごろからレンガの血を入れており、その血を飲むことでカルミアの身体能力は上がり、身体にも血が戻っていく。


「ぐぎゃぁぁ!」


 『午』の投げつける鉄球はいくつかある盾に防がれる。盾は壊れてしまうがまだ大量に作られているので問題はない。


「悪いわね。あんたにとって私は相性が悪かったみたい。でも安心して、あんたは強かったわよ、私ほどじゃなかったみたいだけどね!」


 ぶしゅっ。『午』の身体から音が聞こえたのは三度目だ。鉄球を投げるのは無駄だと判断したのか『午』は走り出した。そのまま走りながら鉄球で槍や剣を殴り、盾を蹴飛ばしている。


「……あれ?」


 先ほどから違和感はあった。『午』が鉄球を右手で受け止めたこと、鉄球を投げるのに足を使っていたこと、そして今回は走ったことだ。右手をぶら下げ左足を引きずっているならばできないことだ。よく見ると段々大きくなってもいた。最初は180㎝あった『午』は今は2mを優に超えている。


 もはや『午』に理性は残っていないので、カルミアは『午』の能力を知ることはできないが、『午』の能力は馬鹿にされることで強くなる、である。正確には沸点の低い『午』が馬鹿にされ怒ることで火事場の馬鹿力を出すとでも言うべきか。傷があろうとも関係ない。痛みも何もかもを無視し無理やり動かす。そもそもで『午』の傷は『午』としてもとから持っていたもののため痛みがあるかはわからない。相手に馬鹿にされるためにわざとつけた合ったのかもしれない。


「よくわからないけど怪我を治せるってことかしら?……でもそれよりもこの力よね」


 鉄球で殴られた武器は弾き飛ばされただけでまだ形を保っているが蹴られた盾はことごとく壊されている。かなり無理をして血を出したためもう新しく盾を創ることは難しい。


「もう盾はないけどこれでも大丈夫かな。全部、飛んでけー!」


 カルミアは残っていた武器すべてを『午』に飛ばす。『午』は避けもせずすべて身体で受け止めながらただカルミア目掛け走って行く。カルミアも後ろに走りながら少しでも『午』との距離を離していたがやがて追い付かれてしまう。


「ふしゅぅぅぅぅ」


 『午』の足がカルミアを踏み潰す、その瞬間『午』の動きは止まった。


「ごふっ」


 『午』の口から血が流れそのまま静かに倒れた。


「……何とか間に合ったみたいね」


 カルミアの『血液操作』は固めなくても動かすことはできる。余らせてあった血を浮かせていたように。だからカルミアは作ってあった武器の表面に固めていない血を塗っておいた。『午』に刺さった槍や剣すべてに塗ってあったカルミアの血は『午』の身体に入り込み血管を流れ心臓に辿り着く。そして心臓部分でその血を槍に固め心臓を貫いた。

 もし『午』がほとんどの武器を避け、当たった武器が1.2本ならば血が少なすぎてたとえ槍にできたところで心臓を貫けるほどの大きさにならなかっただろう。もしくは即死するような傷にならなかっただろう。だが、『午』は避けることをせずただカルミアを目指した。理性があれば勝てたかもしれない。カルミアが言った通り相性だったのだろう。


「……また俺は正気を失っていたのか。娘よ、俺を手間をかけたな」


 『午』は光となりながらどうやら元の状態と戻ったようだ。


「別にいいわよ、そのくらい!それよりも出口知らない?さっきから迷ってるみたいなのよ」


 みたいではなく、完全にカルミアは道に迷っていた。


「……娘よ、ここから出たいのならその血で目印をつけて歩き回れ。いつかは辿り着くだろう」


「あ、そうね。ありがとう!」


 そうしてカルミアが地上に上がったのはこれより24時間後であった。


今日から時間あるときに今までの十二支の話の後書きのところにそれぞれの能力の説明をつけたしていきたいです(希望)。


『午』

能力名:侮辱

『午』を弱いと思い、馬鹿にしたとき『午』は怒り強くなる。それに応じて身体も大きくなるが、怒っているため理性は失う。質が悪いことに沸点が低いためちょっとしたことで怒るのと実際は馬鹿にしなくても『午』が馬鹿にされたと思ったら能力は発動する。

腕よりも足を使った攻撃のほうが強い。

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