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48話 『子』

バトルは楽しいなあ

【神視点】アマルの街にて

「お前ら聞いたか?レンガの野郎がベムとかいう国に連行されたらしいぞ!」


「え?さ、さあ……」


「そんな話聞いたことなかったですよ。どこから聞いてきたんです?」


「いや、あくまで噂なんだがな。ギルドのやつらも何だか言葉を濁していたし何かありそうだ」


「まさか行くんですか?」


「せっかく『村』から帰ってきたばかりなのに⁉」


 先日、『村』を攻略し、アマルの街に戻ってきたのは昨日のことである。ヤエムとセンダンが文句を言うのも無理はない。


「安心しろ、行くとしても俺だけだ。あの国は危ないらしいからな。お前らは家族がいるだろ?」


 センダンには祖父母が、ヤエムには弟妹がそれぞれ家で待っている。金になるかもわからないのにあまり死地に行かせるわけには行かない。


「あ、兄貴……」


「気を付けて行ってきてくださいね!」



「さて、どうやってベムに行くか……」


 なにせレンガたちがすでのベムに向かってしまっているのである。ここからベムまで向かうのは相当な日数がかかる。追い付いたときにレンガたちがどうなってしまっているかわからない。


「そういえば、移動系の漢字を所有しているやつがいたな。確かこの間の『鬼』のときに来ていたはずだ」


 そう思いついたチンピラはギルドに向かい移動系漢字の保漢者の情報を聞き出す。職員もレンガのことを心配していたため、助けに行くならということで教えてしまった。


「確かあいつだったな。いつもは取り巻きの女がいるらしいが今はいないみたいだ。ちょうどいい。おい、ちょっといいか?」


 チンピラが声をかけたのはシダである。『行』を所有している彼は場所さえわかればその場所へ移動が可能だ。


「お前は……確か『鬼』のときにいたやつだな。チンピラだったか?『鬼』に選ばれたとかいう……。何の用だ?」


「大した手間は取らせねえよ。俺をベムって国まで連れてってくれ。レンガを連れ戻しに行ってくる」


「レンガだと⁉あいつに何かあったのか?」


 チンピラは噂について話す。シダはしばらく静かに聞いていたが


「わかった。だがチンピラ、お前は一人で連れ戻せると思うのか?」


「それは……わからねえ。だが、あいつがこのまま死んでしまうことを考えたらな。あいつに勝つまで俺はあいつが死ぬのを許さねえ」


 シダはふっと笑い、


「そうか、ならば少し時間をくれ。あいつらに少し留守にすると言ってくるからな」


「そんなに時間はかからせないぞ?」


「一人で行くつもりなんだろう?レンガたちが死ぬかもしれない場所へ。俺もついていくさ」


「お前……」


「俺だってレンガが心配だ。だが、仲間は置いていかせてもらうがな」


「シダだったな。よろしく頼む」


「こちらこそ、あまり闘えないが、サポートは任せてくれ」


 ここに急遽、チンピラとシダのパーティーが結成された。といっても公式のパーティーではないのだが……・



【レンガ視点】

「ハド爺、大丈夫か⁉」


 ハド爺の足はネズミに噛まれ出血している。ネズミの大きさがそこまで大きくないため傷は深くはないとは思うが、あまり何度も噛まれるとそれもわからない。それに足だったからまだ良かったものの、これが喉や急所であったらと思うとゾッとする。


「大丈夫じゃ。じゃがどうも不可解な攻撃じゃの」


 ハド爺が攻撃しようとした瞬間、明らかにハド爺の動きは止まっていた。何かされたとしか思えない。


「知りたいですか?まあ知ったところで私の能力を止めることはできませんし、いいでしょう教えてさしあげましょう。私の能力は常に先手を取り続ける、そういう能力です。故にあなた方は何もできずに死んでいくのみ」


 相手の攻撃を食らってからでなければこちらも攻撃できないってことか。


「ふん、じゃがそれだけならば別に何でもない」


 再びハド爺がネズミに向かって拳を叩きつける。ネズミはその瞬間、能力を発動しハド爺の動きを止めた。ハド爺が止まっている間にネズミはハド爺に噛みつく。


「じゃが、それだけなのじゃろう?」


 噛まれた瞬間、ハド爺の硬直は治りネズミに拳を当てた。ネズミは吹っ飛び空中で消えた。


「これで終わりじゃ。噛まれえることをわかっていれば問題ない」


 どうやら俺たちの勝ちのようだ。


「ふっ。それはまだ早計ではないですか?」


 男はまだ余裕の態度をとっている。


「ハド爺、まだやつは何か隠しているみたいだぞ」


「そうじゃな。じゃが、もう辺りも暗い。まだあやつが見えるうちの勝負をつけんと」


 そう言ってハド爺は男に近づく。


「私が隠しているですって?ええ、隠していますよ。大量のネズミをね」


 男の懐、袖口、ズボンの裾から大量のネズミが出てくる。


「これらの攻撃をすべて受けてまだあなたは攻撃できますか?さあ、何十、何百、何千の歯に噛まれて死になさい!」


「ハド爺!避けてくれ!」


 だが、俺の声も虚しくハド爺の動きは止まり、そこにネズミは群がっていく。ハド爺がいた場所にはネズミしか見えなくなりあちこちからガリっガリッと音が聞こえる。


「そんな……師匠が……」


「よくも!」


「待て、まだ行くな。行ってもハド爺と同じ様になるだけだ」


 まずはハド爺をあそこから助ける手立てを見つけないと。


「ご主人様、見てください。ネズミたちが!」


 見ると大量のネズミがハド爺に群がって噛んでいるのだが、どれもあまり歯が刺さっていないように見える。誰かの能力か?いや、だがこんな能力使えるやつなんて……。


「『凝固』!……どうやら間に合ったみたいだな」


 声が聞こえそちらを見ると、村の方からイチイが走ってきていた。イチイはハド爺からネズミをはぎ取り、こちらに渡す。ネズミはイチイにも噛みつくが、イチイは何ともないようだ。


「暗くなっても戻る様子がなかったから来てみれば、敵のようだな」


「ああ、あのネズミは常に俺たちより先に攻撃ができる能力みたいだ」


「師匠!」


「大丈夫みたいです。ですが、一度下がって治療しますね」


「ああ、頼む。ここは俺がやる」


 おそらく俺のほうが相性がいいはずだ。俺とイチイ以外は村まで戻ってもらった。


「村に逃げても無駄ですよ。村人ごと殺してしまいますからね」


「黙れ。もうその能力は十分理解した。もうお前は俺に攻撃できない」


「ほう?ならばやってみなさい」


 ハド爺に群がっていたネズミが俺たちのほうへ向かってくる。


「イチイ、お前の能力はその硬化能力か?」


「ああ。私の漢字は『固』だ。あまり他人を固くするのはまだ苦手でな。先ほどもハド殿を完全には守り切れなかった」


「ならそのまま固くなっていてくれ。余裕があれば俺も固くしておいてもらえると助かる」


「了承した。して、レンガ殿はどうする?」


「もちろん、やつをぶった斬るのさ」


 こちらにネズミがやってくるのを見て、俺はフォルを召喚する。


「数には数だ。フォル、向かいうて」


 『子』のネズミと『鼠』が生み出したネズミであるフォルが衝突していく。だがフォルにも敵の能力は効いているみたいで、次々に噛まれていく。

身体の小さいフォルにはそれだけで致命傷だったみたいでどんどん消えていく。


「どうやら無駄であったみたいですねえ。しかもあなたのネズミは有限であったみたいですが、『子』の生み出すネズミは子孫繁栄を願ったもの。こんなものではありませんよ」


 消えていくフォルに反比例するかのように敵のネズミは増えていく。


「いいや、無駄じゃあなかったさ。おかげでお前のネズミは俺から注意をそらした」


「それが何だと言うんです?今から攻撃すればいいこと。どうせあなたは何もできない」


「いや、もう攻撃は終わってるんだ」


 俺の足元まで来ていたネズミが急にバタッと倒れた。俺はやつに近づき剣を振りかざす。俺が使づくことで男の足元にいたネズミまで倒れていく。


「……何をしたんですか?」


「空気よりもだいぶ重い毒を撒いた。ネズミが地面を這う限り生きるすべはない」


 『毒』で闘ったときにあいつが使っていた毒だ。今回は濃度よりもその重さを優先して生成した。


「……なるほど」


 やつは諦めたのかそのままネズミを出すこともなく俺に斬られた。

 男が言っていたとおり漢字であったようで男は光となった。


「ご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした」


「なんで漢字が国に従ってるんだ?」


「……それは五芒星の頂点である王が私たちを操っていたからです。気を付けてください。操られている漢字はまだいます。どうか、他の十二支も倒し、やつから解放してやってください」


「わかった」


「その願い、私らが叶えてみせる」


 俺とイチイが『子』に約束するとその光はどこかへ飛んでいってしまった。


「街へ戻るか」


「ところで、なぜ私は『固』を使っていたのだ?レンガ殿一人で十分であったのではないか?」


「いや、『毒』が効くか賭けだったし、もしまだ何かあったらの保険だな。イチイの能力で防げるなら防いでおきたかったし」


「……なるほど。まあ勝てたのだし何も言うことはないな」


 俺とイチイは村に戻り、治療が終わったハド爺や他の仲間に敵に操作系の保漢者がいることを伝えた。


「操作系か。やっかいなやつじゃな」


「ハド爺はどういう能力か知っているのか?」


「漢字にもよるが、一番嫌なところは仲間を敵にされてしまうことじゃな。まあ大抵は己より弱いものしか操れんし、保漢者自身は強くないことが多いから大丈夫なのじゃが……」


「だけど、相手は漢字を操っている。それが問題なんだろ?」


「そうじゃ。じゃがしばらくはベムに着かないから敵にも会わん。他の十二支とやらが来る可能性のほうが高い。そちらとの闘いに備えよう」


 今回の闘いで俺たちの中で一番強いハド爺がやられてしまった。


「儂はあのような集団相手では力が発揮しづらいのでな。次こそは任せてくれ」


 集団相手なら俺やアネモネがいる。要は相性なんだろう。


「ああ、相手を見て闘って行こう」


 『子』を倒したことによりますます敵意を持たれたかもしれない。だが、ベム国に行くしかないのだ。少しでも和解の可能性があるうちは。


まあ和解なんて作者がさせませんけどね!

やつらには闘ってもらわないと私が困るのだ……

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