44話 吸血
カルミアは金髪から銀髪へと変更させていただきます
「というわけで新しい仲間のカルミアだ。あと、今受けてるクエストの犯人だから、そこんとこよろしくな」
「カルミアよ!よろしくね!」
皆は一瞬だけ歓迎ムードになるが、すぐに
「はい⁉どういうこと(ですか)(じゃ)?」
と、三人は俺に説明を求める。まあ俺もスルーするきはなかったから、説明をする。ときおり足りない部分はカルミアが補足しながらで、その結果、俺も初耳の事実があったが。150年生きているうちに『吸』の能力で鑑定に近い能力が発現したそうだ。物体や人を見ただけでそれが発するエネルギーがなんとなくわかるそうだ。
「まあ証拠というかね、仲間になってくれたお礼よ!」
そう言ってカルミアはアイテムボックスからドサドサと何やら出す。それは何かの布やら、何かの蓋やら、櫛であった。そしてそのうちのいくつかが光りだすとサンとルナの前に向かって行った。サンの前には瓶が、ルナの前には鈴が向かい、そのまま二人の中に入って行った。サンの前では瓶の蓋があき中から液体が零れ出て、ルナの前では鈴がシャンと鳴った。
「どうやら二人に適性があったようね」
「これは漢字だったのか?」
「そうよ。ルナは鈴だったかしらね。サンの方は……何だったかしら?鑑定してみてくれる?」
-サン-
所有漢字:『矛』『雫』
所有スキル:闇魔法
状態異常:なし
特記事項:猫の獣人
-ルナ-
所有漢字:『盾』『鈴』
所有スキル:光魔法
状態異常:なし
特記事項:猫の獣人
サンには『雫』、ルナには『鈴』が追加されてるな。瓶の中に入っていたのは液体、というよりは一滴の雫というわけか。どうやったのかは漢字だからその辺は不思議ではないが。それよりもどうやってこんなのを持ち運べたんだ?
「これは漢字本体なのか?」
「そうね……漢字は攻略すれば保漢者に選ばれるか大聖堂に飛んでいくでしょ?私は飛んでいく寸前でアイテムボックスに入れることができるのよ。本来はそんなことできないんでしょうけど、これも『吸』のおかげかしらね。たまにお友達になってくれた人にこうして適性があるか確かめるために出すのよ。すぐにしまわなきゃいけないけどね」
そう言ってカルミアはまだ転がってる櫛やらをアイテムボックスに収納していく。あ、一個だけ飛んで行ってしまった。あれは簪だったかな?カルミアは少し涙目である。
「べ、別にいいわ!二人に適性がある漢字があってよかったのだもの!」
強がっているが目線は簪が飛んで行った方を向いている。思い入れのあった漢字なのだろうか。攻略はしていたみたいだし。
「カルミアありがとう!」
「これからもよろしくね!」
簪を名残惜しそうに見ていたカルミアだが、サンとルナに礼を言われ、こちらを向く。
「こちらこそよろしくね!みんな、一番大人なのは私なんだからどんどん頼ってね!」
「150歳だろうと見た目幼女に頼ることは少なそうだがな……。ちなみに俺たちは次に隣国に向かう予定なんだが、何か知ってることはあるか?」
「うーん……確かペムって国だったかしら。戦争ばっかりしてる国だからあまり行くのはおすすめしないわよ?行くなら国の中心じゃなく、周りの村とかにしておいたほうがいいわね」
「今はしていないのか?」
「一年に一回くらいはしてるみたいだけど、最近はしていないわね。もしかしたらこれから戦争を始めるかもしれないから情報を集めたほうがいいわ」
「それなら儂が調べておこう。今日で多少の人脈は作れたことじゃしな」
さすがハド爺である。ちなみにアネモネとジニアは買い物をしていたようである。さっそく報奨金を使ったみたいだ。6等分してもけっこうな額であったので使い果たすことはないと思うが……アネモネは貴族のお嬢様だし金銭感覚がどうなのかわからないので、少し心配である。以前に一緒に出かけたときは俺が払っていたのでそこまで自分から欲しいものを言わなかったが、自分のお金だとあれこれと買ってしまうことあるからな。
「それで、クエストのほうはどうするの?」
「カルミアのことを話すのも、原因である存在を倒したと嘘をつくこともできんしの。このまま一週間過ぎて謎は解けなかったと報告するしかあるまい。さすがにそのくらいなら問題なかろう。今後は事件も起こらないのじゃしな」
「じゃあそれでこの件は解決だな。明日以降の一週間は隣国の情報集めと観光をそれぞれで楽しんできてくれ」
「つまりは今日と同じってことね」
「アネモネちゃん、明日は違う店に行こうね!」
「サン、ルナ、明日は約束通り、何か食べに行こうな。カルミアもどうだ?」
「いいの!あ、でも私そんなにご飯を食べる意味がないのよ……。血を吸えばそれが私の栄養になるから……」
「それでもおいしいってことくらいは感じるんだろ?それで十分さ」
「そうだよ!行こう、カルミア!」
「一緒においしいもの食べよ?」
「わかったわ。私も長いことこの街に住んでいるからね。おすすめの店をいくつか紹介してあげるわ!」
俺たち三人の誘いでカルミアも行く気になってくれたようだ。いくつかってことは全部行くはめになりそうだが……。
カルミアは俺とサンとルナと同じ部屋で寝ることになった。急に一室増やすことができなかったため、サンとルナが同じベッドで寝て空いたベッドにカルミアが寝ることになったのだ。二人も異論はなく、というかいつも結局は一緒に寝てしまっているので特に困ることではなかった。サンとルナは明日を楽しみに先に寝て、俺もそろそろ寝ようかと思ったころ、
「じゃあレンガ、そろそろいい?」
「そろそろって、何がだ?」
何か約束でもしていたっけ?
「血よ!昼間吸えなかったから今結構危ないのよ」
そういや血を吸わないと衰弱してしまうんだった。よく見ると顔色も悪い。
「それはすまなかったな。カルミアの血を吸う頻度はどのくらいなんだ?」
「一週間に一度吸えればギリギリって感じね。私は余裕をもって六日に一度にしているわ」
それでもギリギリに近いだろう。あまり人から吸いたくないのかな。
「あまり頻繁に吸っているとバレる危険もあったし、迷惑になっちゃうからね。そこらへんは考えているのよ!」
「ならこれからはそんな遠慮はしなくていいな。俺も多少は血が回復するわけだし、そうだな…三日に一度くらいには吸うようにしていいぞ」
「そんなにいいの!じゃ、じゃあさっそく吸わせてもらうわね。こっちのベッドに座ってくれる?」
カルミアに言われたとおりにベッドに腰かけると後ろにカルミアが膝立ちになり首に抱き着いてきた。……抱き着かれると確かに胸が少しはあることがわかるな。それに甘い香りがする。身体のどこを触っても柔らかいんだろうなあ。ベッドだしこのまま押し倒して……。いやいや、何考えてるんだ俺。サンとルナが隣にいるんだぞ。いやそれ以前に幼女相手だ、落ち着け。
「……吸うなら早く吸ってくれ。俺が何かすることはないんだろ?」
「せっかくサービスしてあげてるのに、何よその態度は。もっと嬉しそうにしたらどう?」
「……」
少し興奮しかけていたので何も言い返せない。だが、俺が何も言わないのを自分に興味がないと思ったのか、
「見てなさいよ、いつかレンガが後悔する日が来るからね!」
さっきまでの俺なら後悔するかもしれんがもうしないぞ、絶対にしないからな!
「少し痛いかもしれないけど、我慢してね」
そう言いカルミアは俺の首に噛みついてくる。同時に俺も『死灰復燃』を発動する。これで吸われた分だけ再生する。思ったより痛くないのでそのままカルミアのやりたいようにさせる。しかしこれ、傍から見れば幼女にキスされてる20代男性ってことにならないか?誰にも見られない宿屋でよかったが外ではやらないようにしないとな。
「……んっ。これでしばらくは大丈夫だけど、レンガの血おいしいわね。ねえレンガ、少し多めにもらってもいいかしら?今まではあまりやらなかったけどストックが欲しいのよ。アイテムボックスに入れておけばいつでも飲めるから」
「ああ、いいぞ。今の量ならあと三回くらいは大丈夫だ」
「ほんと!ありがとう!」
そのままカルミアはせっせと俺から血を吸いとる。
「これで終わりよ!この量の血があればいざってときも安心ね!」
「まあ一週間も俺から離れることもそうそうないと思うがな」
「違うわよ。まあそのときになったら教えてあげるわね!じゃあおやすみ」
カルミアはそのまま俺のコテンとベッドで寝てしまう。しかも俺の服の裾を持ったままでだ。これは俺も一緒に寝ろってことか?12歳で精神年齢も止まっているようだし、まだ甘えたいってことなのかな。俺も『死灰復燃』を使って疲れたことだし寝るかな。
「ルナ、ちょっと危なかったけど大丈夫みたいだったね」
「うん、もしえっちなことになりそうだったら二人で止めようね!今日はしょうがないけど、明日からは一緒に寝るのも止めるよ」
まだ二人が起きているのを俺が知っているわけもなくそのまま眠りについた。
血を吸うところもうちょっと長くやりたいな。