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38話 ”普通の”村

傍有名ゲームの主人公はきっとこんな気持ちなんだろうなあ

 ジニアの故郷の村から出たその日の夕方、もうこの辺で休もうかと馬車を止めたそばにその村はあった。


「ちょうどよい、レンガよ野宿にならんですみそうじゃな」


「そうだな、泊めてもらえるか交渉してみよう」


 仮に野宿すると言っても、『家』があるから野宿の気分にはならないんだがな。多少の精神力を使わなくてすむし、旅らしくするために村に泊めてもらいたい。……『屍』の村のときも同じことを思ったが、今回は普通の村であってくれ。


 

 村の入り口に籠を背負った年配の女性が立っていた。特に何をしているわけでもなさそうだ。暇そうだし、泊めてもらえるか聞いてみるか。


「すまない、旅の者だが、今晩一泊だけ泊めてもらえるだろうか?」


「いらっしゃい!ここはママラの村だよ!」


「ママラの村か、それで今晩泊めてもらえるか?」


「いらっしゃい!ここはママラの村だよ!」


「いや、あの……」


「いらっしゃい!ここはママラの村だよ!」


 ……何を言っても同じ返事をするようだ。この人はふざけているのか?それとも頭がおかしいのか。それに籠には薬草が入ってるようだが、どこかに行く気配もない。なんなんだ?サンとルナは不安そうに俺の服をぎゅっと握っている。アネモネとジニアも眉をひそめていた。


「レンガよ、儂の予想が正しければ、村長の村か宿屋に向かったほうがよい。村人以外の人間を探すのじゃ」

 

 ハド爺の提案を聞き、俺たちは村の中に入って行った。女性はまだその場に立ったままである。ちなみに目線はずっと村の外を見ている。そういえば、俺たちに目を合わせていなかったな。



 その後、会う人会う人全員が話しかけると同じ言葉を返してきた。その中の一人が村長の家と宿屋の場所を教えてくれた。教えてくれたと言っても、礼を言ってもまた村長の家と宿屋の場所をまた返してくるのだが。頭が痛くなりそうだ。薬草を売る老人、喧嘩する武器屋と防具屋、ドアが開けっぱなしの家では夕飯をつくっている女性が見えた。……なんでドアが開けっぱなしなんだ?共通しているのは話しかけるまでは沈黙していることと、その場から移動してないことだ。例外かどうかはわからないが、その場をぐるぐる走り回っている少年を見つけた。そばでは妹だろうか?井戸の隣で少年の方をみている少年よりも少し年下の少女がいる。


「わーいわーい」


 少年は何が嬉しいのか、叫びながら走り回っている。あまりにも楽しそうだったのか、サンとルナも一緒に少年の後に付いて走り出した。俺はまだまだ子供だなと思いながらその穏やかな様子を見ていた。だが、しばらくして、その穏やかな様子は一変した。


「な、に……!?」


 サンとルナはそこいらの子供よりもはるかに強い。当然ながら足も速いし体力もある。だが、なぜか子供に追い付いていないのだ。最初は子供にぶつからないためにゆっくり走っているんだろうと思っていたが、サンとルナだけを見るととてつもなく速く走っている。だがなぜか、少年を入れた三人を見ると三人は同じ速さで走っているのだ。


「なんで追い付けないの……?」


「ぜえぜえ、もう無理です……」


「二人とも、こっちに戻ってこい!やっぱりこの村は何か変だ!」


 俺たちに何かしてくるわけではない。だがどこか奇妙なのだ。できるならば一刻も早くこの村をでたい。村長はこの村について何か知っているのだろうか。



「村長、この村について聞きたいことがあるのだが」


 村長の家は村の真ん中にあり、一番大きい家であった。ここもなぜかドアは開きっぱなしであった。


「この村のそばの森にはなあ、それはそれは恐ろしい魔物が棲んでおってなあ」


「わかった。倒したら村のことを教えてくれるんだな?」


「この村のそばの森にはなあ、それはそれは恐ろしい魔物が棲んでおってなあ」


 ……もういいや。ここの村人には返事をしないほうが良いようだ。



「いらっしゃい!お泊りですね!6人ですので、3000エンになります」


「二人部屋を一つと四人部屋を一つにしてくれ。夕飯はまだ大丈夫か?朝食

もつけてくれ」


「かしこまりました。お値段は一緒です。従業員についていってください」


 おお、初めて会話が成立した。なんだか感動だ。


「この村では何が起こっているんだ?みんな同じことを言っているようだが」


「かしこまりました。お値段は一緒です。従業員についていってください」


 いやだめだった。この人も村人たちと同じようだ。荷物を置き、食道に向かうとなぜかもう夕飯が用意されていた。しかも出来立てのようである。さっき泊まりにきたはずなのにどうなっているんだ?食事をしながらハド爺にこの現象を聞いてみた。


「どうやらこの村には冒険者などはいないようじゃな。村人だけか……。儂の見立てじゃとこれは『村』じゃな」


「『村』、か。ここの村人は『村』のせいでおかしくなっているのか?」


「いや、そうではない。ここの村人すべて『村』じゃ。そうじゃな……窓の外から村の入り口を見てみい」


「な!あれは、さっきの女性じゃないか!」


「さよう、もう夜も遅い。それなのにまだ女性は何事もなくただそこにいる。儂は昔、『町』に遭遇したが、似たようなものじゃった。お主の『家』と同じじゃ。条件を満たさないと攻略できない漢字のようじゃな」


 俺はハド爺の説明を聞くために女性から目を離そうとした。だがそのとき、村に魔物が入って行こうとしているのが見えた。


「ハド爺!魔物が!」


「なに!レンガよ、行くぞ。他のものはここにおれ。どうやらあの一匹だけのようじゃしな」


 俺とハド爺はすぐさま村の入り口まで駆け付けた。入り口には女性がいる。いくら不気味であろうとも、死なせるわけにはいかない。だが俺たちの目に映ったのはさらに異様な光景であった。


「いらっしゃい!ここはママラの村だよ!」


「グギャアッ」


「いらっしゃい!ここはママラの村だよ!」


「グルルゥ?」


 大型の魔物は入り口から入るために女性を吹き飛ばそうとしていた。だが、女性はその場から動かない。というか、魔物は女性をどかすことはできていないようだった。魔物はイラついたのか、女性に噛みつくが、それでも女性は何事もなく返事を返すのみである。魔物が俺たちに気づいたのか村から逃げる。女性は何事もなく、傷一つなくその場で同じことを繰り返している。


「何がどうなってるんだ?」


「これが『村』というものじゃ。どうやら魔物は去ったようじゃし、宿に戻ろうか。明日、村に棲む魔物を倒しに行こう。もしやあの魔物かもしれんしの」



 宿に戻った俺たちは早めに就寝した。少しでも早く魔物を倒し、『村』を攻略したい。ここにいると俺たちまでどうにかなってしまいそうであった。翌朝、村の入り口に向かうが、昨日と同じ人間が同じことを言っているだけであった。薬草を売る老人、喧嘩する武器屋と防具屋、夕飯らしきものをつくっている女性、その場をぐるぐる走り回っている少年、入り口には昨夜は何もなかったかのように籠を背負った女性がいた。



 森に棲むと言われていた魔物は合計10匹の大型の魔物であった。どうやら昨日の魔物と同じ種類であり、倒すと何も残さず消えていった。


「どうやらこの魔物たちも『村』がつくりだしたようじゃな」


 『村』、なんでもありか。俺たちは急いで村長の家に戻り魔物を倒したことを報告した。


「おお、よくぞやってくれました。どうぞ、私ら村の者たちからのお礼です。村に代々伝わる宝剣です。かなり由緒正しい剣だとか」


 村長から渡されたのはかなりの業物であったが、俺たちは別に剣目当てじゃない。それよりも『村』の攻略のアナウンスはまだなのか?神よ!


「あの、この村には一体なにが……」


「この村のそばの森にはなあ、それはそれは恐ろしい魔物が棲んでおってなあ」


 まさかの昨日と同じセリフに戻っていた。まさかと思い、村長の家を後にし、森に向かってみると、また10匹魔物がいる。


「やり直しか⁉とりあえず倒すぞ!」


 先ほど倒したため、魔物の攻撃パターンはわかっていた。即座に倒すと、村長の家に再び向かった。

 

「おお、よくぞやってくれました。どうぞ、私ら村の者たちからのお礼です。村に代々伝わる宝剣です。かなり由緒正しい剣だとか」


 村長はそう言い俺に手を出すが、その手には何もない。二度目はないのか?倒し損じゃないか。


「レンガよ、おそらく魔物退治は攻略には関係ないようじゃ。ここは無理する必要もない。剣は良いものじゃし、『村』は害のある漢字じゃなさそうじゃ。まだ日があるうちに出発しようぞ」


 かなり納得できないが、確かにそのとおりだ。このままでは宿代だけがかかってしまう。魔物が消えなければ素材を売却して金を稼ぐこともできるが、それもできないし、ハド爺のいう通り、剣を手に入れただけ良しとしよう。

 『村』は俺が旅をして初めて何もできない漢字であった。俺たちにできるのはアネモネにギルドに発見の連絡をしてもらうだけであった……。


みんなきっと攻略の仕方わかったでしょ?ちゃんと読めば簡単なはず。わかった人はメッセージかツイッターで送ってくださいな。


一応解決編は考えてはあるので、書け次第投稿します。

探偵役は頭脳派で有名なチンピラさんにお願いしようかと思っています!

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