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37話 鬼の棲まいし山その11

ちと人にとっては嫌な話かなーって思います

後書きまで飛んでもいいですよー

鬼が全滅し、『鬼』を攻略したことにより、鬼たちはまるで存在しなかったかのように消えていった。だが、痕跡は残っている。サンとルナはアネモネとジニア、サクナとともに村に連れて行ってもらっている。おそらく今から見るのは女性や子供にはきついものになるだろう。他の冒険者たちと手分けして洞窟中を探し回り、攫われた女性を探すが死体や骨が捨てられている部屋しか見つからない。


「レンガよ、こっちじゃ!」


 ハド爺の声が遠くから聞こえる。俺がハド爺のもとに辿り着くと、11人の女性が転がされていた。よかった、どうやら生きているようだ。気絶している人はそのうち6人、かろうじて意識があるのは5人であった。


「おねがい……殺して……」


「つらいの、楽にさせて……」


 意識がある者はみな俺たちに殺せと頼んでくる。だが、悪人ならともかく、むしろ被害者である人間を殺すなど……。


「レンガよ、死なせてやるのがこの者たちの願いじゃ。それに見よ、この腹を」


 見るとどの女性の腹も膨らんでいる。


「この中にいるのはおそらく鬼の子じゃ。『鬼』は全滅したが、この中にいる鬼は別の生物と認識されたようじゃな。覚えておるか?鬼の子を産むときは母体の体力をかなり使い出産する。この者たちは遅かれ早かれ死ぬ。ならばこれ以上苦しませることもあるまいて」


「だが、だが、何かないのか……。そうだ、鬼の子だけを殺すことはできないのか?」


「無理じゃろう。すでにどの者も腹がそうとうでておる。これだけ胎児が育っておれば子だけをことは無理じゃ。この者たちをさらに苦しませることになるじゃろう」


 そうか、駄目なのか。これ以上苦しむ人は増えないと思ったんだけどな。サンとルナの前ではこんなとこ見せないようにしないと。気持ちを切り替えよう。俺は今からこの人たちを救うためにこの人たちを殺す。


「お主ができぬのなら儂がやろうか?儂も多くはないがこういう経験がある。別に進んでやらんでもいいのだぞ?」


「いや、大丈夫だ。すまないが、俺たちだけにしてくれないか」


 ここからはあまり他人に見せたくはない。俺は『毒』を使い毒薬を生成する。この毒は俺がもといた世界では自殺に使われる苦しまずに死ねると言われていた薬だ。本来は錠剤であるが、『毒』の力なら液体としてでも生成できる。


「この薬を飲め。眠るように死ぬことができる。それに良い夢を見れるはずだ」


 毒には麻薬の類もまぜておいた。女性たちはみな礼を言いながら毒を飲み死んでいった。気絶している女性には申し訳ないが、口移しで飲ませた。俺なら毒は効かない。気絶していた女性も死に、これで俺は11人の女性を殺してしまったことになった。だが、現状の俺に他にできることはなかった。彼女たちの不幸を悲しもう、俺の力不足を嘆こう、だが後悔はしない。少なくとも彼女たちは最後には笑っていた。救われた、と思いたい。



 彼女たちの遺体は燃やした。俺の火魔法でも時間をかければそのくらいのことはできた。これで精神力はほぼ空だな。遺骨を持ち、みんなのもとに戻る。


「待たせたな。さあ、村に戻ろう」


 ハド爺含め、だれも何も言わない。だが、それが今の俺にはありがたかった。



 シダ達他の冒険者はこのままアマルの街に戻るそうだ。まあ『行』の能力ですぐだからな。驚いたのはサクナに狐耳が生えていたことであった。あれ?さっきまでは黒髪のおねえさんじゃなかった?サクナはサンとルナと話したそうであったので後日、また会った時に時間をつくると約束した。



「帰ったぞ。みんな疲れただろう、今日と明日、ゆっくり休んでくれ」


「ご主人様!」


 ジニアが俺に飛び込んでくる。俺はジニアを受け止めようとするが、力を使い切ってしまっていたので、そのまま押し倒されてしまった。


「ご主人様!ありがとうございました!その……お礼なんですが……。ボクの身体で!」


「待て待て!ここではまずい!……というか、俺は別にそういうことをしてほしくて鬼を倒したわけじゃない。仲間のためだ、当たり前だろ。これがアネモネでもサンでもルナでもハド爺であっても仲間が困っているなら俺は自分のできることをする。ジニアも俺が困ってたら助けてくれよ?お礼ならそれで十分だ」


「ご主人様……この御恩は一生忘れません!」


 いや、だからそういうのはいいんだけどなあ。でももったいないような……。いやいや、仲間には手を出せないよ。


「レンガさん、それよりもギルドの人から今回の件について話をききたいと。ちょっとこっちに来てくれる?」


「ああ、わかった。ジニア、またあとでな」


「え、ちょっと、ご主人様―!」


 少し助かった。ジニアは可愛い女の子だが、仲間だから手は出せない。俺の上に乗っているジニアをどかすとアネモネのもとへ向かった。




 遺骨の返却はギルドの職員に任せた。仕方がないとはいえ、彼女たちを殺してしまったのだから俺は遺族に会う勇気がなかった。それに、この村以外の村の被害者であったのだ。この村で攫われた女性はどうやらあの捨てられていた死体の中にあったようだ。あの死体は他の冒険者が燃やして骨を山に埋めたらしいので、後で場所を教えてもらうらしい。



 夜は宴であった。鬼の全滅を祝うのと同時に被害者を弔う場でもあるらしい。最初の数分だけ黙とうをし、後はひたすら騒いだ。まるで被害者を忘れるように、あるいは送り出すように。俺も酒合戦に参加し、村人を何人か潰した。酒を飲める者はみんな飲み、飲めないものは大いに食べた。しばらくするとサンとルナも起きたようで、周りが驚くほど食べていた。


「なんだかすっごくお腹がすいてるの!」


「食べないと倒れそうなんです……」


 後で聞いたことだが、二人はジブと闘ったとき、相当無理したようだ。まあ、幹部と闘ったものはみんな無理したようだが、二人は倒れるまで闘ったようだ。どうやら精神力を使い切ったらしい。精神力を使い切ると精神力が上がる代わりに相当なエネルギーを必要とするようだ。


「あまり食べ過ぎてまた倒れないようにな。明日もここで休んでいくからそれまでしっかり寝て体力と精神力を回復させておくんだぞ」


「わかった!」


「はいです!」


 ハド爺とアネモネ、ジニアはそれぞれの敵を倒した時の話を村人にせがまれているようだ。みな壮絶な戦いだったらしいが、そういえばチンピラはどこに行ったのだろうか。洞窟からでたときはすでにいなかったが、もうどこかに行ってしまったのだろうか。あいつは俺の何だろう?もう敵というほどではないが、……ライバル?いや、ちがうか。まあいいや、チンピラだし。



 翌日は宣言通り、何もせず過ごした。翌日旅立つこともあって、ジニアは各家に挨拶に行っていた。俺もなぜかついてこさせられた。……頼むから嬉しそうに俺をご主人様と紹介するのはやめてくれよ。ボーダにいたっては泣きながら俺にジニアのことを頼むって言ってるよ。いや、ジニアは守るけどなもちろん。昨日宴をしたくせに今日は俺たちを送るための祭りが開かれた。今日もサンとルナはたくさん食べていた。……よく食えるなお前ら。今日は早めに祭りを切り上げてもらい、早めに就寝した。出発は早くと決めている。なるべく行けるとこまで行きたいからだ。



「じゃあ、行くぞ!」


「本当にありがとうございました。村を代表し、お礼させていただきます。みなさんのことは村の英雄としてまつらせていただきます」


「いやいや、大丈夫だ」


 恥ずかしいわ!俺たちはこれ以上いると崇められそうなのでそそくさと出発した。


 


前書きから飛んだ人へ

鬼倒しました 生き残りはいませんでした

村を出発しました そんなとこです。正確には生き残りはいましたが……


ジヒトさんは相変わらずサンとルナに会わずにシダ達と街に戻っていきました。何を言わずに立ち去るヒーローです。



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