35話 鬼の棲まいし山その10
決着です
「ジヒト、手短に説明するぞ。やつの能力は身体の武器化だ。俺たちとの距離で武器を変えてくる。あまり離れると弓矢で狙われるから中、近距離でしか闘えない。」
「それで、策はあるのか?」
「一応考えてある。『毒』を覚えているか?あいつがあのときに使った能力を使う。俺があの武器をどうにかするからお前はあいつにとどめをさしてくれ」
「あの能力か。使えるのか?」
「まだ上手く使えないが、やってみるだけさっ!」
何度目だろうか。俺は再度ブラハに目掛け走り出す。手足の再生はあと一回しかできないな。再生にはかなりの精神力を使うようだ。
「二人がかりか。先ほど腕が再生していたようだが、それは何だ?まあ良い。まだ闘えるということなんだからな!」
ブラハは両手を剣にして俺の剣を受け止める。だが、俺の剣はさっきまでとは違う。
「俺の剣には毒を付与した」
「貴様の毒など、俺に効かないのは先ほど試してわかったはずだろう?」
俺の毒はさっきまでは確かに効いていなかった。だが、あれは神経系の毒であったからだ。今回の毒は違う。『毒』は二つの毒を使い分けていた。今のはもう一つの溶解毒だ。メリットは大きい。ブラハの剣の根元を溶かしてしまえば、やつの腕そのものを無くせるからだ。
「ぐぅっ。だが、貴様の剣も無事ではないようだな」
溶解毒のデメリット、というか俺が使いこなせていないからなのだが、俺自身の武器まで溶かされてしまう。武器の性能の差なのか、ブラハの剣が溶けても俺の剣はまだなんとか原形を保っていた。そのままもう一方の剣も溶かし、ブラハの両腕を無くす。
「鬼族を舐めるなよ!俺にはまだ親父から受け継いだ力がある!」
ブラハにとどめをさそうとした瞬間、ブラハの身体から腕が2本生え、それをこん棒と斧に変える。俺は即座に斧の柄の部分を溶かすが、棍棒は俺の胴ほどもあるためすぐには溶かしきれない。だが、
「だが、剣を犠牲にすればっ!溶解毒全開!」
溶解毒をさらに強力にし、棍棒を溶かす。代償に俺の剣も崩れてしまったが、これでやつの身体はがら空きだ。
「今だ、ジヒト!」
「ようやく俺の出番か。任せろ!」
ジヒトの槍がブラハの身体を貫こうとした瞬間、
「だから、鬼族を舐めるな!」
ジヒトの槍が弾かれる。ブラハの身体は盾と化していた。
「よくもやってくれたな。だが、俺の腕が斬り落とされてそのままだと思ったか?斬りあとされた腕はこのまま爆弾となる。俺は全身を盾にして守らせてもらうぞ。せっかくの闘いであったが、俺に攻撃の手段がなくなってしまったからな。」
「くそっ、ジヒト、仕方がない。逃げるぞ!」
「ああ、逃げても無駄だ。洞窟全体とは言えないが、爆発の範囲はお前たちが逃げ切れる距離ではない。どうしても止めたかったら、爆発する3分までの間に俺を倒す方が可能性が高いぞ。俺が死ねば爆弾も腕に戻る。まあ溶かす剣がない今、俺の盾を壊せないようだがな」
「そうか、お前を倒せばいいのか。それを聞いて安心したよ。」
ブラハは勘違いをしている。なにも溶解毒を使えるのは剣だけでない。俺の身体にだって付与することはできる。
「お前だって、人間を舐めるなよ!溶解毒全開!」
俺は右腕に溶解毒を付与し、ブラハの身体を力の限り殴りつける。俺の右腕が溶けるのと同時にブラハの盾も溶けていく。痛ってぇぇぇぇ。斬られた時の熱いような感じとは違う。全身に広がりそうな痛さだ。俺の腕が再生されていくのを見ながら、立ち位置をジヒトと交代する。
「今度こそ、やってくれ!」
「おう!レンガの想い、もらっていくぜ!」
「『受け継ぐ願い』」
俺の身体から力が抜ける。『毒』のときとは逆だな。俺の力をジヒトに託したのか。
ジヒトの、俺の力とブラハから奪った力が乗せられた槍がブラハを貫いた。
「グハッ!だが、俺が死んでもまだ、親父が。親父ぃー、俺の敵を……」
ブラハは常に父親から受け継いだ能力と言っていた。そして最後には父親に頼り死んでいった。
「お前には親父しかいないのか?その武器化する能力は自分で磨いて身に着けたんだろ?親と比べるな。お前はお前だったんだから」
族長であるブラハを倒したことによりオソレ山の鬼は全滅した。その結果得られたものは周囲の村の平穏とギルドからのいくばくかの報酬というものであったが、俺はジニアの笑顔を楽しみに仲間のもとへと向かった。なお、サンとルナは俺が抱え込んで運んでいる途中で意識が戻ったようだが、俺にしがみついたままであった。
*今回一番得した人
「ん?なんか光が俺のほうに……」
「あ、兄貴、それって漢字じゃ⁉」
「もしかして『鬼』じゃないですか⁉」
「お、そうか?ガハハこれでレンガに対する切り札ができたな。次こそは闘おうぞ!レンガ!」
「はい、というわけで鬼は全滅です。親父さんはハドさんに殺されたため別に復活してきたりはしません。『鬼』は全滅ということで攻略され、チンピラが所有したのは私にも予想外でしたが。レンガさんが所有できれば一人でも闘える力になったんですけどね」
「というかあいつ、まともに一人で敵を倒したのあまりないだろ」
「彼はとどめとなるような強力な攻撃手段がないですからねー」
「もうチンピラのほうが強いのではないか?」
「それは考えてはいけません!」
次回で『鬼』編終了です
https://twitter.com/garaku077/status/794202803237363712
雅楽さんという方よりサンとルナを書いて頂けましたー
ワーワーパチパチ