33話 鬼の棲まいし山その8
つ、つぎこそはー
「ハドは無傷であったようだが、そうするとガラが弱かったように思えるな」
「とんでもないですよ!ゼラの軍団の誰一人として、ザンガの力でも、ジブの魔法でも傷一つつけることができないんですからね。ハドさんだって倒すことはできても、ガラの体には傷はつけられませんでしたから。ハドさんが無傷だったのは、漢字の能力の所以です」
「相性、なのだろうか」
「そうですね。ハドさんが一番相性が悪かったのはジブでしょう。彼は受け流すために対象に触れる必要があるため、魔法を受け流すのは難しいんですよ」
「なるほどな」
「ではいよいよレンガさんと族長ブラハの闘いになりますね!こいつを倒せば鬼族のめぼしい敵も倒したことになりますよ」
「待て、レンガの前にシダたちの方はどうなっている?サクナがいるから大丈夫と言っていたが、鬼たちは何人いたんだ?」
「そうですね……ゼラが50人の鬼を率いていましたので、シダさんたちが闘っているのはざっと150ほどですね」
「そんなに多いのか⁉確か冒険者の数はその10分の1以下であろう?前回の討伐体よりも数の差が大きいのではないか?」
「その代わり、一人一人の強さが違いますよ~。シダさんのパーティーが中心となって鬼の数を減らしているうえに、途中からジヒトさん来て鬼を何体か倒していきましたからね。少ししたら洞窟の方に向かってしまいましたけど。まあそこまで心配なら見てみましょうか」
【シダ達引き付け役VS雑魚鬼軍勢】
サクナは思っていたよりも数の多い敵に動揺していた。最初は勢いがあり、どの冒険者も楽々とは言えないが、危なげなく鬼を倒していた。サクナも近寄ってくる鬼から『刀』で強化された刀で鬼の首をはねていた。だが、20の鬼の首が地面に落ちてから鬼の数の変化が見えないことに気づいた。
「何体いるんですか⁉」
「サクナ、残り半分ほどだ、どうやらあの洞窟に隠れていたようだが、それもほとんどでてきている」
サクナは実は敵の残りの数よりも己の力の消耗具合を気にしていた。自分の体力を考えるとおそらく鬼を全滅させることはできるだろう。できるのだが、そう考えていたとき、
「サクナ、その頭……」
ローズがサクナの頭を見て、驚く。ローズの声を聞き、シダ、ユズもサクナの方を見て驚いたような表情を見せる。サクナはまさかを思い自分の頭を触る。そこにあったのは獣の耳であった。
「サクナ、お前、獣人だったのか?」
サクナは己の力不足をなげく。この人たちには自分が獣人であることを知られたくなかった。だが、もう知られてしまったからには説明するしかないだろう。場合によっては彼らと別れることになるかもしれない。だが、彼らを騙していたことへの謝罪も含め隠し通すことはもはやできない。
「……私は見ての通り狐の獣人です。私が生まれたのは武芸に秀でた国でした。そこでは力こそがすべてで私の家も剣術の道場を開いておりました。そこの長女に産まれた私でしたが、獣人で産まれたことは両親にとっては喜ばしいことでした。しかし、私は狐の獣人。他の獣人は鳥であれば空を飛べ、狼であれば鋭い牙、熊であれば力、猫であれば速い足があります。しかし、狐はどれもが中途半端でした。空も飛べない、牙はあるが特別鋭くない、強い力はなく、足の速さもそこそこ、持っているものと言えばずる賢い頭と少しばかりの変化能力でした。そう、変化能力があるんです。ですが私には耳を隠す程度の変化しかできず、それでも両親は変化などという卑怯な力を許さず、獣人であるならばその身体能力を磨けと厳しい稽古をつけられました。幸い、『刀』の保漢者になれたことで身体能力と刀の扱いに優れ、両親の期待に沿うことはできました。そのまま武者修行という名目で私は両親に旅の許可をもらい家をでてきたという次第です」
「しかしなぜ家をでてからも狐の獣人であることを隠していたんだ?」
「両親の躾のせいか、私もいつしか狐の獣人であることは恥であると考えるようになってしまいました。だからシダさんたちにパーティーに誘ってもらえたときは隠し通そうと思ってしまったんでしょうね。あなたたちに少しでも私の悪い面を見せたくなかったから。でもそれも今日限りです。今までありがとうございま……」
「待て、何勝手に話を締めくくろうとしているんだ?言っただろう、サクナは俺たちに必要な人間だって。狐の獣人だからどうしったって言うんだ。そんなのサクナの力のほんの一部だろ?むしろ触らせてくれ。俺たちはサクナがサクナだからこそパーティーにいてほしいと思ったんだ」
「何言ってんの⁉セクハラよ!」
ローズがシダの頭を叩く。
「サクナさん、私たちは別にあなたがどのような人間であろうと変わりませんよ?あなたは私たちの仲間です」
「そして(恋の)ライバルね」
ユズとローズもサクナを仲間と認めていた。ローズは仲間以外にも何か違う存在としてサクナを見ているようだったが。
「シダさん、ユズさん、ローズさん、私はここにいてもいいんでしょうか?」
「もちろんだ。ああそうだ、レンガの仲間に双子の獣人がいただろう?そいつらに獣人としての注意を教えてやれないか?サクナ、お前の獣人としての力を隠すのでなく、誇るものとしてほしい」
「わかりました……。シダさん、ですが、耳はまだ触らせはあげません」
「うっ、ちょっと興味あったんだけどなあ。双子に頼んでみようかな」
「それはだめです!」
「……まだ?ってことはいずれシダさんに触らせてもいいってこと?」
「……どういうことなの?」
ユズとローズはサクナのまだという言葉に疑問を持つが、途切れていた鬼たちが再び押し寄せてきたことにより、話は中断される。
「いくぞ!サクナ、もう遠慮はいらない!お前の力をすべてあいつらにぶつけるんだ!」
「はい!これで変化に使っていた力はすべて『刀』に使えます!」
「『刀刃花葬』」
鬼たちの足元から刀が咲き乱れるように突き刺さる。鬼たちは身体を串刺しにされ一気に20人ほど絶命する。
「サクナ、後ろは任せろ!俺たちはサポート向けのやつが多い。お前が十分に暴れられるようにしてやるぞ!」
「……女の子に暴れるとか言わないでくださいよ」
「「モフりたい!」」
……これが神二人の感想であった。
サクナは狐耳です。後悔はしていない。作者の心とあと数人の心が狐耳を欲する声を聞きました。
文句があるやつはでてこいや!その数人が相手になってやるぜ!
まだサクナちゃんの髪の色って触れてませんでしたよね?白髪かなー銀髪かなー黒髪かなー。誰か何色がいいとかありましたら教えてください。
あと、俺には恋愛絡みとか真面目な話は無理だ!