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29話 鬼の棲まいし山その3

寝る前にもう一話、と

シダたちが引き付けている間に俺たちは洞窟に到着した。ここまでは何事もなくよかったと一息ついた瞬間、


「ふむ、やはりジブの言ったとおりにここに来るものがいたか。我が名は鬼族三人衆が一人ゼラ。いくら族長が闘いが好きだと言ってもここを通すわけにはいかない。この我が軍勢が相手しよう!」


 洞窟から50ほどの鬼と鎧を着た鬼が現れた。おそらくこいつがゼラだな。洞窟の前にはゼラたちがいるのでここを突破しなければならない。


「レンガさん、私が奴らのすきを突きますから、その間に走り抜けてください。」


「わかった」


「『決裂せよ、鬼たちよ』!さあ、行ってください」

 

アネモネが『別』の能力を使うと鬼たちは互いに攻撃し始めた。俺たちはその間を縫うように走り抜けた。半分ほど走ったところで、


「グガァァァァッ!貴様ら何をしておる!」


 ゼラが雷が落ちたかのごとく吠えた。その声で鬼たちは正気を取り戻し始める。


「しまった⁉」


 鬼たちが俺たち目掛け拳を振るって来る。俺たちも応戦しながら洞窟へと向かうが、数が多すぎる。そのとき、狼の群れが鬼たちの腕や足に噛みついた。


「ご主人様、行ってください!作戦を崩してしまって申し訳ございませんが、ここはボクとアネモネで抑えます!」


 確かにアネモネ一人ではゼラの相手はきつい。アネモネの『伝』の能力をゼラの咆哮が打ち消している。もう一人いたほうがいいだろう。


「頼む!アネモネ、厳しくなったら『伝』で誰かを呼ぶんだぞ!」


「わかってるわ!」


 ジニアとアネモネがつくってくれた道を俺たちは走り抜け、洞窟の内部に入り込んだ。


「地図の通りだとしばらく真っすぐ進むみたいだ。サン、ルナ、鬼たちの強さはどうだった?」


「魔物とかゾンビよりも強かったけど、大丈夫!」


「私もあのくらいなら受け止められました!」


 それは良い知らせだ。しかし、序盤から作戦が狂ってしまった。このままだとジブの相手をするやつがいなくなる。


「ハド爺、どうする?ザンガはハド爺に相手してもらうとして……。ハド爺?」


 ハド爺の返事がない。後ろにいるハド爺のほうを振り向くと、そこには誰もいなかった。


「っ‼!ハド爺⁉」


「すまんが、この老人は儂が相手をさせてもらう。息子が心配での。一番強そうな者はこの儂、元族長のガラが相手させてもらう」


 洞窟に老人の声が響き渡る。


「レンガ、先に行っておれ!こやつは強い。おそらく先ほどのゼラの数倍は強い。じゃがすぐに追いつく!」


 ハド爺の声も響いて聞こえてくる。よかった、無事だったか。しかし、元族長か。族長レベルってことは幹部である三人衆よりも強いやつがもう一人いたのか。どこに行ったのかわからない今は進むしかない。


「サン、ルナ、しょうがない。このまま行こう。これからは三人衆を一人一人相手していこう。これ以上ばらけるのは危険だ」


 洞窟を進むと広間にでた。そこにいたのは今まで見てきた鬼の二倍はありそうな大鬼だった。武器はその鬼のさらに倍はありそうなハンマーである。


「ようやぐ来だが。ずっど待っどっだぞ。おらの名前ばザンガだ。ざあ、おらの相手をずるのは誰だ?」


 ザンガはなまったようなしゃべり方をしている。


「すまんが、全員で相手をさせてもらうぞ!」


 俺、サン、ルナはザンガ目掛け走りだす。それを見たザンガはハンマーを振り回しだす。


「ぐらえっ!」


「ルナ、頼む!」


「はい!……キャアッ!」


 ルナはハンマーを受けるが、そのまま弾き飛ばされてしまった。幸い、受け身はとれたようだが、やはり情報どおりこいつの攻撃を受けとめることは難しいようだ。


「盾使いはいなぐなっだな。次はお前の番だ」


 ザンガはルナの次はサンに向けてハンマーを振り下ろした。サンは避けようとするが、間に合いそうもない。


「しまった!サン!」


 だが、そのハンマーは途中で軌道を変えた。ハンマーの軌道を変えたのは突如ザンガに向けて投げられた斧であった。


「おいおい、俺を置いていったと思ったらまだこんなところにいたのか?」


 斧の持ち主はかつて俺が拳闘場で闘ったチンピラであった。


「お前は!遅れてくる冒険者ってのはチンピラだったのか!」


 チンピラは『倍』を持つ保漢者であった。しかし、もとは弱い冒険者であり、その力を倍にすることで周りを脅迫する悪人であった。だが、今は味方のようだ。


「レンガ、先に行け!それと、入り口にいた二人のことなら安心しろ!俺の仲間二人を置いてきた。あいつらもこの間保漢者になったからな」


「だがチンピラ……。お前この間よりも少し瘦せてないか?」


 痩せたというより筋肉が少なくなっているように見える。


「いいから、行け!お前らじゃ相性が悪い。ここの中で俺だけがこいつを倒せる!」


 チンピラの言うとおりだ。サンとルナは二人そろってその力を発揮するが、ルナがあのハンマーを受け止められないなら二人では相手にならないだろうし、俺もこいつとは闘いづらい。新しい能力なら闘えそうだが、あれは族長まで取っておかなければならない。


「任せたぞ!あのハンマーは強力だ、まともに受けないほうが良い」


「わかってるから、早く行け!」


 俺とサン、ルナは広間にある階段を降り、次の部屋へと進んだ。しばらく道を進むとまた広間にでた。そこにいたのは痩せた鬼であった。


「初めまして。三人衆が一人ジブと申します。我らが族長はこの先におります。レンガさんですね、どうぞこのままお進みください」


 俺の名前を知っているだと⁉頭が良いと聞いていたが、これはどういうことなんだ?


「私がなぜレンガさんの名前を知っているのか知りたいようですね。私は鬼族で唯一鑑定を持っています。それも通常の鑑定よりも強力な鑑定をです」


 それで討伐体メンバーの情報がわかっていたのか。


「サンさんとルナさんは私が相手をしましょう。実は私、子供が好きなんですよ。子供は実に良い泣き声を聞かせてくれますからねぇ。お二人もちゃんと死ぬ前には泣いてくださいよ?」


 こいつ……。ゲス野郎だな。三人衆、一番まともだったのゼラだったな。吠えてたけど!吠えてたけど!


「俺たち三人でお前を倒すって言ったらどうする?そっちのほうが俺たちには楽そうだが」


「それはおすすめしませんねぇ。それをやると怒った族長がここまで来てしまいますよ?怒ったあの人の相手なんかしたら私まで巻き添えになって死んでしまいますからねぇ。まだレンガさんが一人で相手したほうがそこのお二人も生きる確率が上がりますよ」


 もともと族長は俺たち三人で挑むつもりだったのだが、こうなってはしょうがない。サンとルナも一週間、他の冒険者に混じり修行してきたのだ。こいつらの力を信じよう。


「サン、ルナ、こいつを倒せ!無理そうなら俺を放っておいていい、ここから逃げるんだ!」


「わかった、でも二人じゃ逃げないよ!」


「逃げるときはお兄さんも一緒です!さあ、私たちが相手です!」


「兄ちゃんの加勢に行かせてもらうためにさっさと倒すよ、ルナ!」


「うん、サン!」



 俺はジブを二人に任せ、族長がいるという部屋に向かった。その部屋はいままで通ってきた広間よりもさらに広く、壁のあちこちにひびが入っていた。


「よくぞここまで来たな。といっても三人衆の相手を仲間に押し付けただけでまだ誰も倒せてないようだが。俺は鬼族族長のブラハだ。血沸き肉躍る闘いを期待しているぞ!」


 族長のブラハはザンガに負けず劣らずの大きさである。ザンガの攻撃を受けきれそうになかった俺がこいつを倒せるのか、それはわからない。


「お前を倒せば『鬼』そのものを倒したことになるのか?」


「それは違うな。『鬼』の攻略は鬼すべてを殺すことだ。だが、安心しろ。鬼族はすべてこの山にいるから逃げることはない。もっとも逃げるようなやつは俺が直々に殺すがなぁ」


 こいつを倒したところでシダたちのところの鬼も倒さなければならないのか。


「さあ、闘おうじゃないか!殺し合おうじゃないか!鬼は闘うのが殺しと同じくらい好きなんだよ。一番強そうな爺さんは親父に持ってかれちまったが、お前も強いことを祈るぞ!」


「期待に応えられるかわからないけどな、お前を殺すために俺はここに来た!」


次話から個別の闘いになりますね。

一度こういうの書いてみたかった……

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