21話 出発
「レンガさん! ついに私やりましたわよ!」
朝起きるとアネモネが興奮した様子で部屋に飛び込んできた。興奮しすぎているせいかお嬢様時代の敬語になっている。
「何をやったんだ? あんまし怒らせることはやるなよ?」
「違うわよ! 以前から思っていたのだけど、ジニアは意識を消失したとなっていたけどどこかに残ってるんじゃないかと思ったのよ。それで『伝』の能力で意識を繋げられないかと試していたのよ。今朝ついに10秒だけだけど成功したわ。」
「へえ、それで何を言っていたんだ?」
あと3日で意識が戻るのだ。せいぜい挨拶くらいだろ。
「成功と言ってもそこまではっきりと繋げられなかったんだけど、『オソレ山』、『あと1ヶ月』、『早く行かなきゃ』、と言っているのは聞こえたわ。残念ながらそこで聞こえなくなってしまったのだけど」
聞いたことの無い地名だ。山か……登山とかしたことないなそういえば。
「オソレ山か。アネモネはどこにあるか知ってるか?」
「ええ、確か私の元いた国の領地ね。ハドさんの昔話にも出ていたからハドさんに聞いた方が詳しい場所を教えてくれそうだけど」
ジニアに何があってそこに行きたいのかわからないが、急いでいるらしい。一ヶ月と聞けばまだと思うかもしれないが、移動がどれだけかかるか分からない。
馬車の用意ができている時点でいつでも旅に出られたのだ。少し早いが、旅立つ時がきたようだ。
ジニアの件があるのでサンとルナの実地訓練は中止にしてもらい、今後について話すことにした。
「ふむ、それなら旅の最初の目的地はオソレ山ということでよいか? ここからなら馬車の具合にもよるが2週間ほどじゃな。そうじゃ、まだ馬車を見せてもらってなかったな。確か『家』の能力で創り出せたらしいが」
俺が馬車をだすと、ハド爺はその大きさに一瞬驚いたような表情を見せた。が、すぐにもとの表情に戻ると、
「これなら馬は3頭は必要になるな。儂のほうで調達しておこう。今日中には用意できるが、旅にでるのは明日でよいか?」
「ああ、問題ない。むしろハド爺がいなければもっと遅くなってた可能性もあったしな。俺たちは今日は世話になった人たちに挨拶しに行ってくる」
俺たちは武器屋やギルドにあいさつに向かった。武器屋の親父は選別だと言って、砥石や武器の手入れの道具をくれ、使い方を教えてくれた。
ギルドではアミに今までのクエストでのお礼を言い、逆にお礼を返された。アミの行ってほしくないというような目を見て照れているとサンとルナが睨んできた。なぜかこないだ結婚してやると言ってから他の女性と話すと怒りだすんだよな。
ザザのところにいったところ、デンがザザに説教をしていた。なんでも違法すれすれの商売をしたらしい。忙しそうだったので二人に手短に挨拶をし、その場を後にした。デンにはかなり世話になったからな。結局、飲むことがなかったから次に会ったときに酒を酌み交わすことを約束した。
他にも薬草を収集を依頼した人たちやシダたちにも挨拶をしに行った。依頼者からは薬を各種もらい、シダたちとはまたクエストに行く約束をした。チンピラやジヒトはクエストに向かったらしくこの街にはいなかった。まあチンピラに挨拶することもないんだけどな。
夜は少し豪華な夕飯をハド爺含めみんなで食べ、翌日の打ち合わせをした後、ベッドに入った。サンとルナは興奮していたのか話し込んでいたようだが、しばらくすると寝息を立て始めた。
翌日、ハド爺が俺にもわかるほど立派な馬を連れてきた。
「せっかくじゃからな。無理を言って貴族用の馬を連れてきたぞ。長い旅にも耐えられ、少しの休憩で長時間歩ける、寿命も長いからこの馬はそのままお主にやろう」
「ありがとう、じゃあ出発だ!」
俺たちは数週間であったが、世話になった街を出た。おそらくほとんどがハド爺関連だと思うが、多くの人々に見送られ、次の目的地までに寄る街もこうであったらいいなと期待をしていた。
ついにここまできたぞ
最後のとこなんか変な気がする
どうやって書けばいいんだろ