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19話 レッツパーティー

今回はレンガ視点ではありません

 レンガはまだ悪の意思を持った漢字を知らない。

 レンガが今までに出会った漢字は『鼠』『毒』『家』であった。

 『鼠』は漢字であったことを知らずに倒してしまい、『家』には悪意などなく、むしろ善といっていい存在であった。

 『毒』は悪の存在であったが、『毒』という存在意義のため人々を殺していたので殺意はなく殺しや闘いには積極性はなかった。己が認められる人間を探しているようでもあった。

 しかしながら、人を殺すことに愉悦を見つけてしまった漢字も存在する。享楽の為に殺害を、殺傷を繰り返す漢字が現れる。

 また、チンピラ以上に悪意を持ち、人々を恐怖に陥れている保漢者もいる。彼らが旅をするとき、彼らの前に立ちはだかるのは必然であろう。そのときレンガはどのような対応ができるのだろう。漢字が相手ならまだいい。だが、保漢者を相手にレンガはどこまでできるだろうか。相手は人殺しである。レンガにとって大切な存在も殺されるかもしれない。無力化してもいつか復讐しに来るかもしれない。殺すしか選択肢がなくなった時――


「――レンガに人を殺すことはできるのだろうか」


「何をしている? そなたは例の世界に適応する人間を見つけるのが役割だろう?」


「いえ、ちょっと……これからの予言というかなんというか……送り込んだ人間を見守るのも仕事かなと思いまして……」


「ふむ、それも仕事か。しかし、人間の前でそのような態度はとっていないだろうな? 神というのはだな、威厳があって…」


「わかってますって! それよりもレンガさんが困ってるみたいです。これは面白そ……もとい何かあれば助けなくては」


 今回はレンガさんに代わりましてわたくし神がお送りいたします。レンガさん達が『家』を攻略した夜を覗いてみましょう。



 レンガは混乱していた。それはサンとルナの喧嘩をみたことがなかったからなのか、喧嘩の原因が自分だから下手に口を出せないからなのか、彼自身もわかっていない。


「兄ちゃんは私と結婚する!」


「ううん、私とけっこんするの!」


 喧嘩の原因はどうやらサンとルナがレンガとの結婚相手を巡ってのようである。しかし、二人の思考は正常ではない。顔が赤い。明らかに酔っぱらっていた。


「だから、もし結婚するにしても二人にはまだはやいって! 誰だよ、二人に酒を飲ませたのは!」


 さっと顔をそらしたものが二人。ハド爺とアネモネである。二人以外に他にはジニアしかいないのだから当然ではあるが。





 時は三人が『家』を攻略したころまで遡る。三人はアネモネの『伝』を使い、ギルドの職位の迎えによって戻ってきていた。


「レンガさん……あなた、息抜きって言っていたじゃないですか! いえ、まあ攻略していただいたことは良いことなのですけど……」


「むしろ息抜きだったからこそ攻略できたみたいだぞ。『家』がつくりだした家で生活することが攻略の鍵だったみたいだ」


「なるほどそのような条件が……。たまに報告されるんですよ、純粋な戦闘力じゃ攻略できない漢字が。それと、今回の報酬なんですが、50万エンになります。『家』は危険性が少ないということもあって報酬が少ないんですよ…」


「いや、報酬で二人のお祝いをしようと思ってたからこれで十分だ。むしろ多いくらいだよ」


「今日はパーティーなんだ!」


「好きなものをいっぱい食べれるんです!」


 二人はとても機嫌がよかった。戦闘こそなかったが、大好きな兄と仲良しの姉妹の久しぶりの三人きりであったのだ。今までは家族は窮屈で寂しいものだと感じていたのだ。そしてこれからは夜も大好きな兄、気さくに接せられる仲間、師匠であるハドとのパーティーである。楽しくないわけがない。


「準備しに買い物に行くぞ。食べたいものがあったら遠慮なく言うんだぞ」


 三人はハドとアネモネに準備の協力を仰ぎ、食べ物飲み物をそろえに行った。 





 パーティーの準備ができた。会場は新しく得た『家』の能力でつくりだした家である。


「では、二人の攻略を祝して乾杯!」


 グラスが合わさる音が響いた。いたるところに様々な肉や料理が並んでいる。大人組はワイン、双子とジニアはジュースを飲んでいる。ジュースは酒場で飲んだあのレモン風味のジュースも用意されていた。


「こんなにお肉食べていいの⁉」


「ああ、あのときも遠慮しないでいいって言っただろ」


「このジュース…私が好きなの覚えててくれたんですか!」


「お祝いのときにはいつでも飲めるよう頼んであるからな」


 ハドとアネモネは初対面であった。しかし、レンガや双子に話をきいていたので、特に会話に初対面特有の気恥ずかしさや気おくれはなかった。

 ハドは若いときに旅をしていた。その話をするとアネモネは目の色を変えて聞き始めた。その中にはアネモネがかつていた国の話もあった。アネモネは貴族の家で育てられたゆえに旅にあこがれていた。ハドの話の中には村を襲う盗賊を壊滅させた話、王を暗殺者から守った話など、どれもアネモネには魅力的であったしこれからの勉強になった。ハドもこれほど熱心にきいてくれる者がいることは話甲斐があるので熱をこめて手振り身振りを交えて話した。二人とも酒が相当入っており会話に夢中だった。そう、注意力は霧散していた。



 レンガはジニアの世話をしていた。食べ物や飲み物をあれこれと運び食べさせていた。幸い、ジニアは口に持っていけば食べてくれるので口移しなどを考える必要もなかった。レンガは普段はアネモネにジニアの世話を頼んでいたのでジニアとの二人は初めてであった。意識がなくともこの際にできることはしておこうと考えていた。サンとルナは食べるのに夢中でしばらく暇になるだろうし、食べ物はたくさんあったのでしばらくは目を離しても大丈夫だろうと思っていた。



 ジニアは何も考えていなかった。何も考えられないといったほうが正確だろうか。ただ運ばれてくる食べ物を食べ飲み物を飲むだけだった。たまに嫌いなものでもあったのか体が小さな拒否反応を示していたがレンガは気付かなかった。数日ともにいたアネモネくらいにしかわからない反応だったので気づかないのも当然であるが。



 サンとルナは退屈していた。用意されていた食べ物はあらかた食べており、飲み物も飲み終わっていた。大人はみんな話しており相手をしてくれない。他に食べてないものはないかと探しているとふとハドとアネモネが飲んでいるものが目に入った。レンガたちは子供が飲んではいけないと言っていたが彼女たちは自分が大人だと思っているので何も問題はない。


「ねえねえ、そのジュース飲んでいい?」


「そのときの儂の行動がじゃがな…ん? おおよいぞ。いくらでも飲め」


「ありがとうございます。んぐんぐ、おいしいです。こっちもいいですか?」


「ええ、いいわよ。そ、それでどうなったんですの?」


 二人は会話に夢中で二人が何を飲みたいのかわかっていなかった。ハドの話は佳境を迎えついに決着をつけるときであった。漢字に囚われた姫を助けに跋扈していた配下全てを倒し、ついには漢字本体との直接対決の瞬間である。アネモネは書物で読むよりも現実味のある話を聞き、今か今かと結末を望んでいた。

 二人の会話が一通り終わったところだった。


「なあアネモネ、ジニアの世話を変わってもらえるか? 俺じゃあできないこともあるからな」


「わかりましたわ。ハドさんまたお話聞かせてくださいね」


「おう、いつでも聞きにくるとよい」


 アネモネは名残惜しそうにしていたが、仲間のためその場を離れていった。



「そういえば昔話をしていたようだが、ハド爺の女性関係の話はでなかったなようだな」


 女性の話、それはハドにとって話しづらいものだった。彼は若いころは一夜の関係を繰り返していた。姫や王女を助ける話こそしたが、その後のことは詳しくは語っていない。

 そんな話を自ら語れるほどハドは若くなかった。


「そんなことより、お主はどうなんじゃ? 家も持てたことじゃし、そろそろ結婚をしてもいい年じゃろう?」


 今までに彼女がまともにいなかったレンガにとっても痛い質問であった。さらに話を変えようとしたとき、


「兄ちゃんは私と結婚するんだ!」


「え? ちょっ何言ってるんだ?」


「いいえ、私と結婚するんです!」


「ルナ、お前もか⁉」


 見ると二人の顔は赤く、酔っぱらっているのは誰が見ても明らかであった。一々注ぐのは面倒だからと大量のグラスに注がれていたワインは二人によってすべて飲まれていた。


「なんで二人が酔っぱらってるんだ? あのな、結婚はしてやるから水でも飲んで大人しくしてような?」


 レンガは以前の世界では妹がいなかったため妹にあこがれていた。それがこの世界に来て愛らしい二人の妹ができたのだ。当然甘やかすに決まっている。二人の意見に否を言うことはめったになく、今回も子供が言っていることだと結婚することに否を言うつもりはなかった。


「結婚するなら私とサン、どっちなの!?」


 ルナが爆弾をぶち込んできた。もはや普段の敬語もない。


「当然私だよね!」


 サンも正常な思考を失っているためか普段は仲が良いはずのルナと張り合っている。


「落ち着け。それにお前らはまだ結婚ができる年齢じゃ…」


「あら? レンガさんは知らなかったの? こないだ二人が12歳になったのだからもう二人は成人よ。結婚できる年齢じゃない」


「アネモネ、話をややこしくしないでくれ!」


 レンガは二人の妹に挟まれ何も言えなくなっていた。どうにか煙に巻いてやりすごそうとしていたのだが、アネモネの余計な一言で戻ってしまった。


「兄ちゃんは私と結婚するのー」


「お兄さんと結婚するのは私なの!」


 二人は今にも取っ組み合いの喧嘩を始めそうなくらいの雰囲気になっていた。レンガは慌てて止めようとするが話の原因が自分であるのでなかなか行きづらい。だが、これを救ったのはまたもやアネモネの一言だった。


「まさかレンガさんはこれも知らないの? この国は多重婚が認められてるのよ。だから二人とも結婚できるの。でも、妹と結婚しようだなんて最低ね」


「そ、そうだったのか。て、いや違う! これは言葉の綾であってだな。よし、サンとルナ、俺は二人とも結婚するから安心しろ。もう喧嘩する必要ないぞ」


「そうなの?じゃあこれからも三人一緒だね!」


「お兄さんこれからもよろしくお願いします」


 二人はそう言った後、限界を迎えたのか眠ってしまった。

 サンとルナにとって結婚しレンガの妻になるということは妹よりもずっと一緒にいられるということで他にどのような意味があるかなどと知らなかった。後日、アネモネから結婚とはどういう意味か聞くとは知らず、レンガもこれで一件落着というような顔をし、片づけを始めた。

 ハドとアネモネは二人に酒を飲ましたという罪悪感から面倒くさそうな仕事を率先して行っている。サンとルナが今後どのような類の好意を向けてくるのかは後のお楽しみである。





「どうであった、そなたが送った人間は」


「いやもう最高ですよ。しかしあの二人可愛いですねー。いつかほおずりできる日が来てほしいくらいですよ」


「確かに可愛いな。そのときは私も呼んでくれ」


「えぇ⁉まさか冗談だったとは言えない…」


神視点なんか書きやすかった

また気が向いたらやります笑

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