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12話 ハド爺、再び!

本日最後かな?

「俺たちは少しでかけてくる。ジニアのことは頼んだぞ、アネモネ。食べ物や飲み物が必要なときは宿の主人に言ってくれ。話はつけてある」


「わかったわ」


 俺と双子はハド爺がいるという酒場に行くことにした。顔を出せと言われていたし、また宿に来られて投げ飛ばされても嫌だしな。本当は俺一人で行きたいところだが、二人がどうしても俺と離れたくないと言ってきかなかったのだ。


「おでかけ楽しみだね、ルナ!」


「うん、お兄さんとおでかけ楽しみ!」


 ……たぶんそんなに楽しい場所ではない。下手すると俺が投げられるところが見られるぞ。俺は兄として二人にそんな格好悪いところは見せたくないのだが。



 幾度となく角を曲がり、知らない道とかろうじて見かけたことにあるような道を彷徨い続けて十数分。


「ここか」


 事前に教えられていた通りの看板のある酒場を発見した。

 辺りは薄暗く、こんな場所にあるせいでおそらく一見の人には入りづらいだろう。

 ドアを開けてみるとカランコロンと小気味のいい音がする。

 奥に人影があったので尋ねてみるか。


「おや、いらっしゃい。そちらへどうぞ」


「あ、いや、客ではないんだ。ハドという老人はいるか?」


 近づいてみると少し暗めの店内でも店主の顔が分かるようになった。かなりダンディなお方だ。若いころはモテたんだろうな。今もそうなんだろうか。


「ハドさんならそろそろ来るころですね。ここは酒場で酒を飲み場所です。どうぞそちらの席で飲み物を飲みながらお待ちください」


 本当にいつもいるみたいだ。俺たちは席に座り、飲み物を頼み、飲みながら待っていた。おいしいなこれ。レモンのようでいてほんのり甘い。


「マスター、いつものを頼む」


 30分ほどしてハド爺がやってきた。

 慣れたようで注文をしながら自分の定位置らしき席を目指して歩いている。


「いらっしゃいハドさん。あなたをお待ちしている方がいますよ」


 店主が俺たちの方に顔を向ける。

 

「おお? お主か。ちゃんと来てくれるとは感心だ。それとその二人はお主の仲間か?」


「あんたのことは正直苦手だが、悪いやつじゃなさそうだからな。こいつらはサンとルナという」


「よろしくね、お爺ちゃん!」


「こんにちわ、お爺ちゃん」


「おお、おお! よろしくの」


 ハド爺はまるで孫に向ける祖父のような嬉しそうな顔で二人を見ている。

実際に孫がいそうな見た目だしな。いても不思議ではない。


「それでお主はどうするんじゃ? 儂とクエストに行く気はあるかの?」


 俺はサンとルナに対する態度で俺はすでに決めていた。


「ああ、よろしく頼む。だが俺はクエストも受けたいんだが、旅に行きたいんだ。どうせならハド爺もどうだ? 強いならなおさら手伝ってほしい気持ちはある」


「ふ、儂をハド爺呼ばわりか、まあよい。この年になって旅にでるとは思わなかったがそれもよかろう。旅はいくつになってもよい」


「なら……」


「ただし、じゃ」


 さっそくお願いしますという俺の言葉をハド爺は遮る。


「この二人は見たところ、獣人でまだ成長途中じゃ。儂に鍛えさせてくれんかの? なに、一週間ほどでよい。そのくらいもらえればクエストでも足を引っ張ることも少なくなるじゃろう」


 それは正直助かる。俺は以前、格闘技をやっていたが、人に教えられるほどではない。願ってもない話だ。

 しかし、俺は問題ないが当の本人たちは


「それって兄ちゃんと離れ離れになるの?」


「嫌です!」


 大聖堂でも思ったが、二人は俺に懐きすぎている。少し兄離れさせる意味でもこれはちょうどいいのだが……。





 俺と二人の交渉の結果、通いでハド爺に稽古をつけてもらうことになった。だが、朝は8時、夜は20時に送り迎えという条件だ。二人はそれでも渋っていたが、一週間の我慢だと言い聞かせることで納得した。


「では、明日から頼む」


「わかった」


 ハド爺も二人にはあまり嫌がることをしないだろう。もし俺が稽古をつけてもらうことになったらどうなるかわからないが。





 宿につくとアネモネに事情を話し、しばらくジニアの世話をしてもらうことにした。ジニアの精神が回復した時アネモネは良い仲間となってくれるだろう。


「そうだ、よければこれを」


 宿に戻る途中で買った服をアネモネに渡した。アネモネとジニア、二人とも年頃の女性だし服はいくつあっても困らないだろう。俺のセンスは期待できないものだったのでサンとルナに選んでもらったのだ。というか、俺が選んだものを二人に見せると二人に怒られてしまった。


「兄ちゃんの選ぶものってすごい変だよ!なんで真っピンクなんて選ぶんだよ!」


「あれはとても変でした…」


 えーだって似合うと思ったんだもん。

 それに女の子ってピンクが好きなんじゃないのか?


「よかった…危うくよくわからない服を着せられるところだった…二人ともありがとうね」


 どうやらアネモネと二人の仲も悪くないようだ。昼の一見があったから心配していたが、杞憂であったようだ。

 買ってきた服をあてがったりして笑っている。雨降って地固まるというやつだろうか。

 それを横目にしながら俺はいつの間にか眠ってしまっていた。ハド爺との会話で疲れていたのだろう。目覚めた時には両脇にサンとルナが俺の腕を枕にしていたおかげか少し腕が痺れていた。不思議と悪夢を見なかったから嫌な重さではなかったんだろうな。





 2人が目を覚ますと、俺は2人をハド爺のもとに送り届けギルドに向かった。なんでもいいからクエストを受けて金を稼がないと、いい加減金が尽きそうだったのだ。女性の服って高いんだな。


「お、これがよさそうだな。臨時のパーティーの募集だが、日帰りのクエストらしいし丁度いいだろう」


 数日分の俺たちの生活費にはなりそうだ。俺はアミのもとに行きクエストを受け、待ち受けるパーティーのもとに向かった。



次回、クエストにいきます。

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