11話 仲間に求めるもの
昼食を食べ宿に戻るとザザの使いとアネモネとジニアの二人が来ていた。
「では、私はこれで戻ります。何か問題が起こりましたら店にいらしてください」
ザザの使いが戻った後、宿の主人にさらに一部屋貸してもらい、俺たちは三人が泊まっていた部屋に入った。
「それで?私たちは何をすればいいんですの?」
「特にこれといってやってほしいことはない」
俺はアネモネの傷が気になっていた。
そうだ、ルナが回復ができる光属性の適正になっていたな。
「ルナ、回復はもうできるのか?」
「はい。あまり深くない傷なら回復できそうです」
「じゃあ、アネモネの傷を癒してやってくれ」
「はい。ヒール」
ルナが回復をかけるとアネモネの傷が少しずつだが、消えていった。完全に回復する頃にはルナは疲れきってしまったようだ。
「ありがとう、ルナ。しばらく休んでて良いぞ。そこで寝ていな。サンも疲れていれば寝てて良い」
「私は大丈夫」
「はい。おやすみなさいお兄さん」
ルナは相当疲れたのかすぐに寝息を立て始めた。
「なんのつもり?私の傷を癒したりなんかして。まさか、夜のため?いやよ、あんたとかんか寝るだなんて、冗談じゃない!」
相当な我が儘娘のようだ。もちろん俺はアネモネもジニアもどうこうするつもりはない。
「俺は別にそんなことをやってもらおうだなんて思ってない。むしろアネモネがやりたいことはないのか?できる限りは叶えてやりたいが」
「そんなこと嘘でしょ?どこに奴隷の願いを叶えるやつがいるのよ」
やれやれ、どうにも信用されてないみたいだ。
「そんなことないよ!」
そのとき、サンが叫んだ。
「兄ちゃんは私とルナの兄ちゃんになるって言ってくれた!ルナが闘いたくないと知ったら闘わなくていいって言ってくれた!兄ちゃんを嘘つき呼ばわりするな!」
「……本当なの?」
突然のサンの叫びに驚いたようで、アネモネも先ほどの熱は冷めたようでこちらの話を聞く姿勢を取り始めた。
「ああ。別に俺はお前達が嫌なことをさせるつもりはない。だが、しばらくジニアの面倒を見てほしい。」
「それは…別にいいですけど。本当に私のやりたいことをやってもいいの?」
「いいぞ。何がやりたい?」
「なら私は冒険がしてみたいの!今までは屋敷からだしてもらえなかったし、奴隷になってからは将来のことなんか諦めてたの」
「冒険か。俺たちは実はこれからクエストを受けながら旅をしようとしているんだ。それでも良いなら俺たちについてくるか?」
「もし、断ったらどうするの?」
「そうしたら、好きに生きていい。冒険をしたいならしてもていい。俺はお前を拘束したりしない。ただ、すぐにではなく、ジニアの世話を数週間ほどしてもらうがな」
アネモネは数秒悩んだ後、
「わかりました、私はあなた達と一緒に行きます」
こうしてアネモネは俺たちの仲間になった。
さて、後はジニアだが。俺は二人の漢字を鑑定してみた。何か精神回復のヒントがあるかもしれない。
――べつ――『別』
所有スキル:決裂 ??? ???
――決裂――
敵同士の絆を決裂させる。絆が深いと効果はない。保漢者の強さに応じて決裂させやすくなる。
――うん――『運』
所有スキル:運溜 運解放 ???
――運溜――
運を溜めることができる。その間、保漢者に幸運が訪れにくくなる。
――運解放――
運畜によって溜めた運を使うことができる。また、溜めた運を超える運を使うとしばらく保漢者に何かしらの不幸が起きる。病気の場合は再び運が溜まると完治するが、溜まるまでは何があろうとも改善しない。回復まで残り二週間。
この『運解放』ってやつか。残り時間も開示されているな。
「どうやらジニアは二週間たてば治るらしい。それまで頼むぞ、アネモネ」
「わかったわ」
これで俺の仲間はもう大丈夫だろう。はやく金を稼いでいかないとな。
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