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生態漢字  ~漢字に抗う異世界のやつら~  作者: そらからり
6章 The Next World at the End
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93話 戦力差

お久しぶりです

【戦場――中央にて】


 己の中に己とは違う、しかし一部のように大切な存在が還ってくるのを感じる。


「……またか」


 『冥』の世界の住人から成る大軍を率い、100名余りの配下を召喚していたブレゴリオは数十度目のこの感覚に嘆息した。


 戦況はおよそ最悪と言ってもいいだろう。

 ブレゴリオらのチームが集めた住人1000人とブレゴリオの配下100名、そしてレンガが従えるフォルが100匹。計1200の戦力に対して敵はおおよそにして10000。無論、ブレゴリオの配下にしてもフォルにしても敵兵1人と同じ戦力ではなく、10を相手にしても勝てる者もいる。だが、非戦闘員もいれば、数人に囲まれてしまえばまず勝てないだろうという者もいる。

 ブレゴリオの所有する『王』の能力は配下を従わせる能力ではなく、配下と共に闘う能力である。配下となった者を『王庭ニ休ム近衛兵』にて収納はできるが、直接的な戦闘はブレゴリオ自身の技量にかかっている。

 配下に命を捨ててまで自分を助けさせる。そういったことをブレゴリオは必要とあらばやらせるかもしれないだろう。純粋な力と技だけで勝てるほどこの世界も、元の世界も甘くないことをブレゴリオは知っている。炎も水も氷も風も雷も大地も、腕っぷし1つで勝つには不可能な相手はいくらでもいる。その時こそ多種多様な能力を持つ配下の出番ではあるが、戦闘に特化した配下は数える程度だ。100いるうちの半数以上はブレゴリオに従いたいという一心でブレゴリオに下った者達。頭脳明晰、容姿端麗、博学多才。武芸こそできないが、策を練り、相手を翻弄し、魅せることに特化した者も数多くいる。


 

 そして、その数多くいる武芸に特化していない者達が敵兵に破れ、ブレゴリオの『王庭ニ休ム近衛兵』に還って来ていた。



 死ねばブレゴリオの配下といえども肉体も精神も死ぬ。それが『王庭ニ休ム近衛兵』の能力の限界である。首を刎ねられた、心臓を穿かれた。脳を破壊された。どうしようもないほどに死んでしまっていては『王庭ニ休ム近衛兵』には還らずにただの死体としてそこに残る。

 だからブレゴリオは救済処置として致命傷を負っても、即死でなければ、まだかろうじて生きてさえいれば『王庭ニ休ム近衛兵』に強制送還されるよう設定した。

 このおかげで死ぬギリギリまで闘うことが出来る。そう開き直った者が力を発揮しているのかもしれない。あるいは、どうせ死なないのだから、と戦闘に手を抜いてしまっているのかもしれない。


 回復担当の者は最前線にまで出て、負傷した他の配下の回復をした後に矢に貫かれて強制送還される。偵察の者は敵兵の存在を敵の攻撃とともに感知し強制送還される。


 ブレゴリオの配下達は少なくとも最善の働きをしている。そこに恐怖心や面倒くささを抱え込みながらも、仕事を果たし、そして強制送還されていく。


 元々、ブレゴリオの配下全てが生き残るとは思っていない。

 非戦闘員が半数以上を占めているのだ。生き残るとすれば後衛、もしくは戦闘に特化した数名であろうと。

 しかし、


「我が元に還ってくる速さと人数が予想以上だの」


 そして、住人に至っても、あちらこちらで死体が転がっているのが分かる。

 戦闘力はこちらの住人もあちらの住人も同じようで、ほとんどが相打ちである。

 サポートに特化した配下が指揮をする軍ではこちらの住人の方が有利ではあるが、それ以外では同じ数の住人が死んでいる。

 だからこそ、戦況は最悪であった。こちらの住人が1000であちらは10000。彼我の戦力は9000である。

 つまり、こちらのチームだけで、住人を抜きにして9000を倒しきり、なおかつ相手のチームを打破しなければいけないのである。


「あちらと、そこと、そしてここかの」


 配置した配下の箇所からして3か所。

 そこからの強制送還される配下の数が異様に多い。

 中には戦闘特化の、ブレゴリオにも匹敵する戦闘力を持った者ですらその場所から強制送還されている。

 一か所は向かって右側。強制送還された者は皆、全身に酷い火傷を負っている。中には痛みを訴えない、神経すら焼き切られた重症の者もいる。

 次に左側。強制送還された者は決まって全身に穴を空けられている。針ほどの小さな穴から腹に大きな穴を空けられた者まで。心臓に達する前に強制送還されたのは幸いであろう。

 

「問題は、正面から来る者であろうな」


 そして正面、一番ブレゴリオに近い敵によって強制送還された者の特徴は全員が全員、頸の骨を折られかけているということだ。首には縄の痕。


「どれを相手にするか……」


 ブレゴリオの現在地はレンガを王としたチームと、相手チームとの中央付近。ややこちらの城に寄ってはいるが、それでも最前線でブレゴリオは叱咤激励とともに配下や住人に指示を出し、剣を振るう。

ブレゴリオの配下が最も多い場所はブレゴリオの周囲のため、必然的に中央付近に戦力が集中している。その配下をどれかに当てさせたとしてもこの3か所のどこかしらは止められない。ブレゴリオが出たとしても、少なくとも1か所から敵がこちらの軍を突破し、城内に入ってしまうだろう。


「……カナリアもいる。それを前提に考えて動いた方がよいか」


 カナリアが、そしてレンガ自身も闘うことのできる戦士である。

 ならば己はこのまま正面の敵を相手することにしよう。

 そう、決めた直後であった。


「ハハハハハ! ここは良い場所だ! 俺の力を十二分に発揮できる!」


 どこから調達したのか馬に乗り、こちらの操る兵士の10倍はあろうかという大軍を引き連れて1人の男が叫んでいた。


「十二支も、五芒星も、『竜』もいなくなってしまったが、まだ俺には再起する巡り会わせがあったのだ。レンガめ、そしてあの眠たげな男も……全て殺しつくしてやる!」


 目に怒りを滾らせ、数に物を言わせた進軍を見せ続ける男はブレゴリオにも聞こえる程に叫んでいる。それは独り言なのか、それともブレゴリオがいることを知っているからこそ己の存在を知らしめているのか……。

 己の力に有頂天になり、自分は闘わずして配下に闘わせる。

 ある意味でブレゴリオと似ていながらも、肝心なところ――己の力を信じ、配下とともに己も闘う――が違うその男もブレゴリオ同様に【王】であった。



 【王】――その男は、五芒星の頂点にして(そして有頂天である)ベム国の王であるヴェルツルであった。

 怠惰によって殺されながらも、レンガと同様に『冥』により生き返るための殺し合いに参加していた。

 生前のことをブレゴリオは当然知らない。知っているのはただ一つ。


「レンガと言ったか。お主はあやつの知り合いか?」


「……なんだこの男は。貴様は敵チームの1人だな。レンガという名前に反応したということは、このチームにレンガがいるのだな! ならば殺してみせよう。我が能力を以てして」


 ヴェルツルの背後から1000を優に越す大軍が出て、弓を構える。


「我が能力をもってすれば兵集めなど容易いことよ。『冥』そのものを操れればもっと簡単であったが、『冥』が造り出した世界の一部でもまあ良い。勝てば良いのだからな」


 ヴェルツルの所有する漢字『隷』は漢字を従える能力を持つ。

 漢字であればほぼ無条件で操れるが、『冥』はその、ほぼの枠から外れていた。しかし、意志の弱い者――感情が限りなく消されている住人であれば操れるため、こうして考えられないような兵力を操ることが出来たのである。


「敵であるならばさっさと終わらせよう! 俺は忙しいのだ。これからレンガを殺さなければいけないのでな。この場にいないのであれば他にいるのだろう? 見逃す義理もない。とっとと死ぬが良い!」


「さて、どうかな? 余が配下とともに1点に集中して攻めればその数であろうと貴様の首くらいは取れるかもしれんぞ?」


 決して強がりではない。

 ブレゴリオの現在持ちうる戦力は敵の1/10である。しかし、敵とてその10倍の戦力を一度に操り切れるわけではないだろう。操りやすい人数であるこちらが全力で突撃すれば穴が空き、その穴からこの尊大な男を殺すことくらい出来る可能性は十分にある。


「フハハ! 甘い、甘いぞ! 陣形変更だ! 雁行の陣」


 しかし、ヴェルツルの号令とともに敵チーム住人の陣形は変わる。

 これまで扇状に広がっていた住人達はヴェルツルを隠すように列を作る。

 敵が横に20人程に並び、それが奥までどこまでも、どこまでも続く。


 こちらが攻めればどうなるか……ブレゴリオは考える。

 何も考えずに攻めれば先ほどブレゴリオがやろうとしていた一点突破。それをこちらがやられてしまうだろう。


 逃げる、という可能性はまず捨てるしかないだろう。人数が少ないという点で逃げることはできる。だが、逃げてどうするんだ、となる。この大軍を引き連れた敵はブレゴリオが逃げても他の仲間たちを殺しに向かうだろう。城にこの数が押し寄せればそれで終わりだ。


 長蛇の列になっている敵を叩くには横から攻めるか……いや、そこに移動するまでに攻められてこちらが負ける。


「ううむ……」


 元来、闘うことならばともかくとして、こういった戦で攻め時、逃げ時、闘い方を決めるのは王ではない。それは別の者の役割だ。


「さすがは軍師殿の力だ! こいつら奴隷をこうも容易く扱えるとはな!」


 住人の陣形を変えたことが思っていたよりもスムーズであったため、ヴェルツルは驚きながら嬉し気に叫ぶ。


「軍師殿……?」


「そうだ! 俺、軍師殿、そしてあの3兄妹。新生【五芒星】は揃った。闘う者ばかりであったのが間違いであったのだ。王は配下に命令を下すが、策を練るのは王ではない。それは軍師の役目だ」


 そしてヴェルツルは手を掲げる。

 話は終わりだとばかりに進軍を開始する。


「さあ、死ぬが良い。その程度の戦力で俺に勝とうなぞ分不相応なのだ」


 ヴェルツルが手を下げると同時に、一斉に敵軍が走り出した。そして、弓を持つ住人が弓を放った――いつの間にか現れた新たな住人達が。

 放たれた矢は無防備でいたヴェルツル軍の中央から後衛にかけての住人に甚大なる被害を与えていく。


「……誰だ!」


 矢が放たれた方向、そちらをヴェルツル、そしてブレゴリオは見る。


「ブレゴリオ率いる住人がその程度の戦力か。なら、俺の率いる住人はどの程度なんだろうな」


 ブレゴリオ率いる戦力がおよそ100として、ヴェルツルは1000。

 新たな援軍――ティミドが率いる戦力はヴェルツルと同等以上の2000人余りの住人を連れてきていた。


「悪い、遅れた。だが安心してくれ。これ以上の、後3000程の住人をこの戦場各地に送り込んでいるからな」





 こうしてこの戦場において全ての戦力は揃った。

 ヴェルツルチーム……推定10000人の住人。チームの戦力未知数。ヴェルツル、軍師、3兄弟から成る。

 レンガチーム……推定6000人の住人。チームの能力により200人程度の戦力を加算。他能力がどのように戦力となるか不明。


実習の合間に何とか投稿完了


戦争とか陣形とかよくわかんないよ

個人戦はやくしたいね

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