1話 異世界に呼ばれた経緯
ここは…どこだ?
気づくと俺は森の中にいた。
ちくしょう、あの神め、街に送るって言ってたくせに。神のくせに嘘ついたのか?
それとも何か不手際でも起きたのだろうか。
この世界に来てそうそうろくでもないことになってるぞ。
そう、俺は神と名乗る者にこの世界に呼ばれた。
神は昔からいてほしいと思ってはいたけど案外完全な存在じゃないんだな。
【約五時間前】
俺はごく平凡な会社員だった。まあ、若いときは中二病全開で周りからは白い目で見られていたが。
だが、成績は学校でも上位で、漢検英検数検でそれぞれ2級ほどを持っていた。運動神経もそんなに悪くなかったな。
仕事帰り、俺は急に立ち眩みがし、気づくと白い世界にいた。俺以外は何もないし誰もいない。
俺がきょろきょろと辺りを見まわしていると、
「突然すみません。ある世界を救ってはもらえませんか?」
と、中性的な声がどこからか聞こえた。
どちらかというと女性の声のようだ。
「誰だ?」
「私は神の一柱です。ただ、この世界の神ではないですが。実は、少し前に他の退屈な神々がある実験をしたのです」
その神の話を要約すると、この世界と似た世界はいくつもあり、その中にも日本でもお馴染みの漢字があった。そして神達が『漢字』に意志を持たせたようだ。
まず、『神』という漢字に意志を持たせたところ、『神』は神となり力が暴走してしまい、他の漢字にも意志が宿り、それぞれで行動し始めたらしい。
「特に悪の心を持ってしまった漢字が世界にとてつもない影響を及ぼしてしまっているんです。どうか助けてください」
聞くと、俺を選んだ理由はその世界で漢字を自分の力として使える者がおり、俺にもその力が宿っているらしい。
「その力はあなたにとって少なからずの助けになるでしょう。どうかあの世界を救っていただけますか?」
俺は会社員として数年間働いていた。同僚や部下もでき、ようやく仕事に充実感を持ち始めたところだった。しかし、中二心を忘れてはいなかった。
「俺がいなくなって、元いた世界はどうなるんだ?」
「ええっと……どうしましょうかね?」
「……」
……考えてなかったのかよ。
「確かこういうときは……ああそうだ!他の人間があなたの代わりに生活しますね。全く同じ性格・容姿の人間をつくることも可能ですし、全然違う人間でも大丈夫ですよ。それが嫌でしたらあなたに関する記憶だけを消すこともできますが、どうします?」
他の人間が俺の代わりに家族や会社の人間と過ごすのか、ちょっと嫌でもあるな。
「じゃあ、記憶を消してくれ。それなら行こう」
「ありがとうございます。始めはこの世界に慣れてもらうために生活しやすい街の近くへ召喚できるようにしておきますね。きっと街の人が助けてくれるでしょう」
こうして俺は異世界に召還されたのだった。
【神視点】
「おや?あの街の近くの森に、あの漢字がいますか。ちょうどいいからそっちに送っちゃいますか。なんとかなるでしょう」
「おい、あまり人間の信用を失うなよ……。私たち神全体の信用が失えばそれだけ力を失うのだかなら」
「わかってますよー」
さあ、がんばるぞー