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diceをふるのは公爵令嬢でも国王陛下でもなく  作者: 秋月篠乃
第1章 赫いダイスをふる人
2/16

第2話 ダイスの二の目は愚かな令嬢を踊らせる

一話だけの更新にもかかわらず、評価・ブックマーク・感想をありがとうございます。

第二話目、一万字を超えるぐらいにはなりませんでした。

一万字を越すぐらいに書こうとすると、下手をすれば二万字を超えそうだったので、この文字数にしました。

このお話の後半辺りから登場して話の雰囲気を壊しているのが、お相手になります。

重ねて申し訳ありません。

騒動から一夜明けても王宮内は慌ただしさから抜け出せることはなかった。

第一王子から第二王子への王太子の変更。

それがどれだけ国にとって大事なのか、早朝から貴族達の謁見や会談の申し込みの多さに追われている宰相は身に沁みていることだろう。

クローネが廊下で擦れ違い挨拶を交わした時も、宰相の顔にいつもの覇気は感じられなかった。

第一王子側だった貴族達の対応がほとんどだが、近日中にそれも終わるだろうと予測される。

国王が判断した事。なによりもレクスィは国王陛下主催の舞踏会という場所であれだけの愚行を犯したのだ。それを第一王子側の貴族達がどこまで庇いきれるのか見物ではある。

後宮内もいつもより若干騒がしいが、さすがに王妃の私室のあたりまでくると、その騒がしさもなくなった。

ノックを数回、入りなさいと言う声が聞こえて、クローネは後宮で歓談に使われている木蓮の間に入室する。


「失礼いたします。おはようございます。王妃様、フェアシュア公爵令嬢様」


向かい合って座る二人に礼を取り、持ってきたお茶を準備してゆく。

クローネが入って来るまで途中だった会話を王妃は再開しはじめた。


「フェアシュタ嬢、先ほども言いましたが、貴方以上に王妃になれる人物は今、この国にはいません。ヴォールは貴方の気持ちを考えてほしいと言っていましたが、了承していただけますね?」


半分は問いかけ。半分は王妃としての命令。

平民であるなら理不尽だと訴えそうな場面だが、公爵令嬢という名を背負っていて、貴族の責任も理解しているフェアシュタが断るはずもなく。


「わたくしに王妃様が望むほどのものがあるかはわかりませんが、謹んで承ります。ですが……ヴォール殿下はわたくしで大丈夫と仰っておられるのでしょうか? わたくしはヴォール殿下よりも年上ですので」


「ヴォールは貴方を認めています。問題は一つもないわ。問題があるとするなら、それは貴方がレクスィを慕っていたことだけではないかしら」


王妃の言う通り、フェアシュタがヴォールの婚約者となってもヴォールに問題はない。ヴォールがフェアシュタを好いていることなど周知の事実。

レクスィだって、そのことは知っていた。

けれど、ヴォールはその気持ちを持ちながらも将来は王と王妃になる二人を支えようと日々努力して、想いには蓋をしていた。

きっといつか忘れられると笑いながら。


「……レクスィ殿下は…………もうユリアの婚約者です。もういいのです……」


すぐにわかる嘘もつかねばならない時がある。

レクスィを慕い、厳しい王妃教育に耐えてきた十年を本人から否定された。

ユリアを選んだ時点で否定することと同義なのだと、きっとレクスィはわかってはいなかっただろう。

宮女達の噂で聞いているが、ヴェステン公爵と公爵夫人は病弱な娘であるユリアばかりを可愛がり、フェアシュタはほぼ放置状態。

フェアシュタは一人でなんでもできるだろうと言われ、会話すらほとんどないと公爵家のメイドが話していたと言っていた。

フェアシュタはレクスィだけが自分を必要としてくれていると思い頑張っていた節もある。

もちろん国王や王妃がフェアシュタを認めてくれているとはわかっていても、幼少期に抱いた潜在的な刷り込みは中々消えはしない。


「貴方がいいのなら、かまわないわ」


王妃はまだ心中複雑なフェアシュタの気持ちを汲み、それ以上レクスィのことで言及することはなかった。


「後でヴォールと話すといいわ。時間はあまりとれないでしょうけど、今は我慢してちょうだい。それと、一つ貴方にお願いがあるのよ。公務で今日、孤児院を訪問するはずだったのだけれど、昨日の出来事で陛下の手伝いをしなければいけなくなったの。だから、貴方にその公務をお願いしたいのよ。こんなことがあったとは言え、王族や貴族だけの揉め事など民達には関係のないことですからね」


「わかりました。王妃様の変わりが務まるとは思えませんが、わたくしなりにやらせていただきたいと思います」


「ありがとう。クローネ、フェアシュタ嬢と一緒に行ってきてちょうだい。貴方と何度か行ったことのある孤児院よ。わからないことを教えてあげて。ヴォールには言っておくわ」


「かしこまりました。フェアシュタ公爵令嬢様、粗相がないように努めます。よろしくお願いいたします」


「ええ、こちらこそ」


まだぎこちない笑みを作って見せるフェアシュタに、一時でも休める時間を設けられたらと思わずにはいられなかった。









王妃との話が終わり、公務のためにと急いでフェアシュタの身支度を整えて出ようとした時に、ヴォールが忙しい最中時間を作ってフェアシュタに会いにきた。

走ってきたせいで息切れをしているヴォールにクローネは水を用意しようとするが手で制される。

まだ整わない息をしながらも、ヴォールは己より身長が高いフェアシュタを見つめた。


「クローネ以外は一旦さがってくれ。すぐに済ませる」


フェアシュタのお世話をしていた宮女達数人は深々と頭を下げて、場を離れていった。

それを見送ってから、クローネは二人よりも少しだけ距離をとり、邪魔にならない位置に移動する。


「フェアシュタ嬢……兄上の謹慎が決まった」


「そう、ですか……」


驚くこともなく静かに呟いたフェアシュタはこうなることをわかっていたのだろう。

あれだけのことをして罰がなにもないのでは、国王の威厳に関わる。

それが王子であろうと関係などない。

むしろ謹慎だけで済んでよかったのだ。他の貴族の子息が婚約破棄などを一方的にやらかしたら国王が認めた婚約を蔑ろにしたとして、廃嫡もありうる。


「僕はまだ、気持ちの整理がついていない。フェアシュタ嬢もそうだと思う。父上がお決めになった婚約だが、もし嫌であれば言ってほしい。強制はしたくない」


「ヴォール殿下、わたくしのことなどをお気にかけてくださりありがとうございます。ですが、わたくしは婚約をおうけする意思を先ほど王妃様にお伝えしたところです。ですから、」


「僕が嫌なんだ!」


気にしないでくださいと続けようとしたフェアシュタの言葉を遮ったヴォールは、真っ直ぐに視線をフェアシュタへと向ける。

その真っ直ぐな視線にフェアシュタはたじろぐ。


「僕はフェアシュタ嬢を不幸になどしたくない! 義務的な笑顔で笑ってほしくはない! 心から笑ってほしいんだ! 僕は貴方のことが好きだかりゃ!」


噛んだ。

それはもう思いっきり。

緊張感が漂っていた空間は見事に壊れ、微妙な沈黙が流れる。

クローネは明後日の方向を向いた。

けれど、震え出す肩は押さえようがなかった。


「わ、笑うな! クローネ!」


「いえっ! そん、な、ことは! ございま、せんっ! 私が、我が君をっ! 笑う、など!」


「笑いをこらえながら弁明しても説得力などない! ああ! なんでこんな時に噛むんだ僕は!」


「我が君、ご立派でした。あんなにもはっきりと言葉にされるとは思っておりませんでした。とても嬉しくて涙が零れます」


「笑いの涙だろう! 平静を装うのをやめろ!」


「私は笑ってなどおりませんが?」


「嘘をつけ! 今も目が笑っている! だいたいクローネはいつもいつも!」


ヴォールが噛んだ瞬間から唖然としていたフェアシュタだったが、クローネとのやり取りを見て、クスリと笑った。

蕾が芽吹くような笑み。

その美しさにヴォールとクローネは一瞬見惚れてしまう。


「あ、申し訳ございません。お二人のお話を聞いていたら、つい」


まだクスクスと笑うフェアシュタの心からの笑みに、ヴォールは耳まで赤くなっている自分の顔には気付いていないのか、フェアシュタに歩み寄り、胸元のポケットに挿していた一輪の薔薇を差し出した。


「やり直しですが、僕はフェアシュタ嬢が好きです! でも、婚約を無理にするのはどうかと今でも思っています。好きな貴方には幸せになってほしいから! けれど父上のお立場も、フェアシュタ嬢の公爵令嬢としての立場もわかっています。僕は兄上よりも幼く不甲斐ない所が多い。それでも頑張ります! 貴方のために! もちろん国と民のためにも! その証として毎日、一輪ずつ薔薇の花をプレゼントさせてください! この誓いを忘れないためにも!」


「ヴォール殿下……」


そっと薔薇をうけとったフェアシュタに、どうしたらいいのかわからなくなったのか「それでは行きます!」と言い逃げの状態で去って行ってしまう。

もう一押しほしかったのにとクローネは嘆いたが、薔薇を手元で大事に抱えるフェアシュタの表情が柔らかくなっていることに気付いて、まだまだこれからだなと苦笑しつつ、思うことにした。


これで公務も僅かばかり明るい気持ちでフェアシュタが行えると思っていたのだが。









孤児院に向かうため、用意していた馬車に乗ろうと向かった王宮の門付近で言い争う声が聞こえて、フェアシュタとクローネは顔を見合わせた。

護衛の騎士達が同行するのはわかっていたが、それにしては数が多い。

気になって歩を進めたフェアシュタにクローネも続く。

そして争っている人物達が視界に入った時、フェアシュタは絶句した。


「ユリア……」


そこにいたのはフェアシュタの妹のユリアと、昨晩の舞踏会でレクスィ達に付き従っていた騎士団長子息、パルツがいた。

そしてパルツと言い争っている人物が一人。

騎士服を着ているが、クローネは初めて見る青年だった。

もしかして数ヶ月前に隣国・メーアから来たという騎士だろうか。

フェアシュタに気付いた二人は言い争いをやめ、ペルツ以外のもう一人が前に進み出てくる。


「お初にお目にかかります。騎士団所属、パラスト・ツヴェルグと申します。本日はフェアシュタ公爵令嬢様を護衛する任務を仰せつかりました。よろしくお願いいたします」


「こちらこそよろしくお願いいたします。あの……」


「お姉様! わたしも孤児院へ連れて行ってほしいの! お父様がお姉様を見てきなさいって。……ダメですか?」


なぜここにユリアがいるのか問いたかったフェアシュタだったが、全てユリアが口にしてくれた。

この事態にクローネの後ろに控えていた宮女達も混乱して互いを見交わし合っている。

中には眉をしかめる者も。


「ユリア……これは公務よ。簡単に連れて行くなどとは言えないわ。まずは王妃様にお話をしなければ」


「……まだ、怒っているのね。お姉様は……」


消え入りそうな声で呟くユリアに、フェアシュタは困惑する。

怒るもなにも昨日の婚約破棄と今日の公務はまったくの別物だ。

それをどう説明したらいいものかと悩むフェアシュタを見て、クローネも宮女も、パルツを除いた騎士達も同じことを思った。

アホなど放っておけばいい、と。


「ユリアが公爵令嬢として孤児院へ行くぶんには問題ないだろう。姉である貴方が了承すればいい話だ」


「パルツ! 未来の王妃様になられる御方に向かってなんていう口の聞きかただ! 分を弁えろ!」


パラストのもっともな言い分にもパルツは鼻で笑うだけ。


「たかだか数ヶ月前に入団したばかりのお前に、この国のなにがわかる」


「パルツ!」


例え入団して数ヶ月であろうと、フェアシュタの護衛を任されるぐらいに優秀なのだ。パルツはこんなだが、騎士団長のフェアレーター伯爵は厳格な人で実力重視で騎士団を管理している。

そんな伯爵が選んだ人物に間違いはないだろうに、パルツはやたらと突っかかっているし、礼儀もなっていない。


「フェアシュタ公爵令嬢様、王妃様にお伝えしてまいります」


「……いえ、わたくしの妹ではなく公爵家令嬢として赴くのなら問題はないでしょう。わたくしから後程王妃様にお話をしておきます」


「ありがとう! お姉様!」


無邪気に笑うユリアと、そんなユリアを見て蕩けるような眼差しを浮かべるパルツ。


(愚そのもの)


昨日の婚約破棄の一件があったというのに、昨日の今日でフェアシュタに縋りついてくる浅ましさ。

きっと国王から叱責をうけたエルガー公爵が、焦って公務に行くフェアシュタを見てユリアに学んでこいということだろうが、その発想自体バカげている。


馬車に乗り込みながら、クローネは首にかかっている赤いダイスのネックレスをそっと取り出していた。









一抹の不安を抱えながらの公務は、ユリアの登場で孤児院の先生達に多少の驚きを与えたものの、つつがなく回っていく。

王妃の変わりに何度か公務を代行したことのあるフェアシュタは初めての孤児院への訪問だったが、すぐに子供達と打ち解けて話をしている。

逆にユリアは子供達に振り回されながらも、なんとか踏ん張っている。

パルツはユリアの傍を片時も離れず、そんなパルツを怖がる子供達もいた。

反対にパラストはフェアシュタから一定の距離を置き、見守っていたが、すぐに男の子達の標的になった。

馬車を降りる際に盛大に足を滑らせて踏み外す所を見られていては、どうしようもない。


クローネはフェアシュタを気にかけつつも、花畑の中で一人せっせと花冠を編んでいる女の子に声をかけた。


「こんにちは。その花冠、フェアシュタ公爵令嬢様に差し上げるの?」


「うん! みんなにサシャはじょうずだから、よろこんでくれるっていわれたの!」


「私も喜んでくれると思うわ。そうだ! ユリア公爵令嬢様にも花冠を作ってさしあげたらどう?」


「うん! そのつもりだよ!」


「そう! お二人とも、きっと喜ばれるわ! 頑張って! 先にユリア公爵令嬢様に渡したらいいかもしれないわね。今、フェアシュタ公爵令嬢様は大人気だから」


大勢の子供達に囲まれているフェアシュタを見て、サシャは大きく頷いた。


「うん!」


そうして数十分後、完成した花冠の出来に満足したサシャはとことことユリアの元に歩いていった。


「ユリア様! これどうぞ!」


「え、あ、ありがとう」


「のせてあげる!」


サシャは嬉しそうに花冠をユリアの頭にのせようとした。

だが、そのサシャの手が花を弄っていたせいで泥だらけで草がついているままなのを見て、ユリアは顔を青褪めさせて無意識のうちに突き飛ばしていた。


「いやっ!」


なんとか間に合ってサシャを受け止めたクローネはサシャを素早く立たせて、怪我がないかを確認する。


「大丈夫? どこか怪我はない?」


と、突き飛ばされたショックでサシャがいきなり泣き出した。

わんわんと泣く声に子供達が駆け寄ってくる。

フェアシュタも慌てて、こちらに来てサシャの手元を見て、そしてユリアを見た。

未だ震えているユリアをパルツが落ち着かせようとしているが、サシャが泣いている原因がユリアだと子供達はわかってしまったのだろう。怒った顔を向ける子供達に気付いたユリアが肩を震わせる。

自分がなにをしたのか今更ながらに気付いても遅い。

そんなユリアを庇う形でパルツが子供達を睨みつける。

その睨みに怖がって泣き出す子もいて、あまりの突然の事態に孤児院の先生達も困惑している。


そんな中、フェアシュタは泣いているサシャが持っている、少しだけ崩れてしまった花冠を見てニッコリと笑った。


「その花冠、わたくしにくださるの?」


「う、うん……」


「ありがとう! とっても嬉しいわ!」


サシャの手から花冠をうけとり頭にのせたフェアシュタは「どうかしら?」と尋ねる。

泣いていたサシャだったが、そのフェアシュタの嬉しそうな顔に、やっと笑顔を見せた。


「フェアシュタさま! お姫さまみたい!」


「バカだな! ほんもののお姫さまだよ!」


「ありがとう。でも、貴方もお姫様みたいよ。ほら」


花畑に咲いていた一輪のダリアをサシャの耳にフェアシュタがかけると、サシャは喜んで飛び跳ねた。

混乱が収束した時にはユリアの姿はどこには見当たらなかった。

護衛として一緒にいたパルツと数名の騎士達も。


「クローネおねえちゃん! おねえちゃんにもあげる!」


「ありがとう。でも、私に似合うかな?」


「うん! とっても!」


泥のついた手で渡された花冠が愛おしい。

この一面に咲いている花がフェアシュタを後押ししたと思えばなおのこと。


(一番愚かな選択をとるなんて。さすがユリア様)


王妃と共に数度、この孤児院には足を運んだことがあった。

この目の前であどけなく笑うサシャが毎回、王妃に花冠を作っていることも記憶していた。

病弱だったユリアは、あまり外に出ることはなかったと聞いている。

大事に大事にヴェステン公爵が育ててきた。

だから、ほとんど賭けだったのだ。今回のことは。


一瞬の合間に溜め息を零したフェアシュタの側にクローネは寄り添った。


「大丈夫ですか? フェアシュタ公爵令嬢様」


「ええ。ごめんなさい。ユリアのせいで場が混乱してしまって」


「私は大丈夫です。……泥にまみれた手を私は可愛らしいと思うのですが」


「わたくしもそう思うわ。でも、ユリアは違ったのでしょうね。ユリアが病弱だからといって、それはユリアだけではないわ。平民の子だって病弱な子はたくさんいる。そんな子の親達は一生懸命に田畑を耕して、生活を支えているの。お父様のように指示を出すだけの仕事なんて、する人は少ないわ。それをきちんと言い聞かせてきたつもりだったのに……」


ユリアほど恵まれた病弱な子供もいない。

平民の中で生まれた病弱な子のほとんどは長生きをしないし、いい薬を買ってやろうにも薬代が高すぎる。

どれだけ幸せの中に生きているのか気付かない愚かしさ。


笑みが零れそうになる。

明日には今日のことが王都中に知れ渡っていることだろう。

貴族達が昨日の出来事で右往左往している状況がかえって、色々な妄想を民達の中でかきたててくれるだろう。

貴族の中では「花の妖精」と謳われているユリアが、民にはどう呼ばれるようになるのか楽しみでしかたがない。


(一言謝るぐらいはするべきだったんですよ。簡単すぎてつまらないじゃないですか。もっと足掻いてください)


必死になって笑みを堪えていると。


「うおっ!?」


なにかがぶつかる衝撃音に振り向けば、パラストが馬車からなにかを取り出そうとして足を滑らせて馬車の窓に、しこたま頭をぶつけていた。

眩暈をおこして立ちくらみをしていると思ったら、大きな野良犬の尾を踏みつけたようで。

悲鳴を上げて逃げ回る姿に、ぶっと吹き出してしまう。

笑いを堪えていたぶんだけ、一連の残念な行動がツボにはまってしまった。

フェアシュタも笑いを堪えようとしているが、肩の震えが大きくなっている。




(楽しい。もっと踊ってください。足掻いて価値があれば助けます。でも、無意味なら捨ててさしあげますから)










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